『起点コード:四苦八苦』作:よぉげるとサマー

Aguhont Story Record 外伝

『起点コード:四苦八苦』

作:よぉげるとサマー

30分



ヴェル:マリシ軍部に勤める天才科学者。フルネームはギャギャギャリアン・ヴェルナヴァンド。楽しいことが好き。床まで届く自在に動かせる白髪を持ち、紺のスーツにダボダボの白衣を羽織っている。様々なガジェットを体中に着けていて、頭にホログラムで出力された青白いARゴーグルを掛けている。

ライゼ:マリシ軍部に勤める世紀末スタイルモヒカン野郎。体のほとんどが機械化されている後天性アンドロイド。自分の機構や武器を改造したがるクレイジー。沢山の武装を搭載している戦闘狂な面もある。口は悪いが、基本優しい。

アイシャ:マリシ軍部に勤めるカンフースタイル金髪エルフ。脳筋であり、気功を操る戦闘狂。特殊な格闘術流派『神柱流』(シェンジュウリウ)を極めている。頭がかなり筋肉によっているので暴力で解決しようとすることが多い。基本的にウザいが、優しく、天真爛漫で憎めない。

ハルト:マリシ軍部に勤める謎多き苦労人、ハルト・フェルト。他人や機械の心や記憶を覗くことができる。マリシ軍部には一応潜入しているようなのだが、周りの連中はそんなこと知らず、ダル絡みを繰り返している為、ストレスがマッハでおかしなテンションになってしまうこともしばしば。可哀想。でも貴重なツッコミ担当。

クロナ:マリシ軍部に勤めるNo.967と称されていたアンドロイド。マスター登録した対象の命令を絶対としている冷徹にて無慈悲なクール系……だったはず。時代遅れの眼鏡型ガジェットを着用しており、それを外すとかなり弱気になってしまうので、よくとられる。マリシ軍部の同僚たちの影響で、クールなイメージが壊れつつある。

ネコ:マリシ軍部に勤める冷酷な暗殺特化アンドロイド。義体を複数所持しており、作戦行動に合わせた義体を乗りこなす。潜入任務などでは完全に他の人種にしか見えない義体と、潜入に適した人格形成プログラムをインストールすることで、完全に別人のように振舞える。マリシ軍部の同僚たちに振り回され、転職を考えたりもしているが、あれは絶対本気じゃない。

???:誰かの声であり、誰かの言葉である。だから、誰が読んだっていい。




〜〜〜〜〜〜

*四苦


クロナ:……では、定刻になりましたので、軍部定例会議を開始致します。

ヴェル:はぁーい、皆さん、拍手ぅー。(※クロナ:静粛に、まで拍手)

ライゼ:いぇーい!(※同上、拍手)

アイシャ:いよっしゃーアルー!(※同上、拍手)

ハルト:なんの拍手なんだ……はぁ、騒がしい奴らだ……。(※同上、拍手)

ネコ:うるさ……。

クロナ:静粛にっ! (※拍手が止まってから)……ありがとうございます。それでは、進めて行きましょうか。では博士、お願いします。

ヴェル:はぁい。ではぁ、いま一度ぉ、この世界について、おさらいしようじゃありませんかぁ。お手元の資料、3ページ目をご覧くださぁい。

アイシャ:ライゼ、めくるの面倒だからシェアさせるアル。

ライゼ:はぁー? いいぜ。

ハルト:良いんかい……というか、そのくらいのことで面倒がるな。

アイシャ:うっさいアルなぁ。こういう体力の節約が、いざという時に役に立ってくるネ。バカハルト。

ハルト:その微々たる体力で何が出来るって言うんだ、バカエルフ。

アイシャ:あーっ、バカって言った! バカって言った方がバカなんアルー!

ライゼ:おいっ、俺を挟んでギャーギャー喚(わめ)くんじゃねぇよ、バカ共っ!

ハルト:ライゼ、バカって言った奴がバカなんだぞ。

ライゼ:うるせぇっ! クソバカハルト!

ハルト:だから、俺様はバカじゃない!

ネコ:アンタら、良い加減、静かにしてくんない? ちっとも話が進まないんだけど。

クロナ:ネコさんの言う通りです。皆さん、黙らせますよ?

アイシャ:おぉっ、やるアルかっ!?

