『コンビニ』 作:よぉげるとサマー

【CHARACTER】

グレムリン:A

 小人系。イタズラをする気は無いモノの、自分の意思とは関係なく、機械に近付くと勝手に壊れてしまう。常に風船ガムを膨らませている。

デュラハン:B

 ビビり。常に愛馬の心配をしている。首を起点に頭と胴体が離れている(乗せておく事は可)。

レプラコーン(クルラホーン):C

 靴職人(裁縫全般得意)。イタズラ好き。酔うとクルラホーンになり手が付けられない(この状態を仲間内で「クルった」と言われている)。

ガンコナー:D

 チャラい。異性を見ると口説かずには居られない。パイプを吹かす喫煙者であるが、近年肩身が狭い(電子タバコに乗り換えようか切実に悩んでいる)。口癖は「連れないなぁ」。

プーカ:E

 色黒。性格が悪い。黒馬・黒山羊・鷲に変身できる。

シーオーク:F

 歌とダンスが好き。客引きが天職だと思っている(禁止行為なのでストレス)。

リャナンシー:G

 男好き。アゲマン。京美人。不意に出てしまう口癖「~どすえ」がコンプレックス。

 ※男性が演じる場合はオネエ

ケット・シー:H

 猫。喋るも喋らないも、四つ足も二本足も気分次第。手下の猫を駒の様に扱う事も有れば、身を挺して守る事も有る。気分次第。口癖は「そういう気分ニャ」。

エサソン:I

 小人系。心優しい。無類のキノコ好き。キノコの事になると目の色が変わる。口癖は「はにゃ~♪」


  

【STORY】

A:だから、マジでアレ最悪なんだって。トマト缶とビネガー混ぜてれば、人生が全部上手くいくって思ってる。

B:……んなわけねぇって。

A:そう! そんなわけない! つーか、トマト缶なんて、すき好んで食うとか信じらんないって!

B:ちげぇよ、別にそんなとこ、どうでもいいって。

A:はぁ!? なに、アンタ、トマト食えるわけ!?

B:食えるわ……だから、そうじゃなくて……バイト中に来んなって。

A:なに? いつ来たっていいでしょ。こっちは客だぞ。

B:どこがだよ、何十分もギャーギャーわめきやがって。いい迷惑だって。

A:別にいいでしょ、客いないし。

B:俺がいるって。

A:知らねーよ、んなの。

B:はぁ?

C:てろろんてろろろん。(入店音)

B:あ、客来たって……いらっしゃいませー。

A:だいぶ夜遅いけど、来んだね、客。

B:少ないけど来るわ、夜働いてる人もいるだろって。

A:大変だなー、なんで昼に働かないんかね?

B:夜働いてる俺に聞くなって。

A:いや、夜働いてる奴に聞かないと、わかんないっしょ。

B:まぁ、そうか……あ、どうぞー。……温めます?

C:大丈夫です。

B:はい。

A:……なんで夜働いてるんすか?

C:え?

B:お前、バカっ、やめとけって!

A:別に、いーじゃん。あ、てか、働いてて起きてるんですか?

C:あぁ……いや、仕事終わりですね。

B:あの、すみません、こいつバカで……相手しなくていいですからね。

A:バカって言う奴がバカなんだって知らんのか?

B:マジで黙れって!

C:あはは……いいですよ、あと帰って、飯食うだけなんで。

A:イートインで、それ食いながら話そ……しましょー。

B:お前、だから……いい加減。

C:大丈夫ですよ。話しましょうか。

B:いや……そこ、この時間、使えないって。

A:よいしょ。席おろしたんで、どーぞっ。

C:ありがとうございます。あ、すみません。やっぱりこれ、温めてもらっていいですか?

B:……はい。

D:ぺぽぺぽぺぽん。(入店音)

B:あ、いらっしゃいませー。

D:うい。お兄さん、トイレ借りていい?

B:あ、はい、そっちです。

D:あざすあざす。

A:えー、じゃあ靴作ってんの?

C:まあ、直す方が主な仕事だけど。たまに作りますね。

A:革からぁ?

C:革からってのは……まあ、仕入れた物を型に合わせて裁断するとこからは、やりますね。

A:やばぁ、職人じゃん、かっけぇー……それも?

C:いや、このスニーカーは流石に……ほら、知ってるブランドでしょ?

A:あ、そういうなんか、下請け的なのじゃないんだ。

C:オーダーメイド……っていうのか、ハンドメイドっていうのか、そんな感じですよ。

A:うへー、どんなの作ったとか、写真ないんすか?

C:あー、ちょっとお待ちを……。

B:コミュ強すぎんだろって……あ、やべ。ホットスナック補充しないと……。

E:たりらりたりーら、たりらりらー。(入店音)

B:今日、客多いな……いらっしゃいませー。

E:……やあ。

B:げっ。

E:げっ、だって? なんて古典的な嫌悪感の出し方をするんだ君は。頭と体を切り離せるんだから、もっと先進的なリアクションをしてみせるべきだろう?

