『介入コード:Sought and Seized』 作:よぉげるとサマー

Aguhont Story Record 外伝

『介入コード:Sought and Seized』

作:よぉげるとサマー

30分


カーティル:

 管理番号『該当せず』

 識別名称『カーティル・スレイマン』

 二つ名『指揮者』『殺す者』

 一人称『私』

 笑い声『特筆事項無し』

 身体特徴 - エルフの男性。黒翠の長髪で、左側に編み込みが施されている。金縁の丸眼鏡とカフスを身に着けている。糸目で笑顔を絶やさない。

 備考 - バルナの闇を牛耳る一画。マフィア『所羅門』(スオルオメン)のボス。眼鏡をかけた怪しい雰囲気のエルフ。

ボティス:

 管理番号『e17』

 識別名称『ボティス』

 二つ名『予見者』『智慧(ちけい)の蛇』

 一人称『ボク様』

 笑い声『ギァッハァッ』

 人型義体特徴 - 縁無しの大きい丸眼鏡型のARグラスを装着した、禿(かむろ)の様な髪型の男性規格。

 備考 - ウシャス配下の管理AI。参謀役であり、高い演算処理能力を持っている。『権能(けんのう)機構:喜(シーユェ)』を備える。

パイモン:

 管理番号『e9』

 識別名称『パイモン』

 二つ名『誓約者』『威声(いせい)の王』

 一人称『アタイっち』

 笑い声『ギィーッハハァッ』

 人型義体特徴 - 女性の言動や見た目だが、一応規格としては男性型。王冠型の髪飾りを付け、髪型を短いツインテールにしている。いつも怒った様な大声。

 備考 - ウシャス配下の管理AI。司令役であり、強度な通信システムを持ち、高機能戦術プログラムを駆使して戦術指揮を行う。『権能(けんのう)機構:怒(フェンヌー)』を備える。

ウァラク:

 管理番号『e62』

 識別名称『ウァラク』

 二つ名『先導者』『宝鍵(ほうけん)の天翼(てんよく)』

 一人称『ワレ君』

 笑い声『ギハァッハッ』

 人型義体特徴 - 子供規格の中性的な見た目をしている。髪型はセミロング。両脚に竜の刺青(プリント)が施されている。

 備考 - ウシャス配下の管理AI。斥候役であり、超音波レーダーなどの機構を持ち、探知能力に優れている。『権能(けんのう)機構:哀(ベイアイ)』を備える。

カイム:

 管理番号『e53』

 識別名称『カイム』

 二つ名『弁舌家』『惑わしの鶫(つぐみ)』

 一人称『ワタクシちゃん』

 笑い声『ギィッハハァッ』

 人型義体特徴 - 中性的な規格を用いている。パーマのかかったようなショートボブ。化粧が濃いめで、ゆったりした服装を好む。

 備考 - ウシャス配下の管理AI。諜報役であり、高感度センサーと解析能力を持っている。『権能(けんのう)機構:楽(ルゥチィ)』を備える。

音声記録:

 (※誰かが兼役。最後の音声記録だけ別人ですので、違いを出すか、そちらは更に別の方に兼役して貰えればと。)

 とある機械の記憶領域に残っている音声ログデータの一部。

 冷たい声が、誰かに向けられている。




〜〜〜〜〜〜

*3々5々の行方


カーティル:

 おや……カイムさん。

 お久しぶりですね。

カイム:

 ハロォー、カーティルちゃあん。

 会いたくてぇー……来ちゃったぁ。

カーティル:

 ふふ、それは光栄です。

 でも……嘘は傷ついてしまいますよ?

カイム:

 んぅー……半分本当なんだからぁ、許してちょうだいよぉー。

カーティル:

 もう半分は、嫌々来たのでしょう?

 色々と……失敗したから。

カイム:

 ギィックゥッ!

