『リング』 作:oroるん

【CHARACTER】

ケット・シー:挑戦者

ガンコナー:チャンピオン

リャナンシー:レフェリー

シーオーク:実況

  

【STORY】

シーオーク:『皆様、大変長らくお待たせ致しました!本日のメーンイベント!WBCH世界ミニマム級タイトルマッチ12回戦を行います!』

シーオーク:『青コーナー、挑戦者!これまでの戦績・・・0勝28敗6無効試合!』

シーオーク:『ケット・シー!』

ケット・シー:ニャー!

シーオーク:『赤コーナー、チャンピオン!これまでの戦績・・・0勝35敗8無効試合!』

シーオーク:『ガンコナー!』

ガンコナー:ウガー!

シーオーク:『さあ、いよいよ始まります!WBCH・・・「ワールド・ボクシング・茶番」ミニマム級タイトルマッチ!果たして、勝つのは、もとい、「負けるのは」どちらなのか!?』

ケット・シー:(プロボクサーとしてデビューして早10年。弱すぎて1度も勝つことができないオイラに、遂にチャンスが訪れたにゃ!)

ケット・シー:(まさか「負けたらチャンピオンになれる」タイトルがあるとは思ってもみにゃかったけど、オイラにはうってつけにゃ)

ケット・シー:(どんなエセ団体のタイトルでも構わないにゃ!必ず勝って、じゃなくて、必ず負けて、ベルトを持って帰るにゃ!)

リャナンシー:両選手、リング中央へ!

シーオーク:『リング中央に向かう両選手。これから、レフェリーによるルール説明が行われます』

ケット・シー:・・・

ガンコナー:・・・

リャナンシー:おばんどす。

リャナンシー:よろしか?分かってはりますやろけど、負けた方がチャンピオンどす。ただし、わざと負けるのはあきまへん。そないなことしたら、「反則勝ち」になりますさかい、あんじょう気をつけなはれや。ギブアップも、した方が「勝ち」になりますえ。よう頭に入れときなはれ。

リャナンシー:ほな、おきばりやす。


0:間


ガンコナー:よう、ちっこいの。なかなかやるみてえだが、相手が悪かったな。アンタの「無勝記録」も今日までだ。

ガンコナー:軽ーく・・・ひねられてやるぜ。

ケット・シー:その言葉、そっくりそのまま返すにゃ!今日がアンタの、じゃなくて、オイラの命日にゃ!

ケット・シー:きっちり・・・ノックアウトされてやんよ。

リャナンシー:両者、クリーンファイトを心掛けなあきまへんえ。さあ、グローブを合わせて。

ガンコナー:この試合が終わった時、リングに立ってるのは・・・アンタだ。

ケット・シー:それはどうかにゃ?

シーオーク:『さあ両者、いまグラブを合わせました!いよいよ(試合開始です)』

ガンコナー:(被せて)ぐはあ!

ケット・シー:へっ?

シーオーク:『おおっと、ここで、チャンピオンダウン!』

ケット・シー:嘘にゃろ!まだグローブタッチしただけにゃ!

リャナンシー:ワーン、ツー、スリー・・・

ケット・シー:何で、カウントしてんのにゃ!!えっ?まだ試合始まって無いでしょ!?

シーオーク:『さあチャンピオン、果たして立てるのか?』

リャナンシー:フォー、ファイブ・・・

ガンコナー:ぐぅううう・・・

シーオーク:『チャンピオン、立ちあがろうとしていますが・・・これは完全に足に来てますね』

ケット・シー:何でグローブタッチで足に来るんにゃ・・・

リャナンシー:セブン、エイト・・・

ガンコナー:ぬうあああああ!

シーオーク:『チャンピオン、カウント8で何とか立った!』

ガンコナー:(荒い息遣い)

リャナンシー:あんさん、まだ続けられまっか?

ガンコナー:(息切れながら)できーる、できるよー。まだまだ、できーるよ。

シーオーク:『チャンピオン、早くもKO寸前だ!』

ケット・シー:(何にゃコレは?一応真面目にボクシングしようと思ってた自分がバカバカしくなってきたにゃ)

ケット・シー:(まさかここまでひどいとは。正に「茶番」にゃ)

リャナンシー:ファイッ!