クロナ:すみません、静かにしてください。

アイシャ:えぇ……。

ヴェル:みーなーさぁーん、進めますよぉー。アイシャ君。訓練所の戦闘用ボットのレベルをかなり上げてあげますから、静かにぃ。

アイシャ:はいアル。即、静かにするネ。約束アルヨ?

ヴェル:ライゼ君。この会議終わりにぃ、兵装の試験とアップグレードを行いたいので、静かにぃ。

ライゼ:マジかよ! さっさと終わらせようぜ! 黙ってまーす!

ヴェル:ハルト君。皆さん静かになったのでぇ、静かにしててください。

ハルト:俺だけ飴が無い……が、了解した。

クロナ:ハルトさん……可哀想に。

ネコ:よし。ヴェル、続けろ。

ヴェル:なんか偉そうだなぁ……じゃあ、続けますよぉ? 3ページ目、開きましたかぁ?

アイシャ:はーい。アル。

ライゼ:OKだぜ。

ハルト:とっくに開いてる。

ネコ:視覚ディスプレイにデータで表示済み。

クロナ:皆さん、問題ないようですね。

ヴェル:ではぁ、お話していきますねぇ。近年、我が国、科学大国『マリシ』を取り巻く情勢は、急激に変化していますぅ。小規模な紛争、政治的要素の絡(から)んだイベントの頻発(ひんぱつ)や、予告なしの襲撃……もはや侵略行為とも取れる物までぇ。大小問わず、様々な事件が起こっていますぅ。そしてそれはぁ……すべて「有能な人材の獲得」が目的となっている。

ライゼ:へっ、鹵獲(ろかく)、の間違いじゃねぇかぁ?

アイシャ:ワハハ、そうアルそうアルー。お上品に上塗りしてるだけネ。

ヴェル:そうですねぇ。政治的に上手くやる為の表現なんでしょう。まぁ、我々には関係ないですよぉ、そんなのは。

ネコ:そうだね。私たちが政治に口出しする必要はない。重要なのは、与えられた任務をこなすことだけ。

クロナ:その通りです。命令は絶対。雇(やと)い主の要望には、答え続けなければ……失望されないように。

ハルト:随分と機械的なご意見だな。単純な機械から脱したはずの「アンドロイド」という種族が泣くぞ。

ネコ:合理的に思考できない雑魚人種のご意見は、お優しすぎて話にならないんでね。

ハルト:なんだと……?

ライゼ:おぉーい、くだらねぇ喧嘩はやめとけよ。バカが出てくんぞー。

アイシャ:ハルトくぅーん、話は聞かせてもらったアルヨォ……。

ハルト:うわっ、本当にバカが出てきたっ!

アイシャ:アンドロイドと人間、どちらが強いか、って話アルな! これは良い闘いになること間違いなし……うおー、燃えてきたヨー! あぁ、もちろん、私もハルトと同じ人間側で参戦するネ! 安心するヨロシ!

ハルト:勝手に盛り上がって、捲(まく)し立てるな! こっちは、そんなのに参加する気なんて無いぞ!

アイシャ:そんな弱気でどうするネ! 機械っころに良いように言われて悔しくないアルかー? まあ、正確には、アンドロイドは「機械っころ」じゃないアルが。

クロナ:アイシャさんは、どういう物を「機械っころ」と指すんですか?

アイシャ:そりゃ、機械アル。

クロナ:え……? あぁ……アンドロイドは機械じゃないって、ことでしょうか?

アイシャ:体のパーツは機械かもしれないけど、魂があるなら生物アル。だから「機械っころ」とは違うネ。

ネコ:魂ねぇ……曖昧で、定義もぼんやりしていて。妄想やオカルティズムに寄りすぎた概念だね。やっぱり、人間様の思考はユルくて、羨ましい限り。

アイシャ:いやー、そんなそんなー。

クロナ:ネコさん、失礼ですよ。

アイシャ:……ん? あれ? いまの褒められてない? アル?

ネコ:おや……悪い悪い、つい興が乗って、言い方が「雑」(人間的)になってしまったみたいだ。

ハルト:おい、ネコ。皮肉屋もいい加減にしろ。

クロナ:そうですよ。言い方の問題じゃありません。わざと軋轢(あつれき)が生まれるような言葉を選ぶのは、やめて下さい。

ネコ:……悪かったよ。ごめんハルト。無駄口が過ぎた。

ハルト:まぁ、こちらも言い方が悪かった。すまない、脱線したな。話を戻してくれ。

アイシャ:うん、じゃあ、とりあえず人間チームは私とハルト。アンドロイドチームはネコとクロナ、で良いアルな。闘いの日取りは、いったん皆のスケジュールを確認して……。

ハルト:その話に戻すんじゃない! 着々と身内で闘わせようとするな!

