『神様に護られている男』 作:あかおう


『神様に護られている男』

作:あかおう


女:これはですね、私の親しい友人の中で霊感も無いのに見えてしまった人のお話です。

女:友人はいわゆる「超肉食系女子」で、狙った男性は必ずオトしていたんですね。

女:その日も仲間内で飲み会をして、なんやかんや理由をつけて狙っていた男性をお持ち帰りしたんです。

女:私はまぁ、「いつもの事だし好きにしてくれ~」って感じで見送ってたんですけど、

女:友人に次の日呼び出されまして。尋常じゃない位真っ青な顔で彼女はこう言うんです。

女:「・・・無理だった」と。

女:私は、え?なにごと???百戦錬磨なアナタが一体全体どうしちゃったの??と聞くと、

女:うなだれて遠くを見るように彼女は口を開いたんです。「福禄寿(ふくろくじゅ)に護られてる男は・・・無理」。だと。

女:私は、彼女の身に何が起こったのか。彼女に更に詳しく事情を聴いてみた。

女:彼女の話はこうでした。


女:いつものように意中の男性をお持ち帰る事に成功し。いざ!彼を押し倒そう!!と最高潮の時です。

女:・・・・相手の男性の背中から、紙のように薄っぺらーーい、頭のながーいおじいさんが出てきたんです。

女:しかもそのおじいさんはこちらを見ずに男性の方を「情けない」とでも言いたげな顔で見つめているんです。

女:しばらく固まっている彼女に対して、相手の男性は言いました。「どうしたの?」って。

女:そこで友人は一度居直り、深いため息をついて男性にこう言いました。

女:「(友人)あのね、その。私霊感とか全く無いと思うんだけど、今その。」

女:「(男性)え?なに?どうしたの?」

女:「(友人)・・・あなたのね、後ろに。頭の長いおじいさんが貼り付いてて・・・その気になれなくなっちゃった・・・・」

女:と。友人は流石にこれは相手もドン引きだろうなぁと思っていた矢先、相手の男性が口を開いて言いました。

女:「(男性)(溜息)はぁ・・・。それ言われるの、三回目なんだ・・・」と。

女:事のあらましを言うと、こうです。


女:男性の母方のご実家が、七福神の中でも福禄寿(ふくろくじゅ)という頭の長いおじいさんを祀っている有名な神社。

女:男性は一応長男ではあるものの、将来は神社の跡継ぎなんて全く考えておらず、都会での暮らしを満喫し、

女:更には女遊びばかりして、流石に母親にも怒られていたそうなんですね。

女:そんな折、いつもの様にナンパした女性と良い感じになった時。相手の女性に、

女:「申し訳ないけど、なんだか・・・背中におじいさんが居る気がするから、私は無理かな」って断られたんです。

女:最初は男性も、ナンパの変わった断り方だなー位に思ってたんですが。

女:その後も本気ではないけど、良い感じになりたい女性にアプローチしたものの。

女:寸でのところで「背中におじいさんが居る気がする」と言われて、それ以上はどうしても進展しなかったそうなんです。

女:全く接点のない女性二人に同じ発言をされたので、流石に怖くなった男性は、ちゃんとした霊媒の方に見てもらったそうです。

女:すると、霊媒師の方にこう言われたそうです。

女:「福禄寿(ふくろくじゅ)が、”こんな跡取りで情けない”と嘆いておられる」と。

女:男性はそれからパッタリと女遊びをやめて、仕事も真面目に取り組むようになり。

女:昨年無事に、その神社の跡取りになったとの事です。