『上級エリクサー3分クッキング』 作:天びん。

Aguhont Story Record 外伝

『上級エリクサー3分クッキング』

作:天びん。

15分


【登場人物】


フーリ:性別不問、狐の獣人で両膝がオートマテリアによる義足の凄腕薬師。リーベル代表。

イタロ:人間の男性で自称錬金術師。何に対してでもとりあえずやってみるという考えの持ち主。マリシ代表。

ヴェル:ギャギャギャリアン=ヴェルナヴァンド、人間の男性だが、自分の身体さえも被検体にして様々な実験を行っている天才博士。楽しければそれでいい。タングリスニ代表。



【本編】

ヴェル:これはAguhont Story Recordのifシナリオでありますぅ。


フーリ:アグホント~3分クッキング~!

ヴェル:いぇ~い!

イタロ:…。


―この空間にあのお馴染みの音楽が流れ始める。


フーリ:さーて、本日は何を作るんですか?

イタロ:…。

フーリ:…(咳払い)な・に・を作るんですか?

イタロ:(超嫌そうに)…上級エリクサー…。

フーリ:はい!上級エリクサーを作っていきますよ~!

イタロ:おい…。

フーリ:材料は~こちら!

イタロ:おい!

フーリ:なんだい…助手で自称錬金術師のイタロさん。

イタロ:俺助手なのかよ!!

イタロ:…というか、これは一体何の冗談だ?

フーリ:冗談?

ヴェル:国際親善行事だって話を聞いてなかったんですかぁ?各国からエリクサーを作れる人員が呼ばれて、バルナ代表のバロウズさんが撮影業務を請け負うって言ってたと思うんですけどぉ。

イタロ:いや、話は聞いたよ?でも何でそこまで聞かされてこんなノリノリで作れるんだよ!特にそこは勝負したばかりだろ!!

フーリ:もう決着はついたじゃないか。

ヴェル:そうですよぉ、いつまでも根に持っていたって今後のためにはなりません。

イタロ:それはそうだが…

フーリ:ほら、無駄話してる暇はないよ!放送枠3分しか取れなかったんだから。

イタロ:馬鹿なのか?何でそれしかないんだよ!

ヴェル:3分クッキングですからねぇ。

イタロ:本家も3分じゃねーだろ!10分は使ってるだろ!

フーリ:―というわけで、材料はこちら!

イタロ:無視すんな!!

ヴェル:アロエの搾り汁26グラム、ルバーブ5グラム、リンドウ5グラム、ホワイト・ターメリック5グラム、サフラン5グラム、水235ミリリットル、ウォッカ715ミリリットル、ウィステリアの花粉ひとつまみですねぇ。

イタロ:おい、まてまてまてまて。

イタロ:本編では感覚的な領域だから分量を明確に書き残せてないって話じゃなかったか!?

フーリ:まずはアロエの搾り汁を用意します。

イタロ:…駄目だ…俺の声は届かねぇ…。

ヴェル:何してるんですか、イタロ君。早くアロエ搾ってください。

イタロ:は?俺がやるのか?

フーリ:イタロは助手だよ?サクッと搾るくらい可能だろう?

イタロ:何故俺が…

ヴェル:仕方ありませんねぇ…

ヴェル:イタロ君、これ握って下さい。

イタロ:…?こうか?

ヴェル:そしたら魔力を…込める。

イタロ:はぁぁぁぁぁ!!


ヴェル:私がすぐさまボウルで受けたので、アロエの搾り汁は瞬く間に集まりましたぁ。


ヴェル:はい、アロエの搾り汁完成です。

イタロ:魔法を便利に使うな!!

ヴェル:君の意欲が皆無だったから手伝ったのにぃ…。

フーリ:ではその間にこちらは残りのハーブを刻んでいきます。ちなみに、ルバーブは葉柄(ようへい)、リンドウは根、サフランはめしべと花柱(かちゅう)を使うよ。

イタロ:そういえば刻むのはどの程度だ?粗微塵(あらみじん)でも構わないのか?