B:……いや、関係ないだろって。古典的で悪かったな。

E:べつに、悪いとか、良いとか。評価や批評をしたい訳でも、してる訳でも、無いじゃないか。古典を貶めたい訳じゃ無いんだよ、君がイマイチ自分の個性を活かしきれて無いことに、ちょっとしたジレンマを感じたんだ、それだけだよ。

B:うるさいって……相変わらず、よく喋る奴だな。何か買いに来たんじゃないのか?

E:あぁ、そうだった。あまり君に構ってる暇は無いんだ、すまない。少し見させてもらうよ。

B:何がすまないなんだ……さっさと帰れって。

A:まーた、喧嘩してんのか。これくれ。

B:いや、別にそんなんじゃないって……酒買うの?

A:おー、呑みながら話そうと思って。

B:……なんで盛り上がってんだって。

A:いや、おもろいよ? あ、ガムも。

B:酒呑みながらガム食うなよ?

A:意外と合うやつなんだよ、この味は。

B:そんなガムなんてねえって……ほら、お代。

A:ほいよ。

B:俺に渡すんじゃないって。そこの前にある機械に入れ……あっ、やっぱ。

A:あ、そうか、ここね。

B:あー、いいって、俺が……あーっ!

A:お、おぉ? なんだ、硬貨が挟まって止まったぞ?

B:ぐぁ……やらせんじゃなかったって。

A:あー……金は一応全部入れたから、ごめんけど、後は、よろ。

B:……最悪だ、って。

D:いやー、奇遇ってか‥‥運命じゃね?

E:じゃ、無いな。そんな軽々に運命などと仰々しく表現するんじゃないよ。単に利用するコンビニの範囲が近いのと、時間が噛み合ってしまっただけだ。不幸にもね。

D:つれないなぁ。もっとキラキラした日常を生きようよ、俺ならそういう世界……見せてあげれるかもよ?

E:お前に出来るのは精々、安い電飾でも体に巻き付けて、コンセントの半径をうろついて見せるくらいの狭い世界だろうに。

D:しんらつー! でも……そういう所も、魅力的ぃっ。

E:お前のような、短絡的で、節操も知性も無い輩を、極めてスマートに言い表す、良い言葉があるんだ、教えてやろう。キモい、だ。

C:だぁめだっ! 靴なんてのは、大した金にならねぇんだからよぉ! テキトーにブランドっぽいバッグとかぁ、コピー品みてぇなの作りまくってた方が、よぉっぽど儲からぁ! ガハハハハハ!

A:アハハハハ! 突然どしたんっ! 職人の誇りどこやっちまったんだよ! 急におっさんくせえし!

C:誇りなんてなぁ……嫁が掃除機で吸い取っちまったよ! いねぇけどなぁ! ガハハハハハ!

A:ふぅー! 独身貴族ぅー! アハハハハ!

B:な、なんだ、みんな突然めちゃくちゃ大声で……うるさいって!

F:てぃりらりらーん。(入店音)

G:とぅとぅとーんとぅん。(入店音)

F:マジなんすって、俺のパフォーマンスで、すげぇ場があったまったのに、アイツら……って、うるさっ。

G:なんや、えらい騒がしいなぁ。あんたのライブより、盛り上がってんのちゃう?

F:いやいやいや、そりゃないっすよ、ネーサン! さすがにさすがに!

B:あー、い、いらっしゃいませぇ……。

A:おーいっ、酒くれ酒ー! 追加だぁ!

B:おわっ、強くないくせに馬鹿みたいに呑もうとすんなって……あ、レジに近寄んな!

C:ゔぇー、足りんぞー酒ぇー! あ、あとだし巻き玉子も。

B:居酒屋じゃねぇって!

E:おぉい! 君、この迷惑で不愉快でクソでゴミでカスなコイツをどうにかしてくれ! 客の管理も君の仕事だろう!

B:えぇ……とぉ。

D:ひでぇっ! ちょいちょーい、照れ隠しも程々にしよーよー。ごめんねぇ、絡んじゃって。ほら、続きは俺の家ででも、さっ!

E:誰が行くかっ! キモ男!

D:くぅーっ、つれないねぇ! でも……燃えちゃう。

E:キモい! 本当に、鍋底の焦げ目みたいな奴だなっ!

B:あ、はは……。

F:あぁ……? この周り別に呑み屋街ってわけじゃなかったよな。

G:そこそこの住宅街やなぁ。まあ、儲かっとるんはええことや。

F:そうっすかねぇ……。

B:全然よくねぇって……なんで俺一人の時にこんなことに……。

G:……あんさん、困ってはるん?

B:え? ええっと……困ってるっていうか。

G:何やの。はっきりせんと、何もわからんで?

B:う、す、すみません。

F:あー、ネーサン、あんま圧かけないであげて下さいよ。お兄さん、ネーサンは、ハッキリしない奴とかウダウダしてる奴、嫌いなんでね。あんま悩まないで、スパッと答えてあげてよ。ね?

B:は、はぁ……。えっと、どちらかというと、困ってます。

G:いらん。

B:え?

G:どちらかとか、えっととか、いります? イエスかノーか、でええ思いますけどね。

B:……すみません。

G:なんやの、さっきから謝りはって……アタシが悪いみたいやないの。ねぇ?