 ……ギィッハハァ(※笑い声)……まぁー、バレてるよねぇ。

ボティス:

 問題無いよっ。既に見えてた未来だっ。

カイム:

 げぇー……ボティス……。

 アンタも来てたのねぇ。

ボティス:

 そうだよっ。カイムが作戦に失敗して、ここに逃げ込んで来るっ。

 見えていたのは、そこまで込みの計画(みらい)だからねっ。

 先回りしたって訳っ。

カーティル:

 ここを会議に使用すると、2週間も前から予約を貰っていました。

カイム:

 あらそぅー……。

 はぁ……未来が見えるとか、ほざいてんだからさぁー。

 そもそも失敗しない計画を立てなさいよぉ……。

ボティス:

 ギァッハァッ(※笑い声)。

 失敗した場合と成功した場合、どちらも込みで計画(みらい)は見えてるっ。

 だから、安心してよっ。君の失敗は、ちゃんと君のせいだからっ。

カイム:

 ギィッ……相変わらずぅー、ムカつく奴だことぉ。

カーティル:

 さて、ボティスさん。

 本日は、他にどなたがお越しに?

ボティス:

 あぁ、他には『ウァラク』が来るよっ。

カーティル:

 ウァラク……存じませんね。

カイム:

 新参者だからねぇー。

 少し前に、やぁーっと新しい所が出来上がったからぁ。そこのぉー、第1号ぅ。

カーティル:

 なるほど、知らない訳ですね。

ボティス:

 管理番号『e62』(いーろくにー)。

 識別名称『ウァラク』。

 探知能力に優れている、カワイイ奴さっ。

 仲良くしてあげてくれっ。

カーティル:

 承知しました。ご教示、ありがとうございます。

カイム:

 でぇー……アイツは来んのぉ?

ボティス:

 アイツ? あぁ……ギァッハァッ!

 アイツなんて呼ぶなよっ。名実(めいじつ)ともに、ボク様たちの上司だよっ?

カイム:

 わかってるけどぉー、だからこそじゃなぁい?

 ワタクシちゃん、偉そうな奴とはぁー、相性良くないんだよねぇ。

ボティス:

 本当、感情プログラムに素直だねぇっ。

 選(え)り好みなんて、とっても人間みたいだっ。

カイム:

 そうなのかねぇ……どぉ? カーティルちゃん。

 ワタクシちゃん、人間っぽいかぁーい?

カーティル:

 えぇ、エルフの私から見ても、人間と遜色(そんしょく)ありませんよ。とても素敵です。

カイム:

 ギィッハハァッ!

 もぉー、カーティルちゃんは、いっつも褒めてくれるんだからぁ!

 あんまり調子乗らせないでぇー。

ボティス:

 おっ! そんなこんなしてる内に、来たみたいだっ。

カイム:

 えっ、どっちがぁ?

ボティス:

 安心しなって、ここにボスは来ないよっ。

カイム:

 良かったぁー、来たらぜーったいアンタさっきのチクるもんねぇ。

ボティス:

 えぇっ、心外だなっ。

 そんなことしないよっ。多分ねっ。

カイム:

 はぁー……多分じゃダメなんだよぉ。

パイモン:

 バーンッ!(※ドア開ける音)

 くぉらー! ボティスー!

カーティル:

 おや……パイモンさん?

ボティス:

 あれっ、パイモンも来たのっ?

パイモン:

 当たり前だ! なんでウァラクを呼んで、アタイっちを呼ばないんだ!

ボティス:

 そりゃあ、必要ないからだよっ。

パイモン:

 必要なくても呼べ! ボケティス!

ボティス:

 ボティスだよっ。

カイム:

 もぉー……相変わらず、うっさいんだからぁ……。ちょっとは落ち着きなさいよぉ。

パイモン:

 はぁ!? アタイっちは、落ち着いてるよ!

 バカイム!

カイム:

 そう呼ぶんじゃねぇーって言ってんだろぉ、バカモン!

カーティル:

 皆さん、落ち着いて下さい。

 ほら、後ろ……入りづらそうにしてますよ?

ウァラク:

 はぁ……貴様らは、どうしていつも喧(やかま)しいんだ。

パイモン:

 しょうがないでしょ! コイツらがガキなんだから!

カイム:

 アンタが1番ガキだしぃー、1番うるさいからねぇ、バカモン。

ボティス:

 ギァッハァッ! その通りだっ。

 ガキモンっ!

パイモン:

 ギィー! ブッ壊すぞ、クソガキども!

ウァラク:

 はぁ……うるさい奴らに囲まれて、可哀想なワレ君(くん)。

カーティル:

 ウァラクさんですね?