シーオーク:『試合再開です!』

ケット・シー:(この様子じゃ、こっちからパンチ打てないにゃ。オイラのパンチ当たったら、この人死んじゃいそうにゃ)

シーオーク:『両者、相手の出方を伺います』

ケット・シー:(まずは、相手に打たせるにゃ)

ガンコナー:っ!

シーオーク:『ここでチャンピオン仕掛けた!』

ケット・シー:っ!

ガンコナー:ぬああああ!

シーオーク:『チャンピオンの右ストレート!』

ケット・シー:あぶにゃい!

シーオーク:『挑戦者、間一髪のところでかわした!』

ケット・シー:(し、しまった。うっかりよけちゃったにゃ。当たっておけば良かった)

ケット・シー:(けど、思ったよりマトモなパンチにゃ。あれなら充分ノックアウト負けできそうにゃ)

ケット・シー:(次こそは、あのパンチを喰らって・・・?)

ガンコナー:・・・

ケット・シー:(この人、何で動かなくなったにゃ?)

ガンコナー:ぐはあっ!!

シーオーク:『チャンピオンダウン!』

ケット・シー:何でやねん!!

リャナンシー:ワーン、ツー、・・・

ケット・シー:だから何でカウントするんにゃ!?オイラのパンチで倒れたんじゃないでしょ?

ケット・シー:アンタ、ボクシングのルール知ってんのか!?

シーオーク:『これがチャンピオンの必勝・・・もとい、必敗パターンです!自分のパンチの衝撃に身体が耐えられない、通称「自滅パンチ!!」』

ケット・シー:んなアホな。

リャナンシー:フォー、ファイブ・・・

ガンコナー:ヌウウアアアヴァ・・・

シーオーク:『さあチャンピオン、立てるか?』

ガンコナー:ゴヴァッ!(吐血)

シーオーク:『おおっとチャンピオン、大量に吐血!』

ケット・シー:何という虚弱体質。よく今まで生きてこれたにゃ。

リャナンシー:セブン、エイト・・・

ガンコナー:うぐふんあっファっヒッヒ!!

シーオーク:『チャンピオン、謎の奇声を上げながら何とか立ち上がった!』

ガンコナー:(激しい息遣い)

リャナンシー:どないどす?まだやれまっか?

ガンコナー:(色々吐きながら)できーゆよお?できっひゅよ?

シーオーク:『何か色々出ちゃってますが、どうやら続けられるようです!』

ケット・シー:もう立たなくて良いにゃ。見てて痛々し過ぎるにゃ。

リャナンシー:ファイッ!

ケット・シー:(パンチを打ってもダメ、打たせてもダメ。一体どうしたら良いんにゃ)

ケット・シー:(こうなったら、イチかバチかにゃ!アイツがパンチを打ってきた瞬間、自分から当たりに行くんにゃ!)

ケット・シー:(反則取られちゃうかも知れにゃいけど、それが唯一の勝機・・・いや、敗機にゃ!)

ガンコナー:グウァアア!

シーオーク:『チャンピオンが襲いかかる!』

ケット・シー:(さあ・・・来いにゃ!)

リャナンシー:っ!ストップ、ストーップ!

ケット・シー:えっ?

シーオーク:『おおっと、レフェリー試合を止めたぞ?』

ケット・シー:どうしたんにゃ?

シーオーク:『レフェリー、チャンピオンに近付いていきます』

リャナンシー:・・・これは

シーオーク:『まさか・・・』

ケット・シー:?

リャナンシー:立ったまま

シーオーク:『気絶しているううううう!!』


0:間


ケット・シー:はあああああああああああ!?

シーオーク:『衝撃の結末!ガンコナー選手タイトル防衛成功!!』

リャナンシー:(拍手しながら)おめでとうチャンピオン!

ケット・シー:・・・

シーオーク:『あ、ケット・シー選手』

ケット・シー:何にゃ?

シーオーク:『初勝利おめでとうございます』

ケット・シー:うるせえええええええええ・・・にゃ!!!



0:おわり