F:ネーサン、勘弁してやってくださいよ。きっとシャイなんすよ、お兄さん。

G:……まあ、それは失礼しはりました。

B:……いえ。

G:でもなぁ、自分で何とかせんと、ツライ状況変わらんよ? ビシッと、いさめる時はいさめんと。何の為にいはるん? ……って、言われてまうで?

B:……そうです、ね。

F:ネーサン、それくらいにして、買う物買っちゃいましょうよ。

G:あぁ、せやね。こんなとこ長くおったら、何されるかわからんしなぁ。

D:そうですね。ここは少し騒がしいですし、静かになれるとこ……ご案内しますよ?

G:……誰?

F:おいおいおい、流れるようにネーサンの手を取るなボケ!

A:うぇーい、ハイヒール魔改造してくれるってよぉー。よかったじゃーん。

E:やめないか! せっかく、あのゴミから解放されたっていうのに、何なんだお前たちは! 靴に触るな!

C:あぁん? 俺の靴がっ、履けねえってかぁ! ガハハハハハ! こーらっ、動かないのっ。靴が脱がせられないでしょっ。ガハハハハハ!

A:ひゅーっ、えっちだぁ! アハハハハ!

E:やめんかぁー!

F:おいっ、気安くネーサンにアプローチすんなっつってんだろ!

D:なになにぃ? 自分で道を切り開かないと、人生上り坂ばっかだよ?

F:あ? なんだそりゃ?

D:下らないってこと……さっ! ばきゅーんっ! ねぇ、いまカッコよかったっしょ! 惚れた?

G:んー、にいさん、おもろいこと言いはるなぁ。

D:でしょっ! やった、好印象っ!

F:バカっ、皮肉だよそりゃ! 何わけわかんねーこと言ってんだボケって意味だっつの!

D:何わけわかんねーこと言ってんだボケっ!

F:おめーだよ!

B:も、もう……マジで、静かにしてくれーーーって!

H:バリーンッ!(入店音)

I:どごごぉーんっ! キキィーッ!(入店音)

B:だぁああああああ!

H:……すまんにゃ、アクセルとブレーキを同時に踏んだら、アクセルが勝ったにゃ。

I:はにゃ〜、許せよガキども〜。

B:な、ななな、なんだってんだって……。

H:おぉ、すまんにゃ。まさか貴様以外、全員轢いてしまうとは……貴様、さては今年大吉にゃ?

B:今年……おみくじ引いてないって。

I:はにゃ〜、引いてないし、轢かれもしないし。どっちつかずな奴〜。

H:まっ、引かなかっただけで、きっと大吉だろうにゃ。でも、自分の手に入れられなかった大吉は、果たして大吉なのかにゃ?

B:……なんだって?

I:はにゃ〜、読解力、ぜろ〜。

H:にゃから、いや、だから、を、にゃから、にするのは分かりづらいにゃ……だから。

B:言い直さなくても良いのに……。

I:は? 親切心だろが、てめぇ、あんま調子こくなよ?

H:おい、キノコ食え。

I:むぐっ、うっ、あっ、あっあっあーっあーーーーっ、ばくもぐむしゃもぐばぐっ……はにゃ〜。

B:こわい……こわいって……。

H:……食うかにゃ?

B:や、良いですって!

H:そうか……にゃ、気を取り直して……いや、じゃ、を、にゃ、にしたら分かりづらいか……じゃ。

B:だから良いって、言い直さんで。

I:はにゃ〜、親切心だろが〜、あんま調子のんなよ〜。

B:キノコ食っても食わんでも大して言うこと変わってないって……。

H:じゃ、気を取り直して……轢き直すにゃ。

B:は? えぇっ、なんでっ!

H:えっと……そういう気分にゃ。

B:どういう気分だって!

I:…………つらい、おわりだ。

B:キノコ切れてダウナー入ってるっ! こええって!

H:まあまあ、貴様がおみくじを引かず、大吉かどうか分かんなかったあの日あの時に戻ったつもりでー……轢き直そうにゃ。

B:それ、うまいこと言えてないってー!

H:轢き直そうや、の、や、を、にゃ、にするのはー!

I:……僕なんて生まれなきゃよかった。

B:言い直さんでいいし、ダウナーすぎてこええってーーーーーー!

H:ぶおおおおおおおん!(車のエンジン音)


A:……ぱぁんっ!(フー船ガムの破裂音)

B:はっ! ……俺の部屋……えっ……ゆ、夢……だった、って……?

A:違うよ。

B:わぁっ、なんでいんだって!

A:あれは夢じゃない。組織の亜空間干渉によって生じた、平行世界を閉じ込めた領域で起こった……計画的犯罪。

B:ん? え? は? な、なんだって? てか、組織って?

A:それに答えてる時間はない。急いで出る準備して。

B:えっ、はっ、えっ? ど、どこに何しに行くんだっ?

A:決まってるでしょ……アンタの顔を取り戻しに行くんだよ。

B:壮大……って、えっ? いつから無かったの!?



終了。


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自作の声劇台本まとめ

https://note.com/gestalt_summer/n/n258ee3e888bb

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