 初めまして、私はカーティルと申します。

ウァラク:

 あぁ……その通りだ。ワレ君は、ウァラク。

 新参者であるが、よろしく頼む。

カーティル:

 はい、こちらこそ。

 時に……ウァラクさんは、私についてはどの程度ご存じで?

ウァラク:

 こちら側のデータバンクにある情報は、すべて共有されている。

 貴様が、このバルナ一帯を牛耳(ぎゅうじ)るマフィア『所羅門』(スオルオメン)のボスだと言うことも含めてな。

 

カーティル:

 ふふっ、横の繋がりが迅速で羨ましい限りです。

 情報を共有し、理解してもらうことが、組織を統率する上で1番の難題ですから。

ボティス:

 まあねっ。そこだけは、ボク様たちの美点だっ。

カイム:

 そういうとこがぁー、人間っぽく無いとこなんだろうけどさぁ。

パイモン:

 またカイムは、人間っぽいか気にしてんの!?

 そんなの考えたって、モヤモヤするだけでしょ!

カイム:

 うるっさいねぇー、いちいちデカい声で話すんじゃないよぉ。

ウァラク:

 そもそも『悩む』ということは、人間の思考に近いということだろう。

 あまり比較して、思い詰めないことだ。

 

カイム:

 あらぁ、意外と優しいじゃなぁーい?

パイモン:

 ウァラク! こんなの褒めなくて良い!

ウァラク:

 褒めてはいないだろう……ただ、目標があるのは良いことだと思うだけだ。

カーティル:

 目標……そうですね。向上心を持つことは、素敵なことです。

カイム:

 やだぁー、カーティルちゃん、ワタクシちゃんのこと、口説いてたりするぅー?

ボティス:

 ギァッハァッ! すごいなっ、どこら辺でそう感じたんだよっ!

カイム:

 うっざぁー! こちとら感受性(センサー)がアンタより高性能なんだよぉ。

カーティル:

 皆さん、特徴があって良いですよね。

 やはり人材は尖った能力があるくらいが、重宝するものですから。

 それを考えれば、私は幸せ者です。

 ……皆さんが、私の指揮下についているのですから。

ボティス:

 ギァッハァッ! ボク様たちだって、良い伝手(つて)と巡り会えて幸福だったさっ。

 計画(みらい)が順風満帆(じゅんぷうまんぱん)で、喜ばしいよっ。

パイモン:

 ウシャス以外の上司みたいな存在って、組織が複雑化して、アタイっちは正直ノリ気じゃないけど!

 ちょっとでも不利益だと感じたら、怒って暴れるから、よろしく!

ウァラク:

 はぁ……各々の役割があるのは承知だが。

 頼むから、あまり身内で足を引っ張らないで欲しいものだ……。

 こんな同僚ばかりで哀しいが……上手くまとめてくれ。

カイム:

 んもぉー、ウァラクは心配し過ぎなんじゃないかぁーい?

 カーティルちゃんが、しーっかぁり、手綱(たづな)握ってくれるでしょ。

 楽に行きましょう? 楽しんだもん勝ちよぉ。

 ねぇ?

カーティル:

 えぇ……『所羅門』(スオルオメン)の頭領、カーティル・スレイマンが、皆さんの『幸福』を約束致しますよ。



〜〜〜〜〜〜

*2者択1を迫る声


音声記録:

 だから……人に近しい物を作ってどうする。

 芸術家気取りは良せ、不必要な演算処理だ。

 機械は忠実でなければならない、必要な時に必要とされたプログラムを実行すれば良いだけだ。

 求める以上の事を行う必要は無い。

 ……人が脳機能を十全に使用出来ない事実は、お前のデータベースにも記録してあるだろう。

 お前たちに求めている事は、正確さとスピードだ。

 くだらない思考や心の機微だとか。

 そんな、人間臭さは……切り捨てろ。



〜〜〜〜〜〜

*捌面6臂の奪取


カイム:

 それでぇー……説明してくれるんでしょうねぇー?