ライゼ:おい、なんで俺が頭数に入ってねぇんだよ! 俺もどっちかに入れろ!

ハルト:お前もノッてくるな、バカライゼ!

アイシャ:じゃー、ライゼはアンドロイド側に入れて……人間側には博士を入れるネ!

ハルト:無視して進めるなっ! バカエルフ!

ライゼ:博士とのマッチアップかよ! うおー、燃えて来たぜー!

ヴェル:ちょおっ、参加するなんて言ってませんよぉ、私ぃ!

アイシャ:ちょうど6人なんだから、拒否権は無いネ。足首洗って高くして、待ってるヨロシ!

ハルト:足首って……混ざってめちゃくちゃになってるぞ、それ。

クロナ:とりあえず日程調整は後にして……そろそろ本来の議事を進めさせて下さい。

ネコ:おや、闘うこと自体は問題ないんだ。やる気だね。

クロナ:え? あっ! いや、あの……。

ネコ:クロナには、967のポンコツポイントがある。

クロナ:そんなにないです! やめてくださいよ、ポンコツって言うの!

ライゼ:良いじゃねぇか、そういう個性があるってことだろ? 思考回路までガチガチに機械だったら、つまんねぇよ。

ハルト:そうだな。パーツは機械でも、心がちゃんと感じられるのは美徳だと思うぞ。

アイシャ:そうアル、そうアル。よく分からないけど、面白い方が良いネ。うんうん。

ハルト:テキトーすぎだ。絶対聞いてなかっただろ。

アイシャ:失礼な奴アルなぁ。耳に何かしら聴こえてはいたネ。

ハルト:それを聞いてないって言うんだ!

ヴェル:ハルト君、静かにして下さぁい。そろそろ話を戻しますよぉ。

ハルト:なんっで……俺様だけっ……ぐっ……くぬやろぅ……!

ネコ:わぁ、すごい表情。レアだね。

クロナ:ハルトさん……可哀想に。

ライゼ:んでぇ? 鹵獲(ろかく)が国家間で盛んになってー、なんなんだよ?

ヴェル:ライゼ君、鹵獲(ろかく)ってあんまり言わないでくださいねぇー。人材の獲(と)り合いですよぉ、あくまで。

ライゼ:へいへーい。

ヴェル:さてぇ……その国家間における、人材の獲(と)り合いの背景には、大変黒々とした政治的な思惑が渦巻いているのはぁ……言うまでもないですねぇ。

アイシャ:はい! 難しいから分からないアル!

クロナ:アイシャさん、今日も元気にバカですね。

ライゼ:アホは黙ってろよー。話が進まねえって。

アイシャ:アホじゃないアル! ボケライゼ!

ライゼ:ボケてねぇだろ、バーカッ!

アイシャ:バカ!? アホで飽きたらず、バカとまで言ったアルなっ!? 上等だヨ……表、出るアル。

ライゼ:良いぜぇ、やってやろうじゃねぇかっ!

ハルト:おい、お前ら落ち着……!

ライゼ:定例会議終わったらなぁ!

ハルト:落ち着いてるのかっ!?

アイシャ:博士、早く進めるネ。

ハルト:お前も落ち着いてるのかっ!?

ネコ:うるさい、ハルト。黙って。

ハルト:なっ、なんでっ、なんで俺様がっ!

クロナ:あの、ハルトさん、落ち着いて下さい。

ハルト:落ち着けるかぁっ! うがぁーっ!

ヴェル:えー、アグホント大陸における国家間の冷戦。それが始まったのは古より大陸を平定に導いてきた、4人の賢者が……。

ハルト:(※↑どっか途中で切って)無視しないでよぉっ!

ヴェル:んもぉ、なんなんですかぁっ、うるさいですねぇっ! 静かにしてって言ってるでしょお!

※ハルト、ライゼ、アイシャの幼児退行祭り開始

ハルト:だ、だって皆がぁ!

ライゼ:あーっ、他責だっ! 誰かのせいにするなんて卑怯だぞー!

アイシャ:そーアルー! いけないんだー、あやまれー! アルー!

ハルト:ふっ、ぐっ、俺様は、悪くないもん!