フーリ:理想は粉末状だねぇ。薬研(やげん)や石臼(いしうす)、乳鉢(にゅうばち)で擦って使うといいかな。

イタロ:ふむ…薬師と錬金術師では製法が少し異なるようだな。

フーリ:そもそも流派が違うからね。効果も全く同じかは私も気になるところだけど。

ヴェル:はぁい、それらを刻んで粉末にしたものがぁ、こちらですぅ。

イタロ:本家だ!本家と同じだぁぁ…!!

ヴェル:これは2人がお話ししてる間に、私が発明したガジェットで粉末にしておきましたぁ。

イタロ:ちゃんと仕事してた!!

フーリ:準備が出来たら全ての材料を保存ビンに入れて混ぜます。じゃあ博士、アロエの搾り汁をこっちに貸して。

ヴェル:はい、どうぞぉ。


ヴェル:私がフーリさんに手渡したボウルでは紫色の液体がゴボゴボと音を立てている。

ヴェル:ちょっとした工夫も研究には必要なんですよぉ、ええ★


イタロ:これ間違いなく俺が搾ったやつじゃねーな?!

ヴェル:何してるんですかぁ?早くしないと時間内に終わりませんよぉ?

フーリ:…言っておくけど。本家同様、完成したら全員で実飲するからね?アンタも例外じゃないよ?

ヴェル:…。


ヴェル:フーリ君の笑顔が怖いですぅ…私は耐えかねて本物のアロエの搾り汁を差し出しました。


フーリ:…分かれば良いのさ。

イタロ:良かった…取り合えず飲めそうなもんが作れそうで安心したぜ。

フーリ:これを目一杯かき回したら、ろ過して綺麗な保存ビンに移し、ウィステリアの花粉をふりかけながら魔力を通して完成!

ヴェル:ちなみにぃ、ウィステリアの花や魔力がなくても作ることは出来ますが、その場合、頻繁に撹拌(かくはん)して3日間寝かせてから、ろ過してください~。

フーリ:…というわけで完成だよ!

ヴェル:実飲のお時間ですねぇ。

ヴェル:では皆さん、グラスは持ちましたか?

イタロ:…じゃあ、乾杯。


―3人ともグラスに口をつけるが、イタロは口に含んだ瞬間床を転げ回った。


イタロ:ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!何だコレ、くそ苦ぇぇぇぇぇ!!

ヴェル:あ…本当に飲んだ。

フーリ:極めて苦味が強いといわれている上級エリクサーと分かっていながら飲むとは…。アンタすごいねぇ!

イタロ:何でお前ら飲んでねぇんだよ!!

フーリ:だって、のたうち回るくらい苦いの分かってて飲むわけないじゃないか。

イタロ:(渾身の「この野郎」をお願いします(笑))こんの野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

ヴェル:そういえば鑑定してませんでしたが、上級エリクサーが作れたということでよろしかったんですかぁ?

フーリ:それもそうだねぇ。じゃあ助手君、鑑定よろしく頼むよ。

イタロ:お前ら鬼か!!!!

ヴェル:はぁーやぁーくぅー!放送枠終わっちゃいますよぉ!

イタロ:ちくしょう…鑑定!


―イタロが残りの液体が入ったビンに鑑定をかけると、ビンが青く光りだした。


ヴェル:青く光っている…どうやら成功のようですねぇ!

イタロ:普通飲む前に鑑定すんだろ、このくそったれぇ…!!

フーリ:レシピや分量はクックパッドにも載っているから、見逃してしまった方はそちらを確認しておくれよ。

イタロ:クックパッド?!

フーリ:では、次回もお楽しみに!

ヴェル:さよ~ならぁ~!

イタロ:こんな番組2度と出るかぁ!!




【参考文献】
不老長寿の秘酒「エリクサー」 by ドーナツタイム
 https://cookpad.com/recipe/3973229