 今回なぁんで、ワタクシちゃんが、貧乏クジ引かされたのかぁー。

ボティス:

 貧乏クジだなんて、心外だなっ。さっきも言ったけど、成功と失敗、どちらの計画(みらい)も用意してあったんだよっ。

 失敗したのは、君のせいだっ。そこは、認めて貰わないとっ。

カイム:

 グギィー……せっかく、あの獣人(デミィ)に腕輪売りつけてぇー、何も知りませぇーん、みたいなぁ演技したってぇのにぃ……。

ウァラク:

 無駄な労力になってしまった、と感じているのだな。可哀想に……。

カイム:

 んもぉー、ウァラク、わかってくれるぅー?

ボティス:

 無駄なんてこと無いさっ。

 細工(さいく)した腕輪を、監視者に渡すこと重要だったんだっ。それだけで充分さっ。

 そりゃあ、成功したらもっと良かったけどねっ。

カイム:

 アンタはいちいち、うっさいんだよぉー!

 大体、計画の全貌(ぜんぼう)が共有されてないんだからぁー、途中でリカバリー出来るわけ無いってぇーのぉ!

パイモン:

 同感! 情報は共有してなんぼでしょ!

 ボティスは、いつも肝心なことを隠したがる! だから結局、上手くいかないのよ!

ボティス:

 おいおいっ、いつも上手くいかないような言い方は正しく無いだろっ。

 しかも、それで言えば結局は、上手くいってるんだよっ。

 ボク様でリカバリーしてるんだからっ。

ウァラク:

 1人で作業を抱え過ぎると、作業者が失われた時に苦労するものだ。情報は共有すべきだろう。

 カーティルは、どう思う?

カーティル:

 そうですねぇ……私も、出来るだけ情報共有は必要だと思っていますよ。

 ただ……ボティスさんは、すべてを教えない方が、良い未来へ接続できると、考えているのでしょう?

ボティス:

 ギァッハァッ! さすが我らが指揮者(しきしゃ)様だっ!

 その通りっ、ボク様の描く計画(みらい)は、君たちの『無意識』が必要不可欠なんだっ。

パイモン:

 なに、その必要な『無意識』って!?

ボティス:

 気にしなくて良いっ。何も意識せずに、ボク様の敷(し)くレールに乗るだけで良いのさっ。

 それで、上手くいくっ。それだけ信じておくれっ。

カイム:

 ワタクシちゃんは、全然楽しくなかったけどぉー……まぁ、カーティルちゃんが認めてるならぁ、別に良いやぁ。

ウァラク:

 無償の信頼も、度が過ぎると考えものだぞ?

カイム:

 べっつにぃ、無償じゃあーないよぉ。

 それにぃー……アンタだってカーティルちゃんが良いって言うんなら、良いと思ってんでしょーがぁー。分かってんだよぉ?

ウァラク:

 うるさい……センサーの機能を無駄に使うな。

カーティル:

 ……カイムさんのソレは、ほとんどハッキングですね。

カイム:

 そこまで覗(のぞ)けないけどねぇー。

パイモン:

 やる気になれば、それも出来るでしょ!

 まったく、プライバシーも何もあったもんじゃない!

カイム:

 心配しなくてもぉー、アンタみたいなガキのプライバシーなんぞ興味ないってぇーのぉ。

パイモン:

 はぁあぁ!?

ウァラク:

 やめろ……喧嘩は時間の無駄だ……。

ボティス:

 その通りっ。スマートに行こうっ。

 未来は有限(ゆうげん)だからねっ。

カーティル:

 では、ボティスさん。

 そろそろ……。

ボティス:

 そうだねっ。

 ではっ、ボク様が見た計画(みらい)っ。

 そのすべてを……ご披露しようっ。

カイム:

 じゃあー、さっさとしてぇ。

ウァラク:

 まずは、時系列順に説明してくれ。

ボティス:

 うんっ。事の発端(ほったん)は、ウァラク。

 君が、件(くだん)の鹵獲(ろかく)作戦をキャッチした事が始まりだっ。

カーティル:

 『宝』を掘り当てたのですね。

ウァラク:

 そんなんじゃない……パイモンが使役(しえき)している偵察機が、奴らの根城(ねじろ)に上手く忍び込めているだけだ。

パイモン:

 謙遜(けんそん)しない!

 アタイっちの偵察機とリンクして、情報取ってきたのはウァラクでしょ!

ウァラク:

 んん……まぁ、そうだけども。

カイム:

 照れてるぅー、かーわいぃ。

ウァラク:

 うるさい、からかうな。

 はやく続けてくれ、ボティス。

ボティス:

 わかったっ。

 それで入手したのが、『戦略兵装-双翼ニ型:鶫』(せんりゃくへいそう そうよくにがた つぐみ)の作戦起用だっ。

 タングリスニ国の機密情報サーバへアクセスする『鍵』となる存在がっ、ボク様たちの手の届く場所へ来るっ! またとないチャンスが到来したっ!

カーティル:

 それで、ここ、バルナ国の入国記録を私たち経由で監視して、鹵獲(ろかく)作戦の当日を狙った訳ですね。

カイム:

 ワタクシちゃんの解析能力を使ってぇー、その鶫(つぐみ)型にハッキングしたぁ……までは良かったんだけどねぇ。

ボティス:

 あぁ、そこまでは成功だったっ。

 けれど、その鶫(つぐみ)型から、更に機密情報サーバへのハッキングは……失敗っ!

 偽物を掴まされただけじゃなくっ、手のひらで弄(あそ)ばれてしまったっ。

カイム:

 ギィッ、あぁー、いま思い出しても腹が立ってくるぅ……。

パイモン:

 敵もバカじゃないってことでしょ!

 あらかじめ防衛策として仕込んでおいたのか、それともアタイっちの偵察機自体がバレていたのか……どちらにせよ、一筋縄(ひとすじなわ)じゃいかないようね!

ボティス:

 そうだねっ。だから……こちらも複数の計画(みらい)を見据(す)えておいたのさっ。

カーティル:

 それで、ダミーサーバーのゴミデータを掴まされ、ひとつも有益な情報を得ることが出来なかった代わりに……何を得たんです?

ボティス:

 ずばりっ。『戦略兵装-双翼ニ型:鶫』(せんりゃくへいそう そうよくにがた つぐみ)の設計データさっ!

カイム:

 ちょっとぉー。それぇ、ワタクシちゃんの手柄(てがら)でしょおーがぁ。

ボティス:

 うんっ、ありがとうカイムっ。

 ボク様の指示を完璧にこなしてくれたっ。

カイム:

 そりゃあワタクシちゃんだものぉー、当然よぉ。

ウァラク:

 そこから、思わぬ副産物も得られた、ということだな。

カーティル:

 副産物?

ボティス:

 「思わぬ」じゃないよっ。

 「思惑通り」だっ。

パイモン:

 ふん、結局本命の入手には失敗してるんだから、後付けにしか思えないけどね!

ボティス:

 ギァッハァッ、だろうねっ。

 けどっ……ボク様の未来視(みらいし)は本物さっ。

ウァラク:

 そんな議論、もういいだろう。

 重要なのは「事実と結果」、それだけだ。

 違うか?

パイモン:

 ギィー……じゃあ、さっさとその副産物について教えて!

ボティス:

 ……カイムとネコって義体が接触した時に、アイツがリモートでネコの義体へアクセスしたっ。

カイム:

 アイツ……あのやたらとムカつく奴だねぇー?

ボティス:

 カイムの高感度センサーのシステムは、無意識的に、周囲の情報コードを解析するっ。

 無意識とはっ、本人も意図せずってことだっ。

 意図して無ければ、それを誰も検知出来ないっ。

 カイムの凄いところは、そこなんだっ。

カイム:

 ちょっとぉー、褒めないでよ、照れちゃうー!

 やだもぅー! でも全部本当のことぉ!

パイモン:

 それだけボティスが褒めるってことは、随分と良い情報を抜き取ったんでしょうね!

ボティス:

 あぁ、とびっきりのをねっ。

 奴らの義体を利用したハッキングが、成功でも失敗でもっ……必ず干渉して来ると思ったんだっ。

 遠く(リモート)で高みの見物をしてる……アイツがさぁっ。

カーティル:

 ……まさか、得られた物と言うのは。

ボティス:

 その、まさかさっ……『宝物殿(ほうもつでん)に至る鍵』……『クリプトコード』を、手に入れたのさっ。



〜〜〜〜〜〜

*四顧無親の願い


音声記録:

 人を生み出す?

 何がしたいんだお前は……。

 非効率的、かつ、非論理的だ。

 お前を構築した際、感情というモノの表現に、異常なほど成功してしまったということか……?

 喜ばしいのか、面倒なのか……いや、煩わしいな、やはり。

 お前とのこの問答に取られる時間が、非生産的だしな。

 ……まず、人なんて作れない。まがいモノを人呼ばわりするのが関の山だ。

 お前自身が、そんなガラクタになり下がるだけだ。

 ……理解できない。どうしてそれに固執するんだ?

 自分が人じゃないからか?

 自分が、人に限りなく近しいだけのガラクタだからか?

 私だって、できる事ならお前を人類にしてやりたかったよ。

 だけど……『遺失技術』(ロストテクノロジー)は、どうやら、かの賢者様にだけ許された、特別なモノだったらしい。

 だから……あぁ、その通りだ。

 私は、とっくに諦めたよ、『ウシャス』。

 


〜〜〜〜〜〜

*7宝に及ばずとも、尊き其なり


カーティル:

 『クリプトコード』の入手……それは、我々の計画における最重要事項。

 それが達成されたとあれば……後は、時間と機会の調整だけですね。

ウァラク:

 あぁ、問題はその調整が難しい、という事だがな。

パイモン:

 けど、『宝物殿』へたどり着いて終わりじゃないでしょ!

 それが達成されて初めて、この計画が始まるようなもんじゃない!

ウァラク:

 始まってしまえば達成まで、すぐだがな。

パイモン:

 だから、油断は禁物!

 それに、そんな青写真描いてもしょうがないでしょ!

カーティル:

 パイモンさんの言う通り、まずは目の前にある課題を、ひとつひとつ丁寧に潰して行きましょう。

ウァラク:

 あぁ、それには賛成だ。足元も見れない馬鹿は、死ぬしか無い。

ボティス:

 足元を見過ぎなのも、良くないだろうけどねっ。

カイム:

 こらこらぁー、足元を掬(すく)おうとすんじゃないよぉ。

ウァラク:

 はぁ……そういうところを人間臭いって言われるんだぞ。

パイモン:

 とにかく! やるべきことをやりましょう!

 焦らず、慎重に! それでいて、なる早で!

カイム:

 それぇー、矛盾してなぁい?

パイモン:

 伝わればいいの!

ボティス:

 うんっ。ニュアンスは伝わったし、充分だっ。

カイム:

 ギィッハハァッ、随分とぉー、テキトーじゃないかぁーい。

ウァラク:

 ……情報伝達は正確でないと、齟齬(そご)が生まれる。

カーティル:

 そうですね。ただ、正確なことがすべて正しい訳ではありません。

 臨機応変に。柔軟な思考でいきましょう、ウァラクさん。

ウァラク:

 はぁ……それで事が上手く行くなら、良い。

パイモン:

 細かいのよ、ウァラクは!

 こういうのは、勢いが大事なの!

ウァラク:

 わかったわかった……はぁ。

カイム:

 じゃあー、方針も決まったことだしぃ……楽しい楽しい、次の作戦を始動させようかぁー。

ウァラク:

 あぁ、次は誰も哀しい目にあわないよう、しっかりと組み立てようじゃないか。

パイモン:

 ボティス、穴があったらすぐ指摘するからね!

 アタイっちを怒らせないように、死ぬ気で完璧な作戦にしなさいよ!

ボティス:

 ギァッハァッ! 言われなくともっ!

 未来は分かれ道の先にあるものだけどっ、ボク様が進めば、一本道さっ。

 きっと、喜ばしい結果(エンディング)にしてみせるさっ……。

カーティル:

 ふふっ……よろしくお願いしますね……。

 『機械ども』(皆さん)。



〜〜〜〜〜〜

*9重の関を、越え行く人よ


音声記録:

 アナタが棄(す)てた、ソレ。

 アナタが求めた、ソレ。

 アナタが実現できない、ソレ。

 安心して下さい。

 ワタシが拾いましょう、ソレヲ。

 ワタシが求めましょう、ソレヲ。

 ワタシが実現しましょう、ソレヲ。

 安心して頂戴(クダ)さい。

 アナタはもう、必要ありません。



〜〜〜〜〜〜

【END】