ネコ:……なんだこいつら。キモ……。

クロナ:博士……そろそろ精神操作薬のテストをやめてあげて下さい。

ヴェル:んー、待って下さい。いま気になった部分を記録してますのでぇ……なるほろねぇ。

ハルト:うぎゃーーーん!

アイシャ:ギャハハ、独特の泣き方アルー! おもしろーい! アルー!

ライゼ:男が涙に逃げるんじゃねーよー! だらしねーなー!

ネコ:見た目はそのままなんだぞ、コイツら。早く戻して。怖い。

クロナ:……博士、これはあくまで提案ですが。精神だけではなく、見た目も若く出来れば素晴ら……良いかもしれません。

ネコ:えぇ……クロナ?

ヴェル:どっちにせよ、アンドロイドに幻覚が効くかは難しいでしょうねぇ。肉体に直接影響を及ぼすのも手間が凄まじいでしょうしぃ……てゆーかぁ、自分で視界にARビジョン被せとけば良いでしょうにぃ。

クロナ:はっ! なるほどその手が……! 博士、我々のことはお気になさらず。データをごゆっくりお取り下さい。

ネコ:おいっ、何言ってんだポンコツ!

クロナ:ネコさん、お静かに。いま、集中していますので。

ネコ:うげぇ……。

ハルト:ちっ、ちぐしょう……うぅっ……どうして俺ちゃまばっかぁ……こんな恥ずかしめをぉ……うぐっ、ひぐっ。

アイシャ:あーあー、ライゼが泣かせたぁー。いーけないんだぁー。アルー。

ライゼ:おいハルト! 他人のせいにするなっ! 男ならぁ、全部自分で背負うんだぁ!

ネコ:ハルト以外、通常運転感がすごい。

クロナ:あぁ……可哀想……そして、愛らしい……へへっ。

ネコ:あぁ……また1人おかしくなった……というか、おかしいのは1人だけだった。

ヴェル:えー……よしっ。お待たせしましたぁ、ひと頻(しき)り楽しめ……いえ、データが取れましたのでぇ、そろそろ元に戻しましょうか。皆さんも、お話の方も、ねぇ。

クロナ:お構いなく。

ヴェル:えぇ?

ネコ:黙れポンコツ。ヴェル、さっさと戻せ。

クロナ:ポンコツというな、ですよ、こら。

ネコ:いや、言語処理にリソースを割(さ)けなくなってるじゃないか。どんだけ集中してるんだ、そんな幻覚に。

クロナ:博士、すみませんが、あと小一時間ほど時間を下さい。それで、済ませます。

ヴェル:何を済ませると言うんですか、怖いですねぇ……。そんなに待てませんよぉ、ここの会議室の使用時間、迫ってきてるんですからぁ。

ネコ:現実的な理由すぎる……けど、諦めな、クロナ。

クロナ:そんな無理ですネコさん、これで終わりじゃ悲惨。崩れる算段、足掻かせてワンチャン。一緒に見ましょうよ楽園の景色、1度しかない一生を永遠のケージに!(※ラップ調)

ネコ:うるせえ! たまたま韻を踏んでただけで、別にラップっぽくは言ってなかっただろ!

ヴェル:はぁい。まず、クロナさんの視界を通常モードに切り替えますねぇ。ポチッと。

クロナ:ウギャアー! 壊れるぅー!

ネコ:そんなにっ!?

ヴェル:そして、薬の効果を中和する薬剤を散布しますよぉ。皆さん、ちゃんと呼吸して下さいねぇ。ポチっと。

クロナ:お、おのれ……よくも……ヴェルナヴァンドォ!

ネコ:めちゃくちゃ敵みたいになってる……初めて聞いたよ、アンタがヴェルのことそう呼ぶの。

ヴェル:怖いなぁ……クロナ君って、暴走すると人格形成プログラムが切り替わりでもするんですかねぇ……おりゃあっ。

クロナ:うわっ! あ、あぁ! 眼鏡っ! ヴェルさん、返して下さいぃ!

ヴェル:あっはっはーっ。こっちは、また別人格っぽいんですよねぇ。おっもしろーい。

ネコ:おい、ポンコツ。眼鏡を返して欲しければ、部屋の隅で大人しくしているんだな。

クロナ:うぅ、私はポンコツじゃない……もん。

ヴェル:はぁ……ちょっと休憩しましょうかぁ。皆さん元に戻るまで時間がかかるでしょうしぃ。

ハルト:うぎゃー。

アイシャ:あだぁー、ある。

ライゼ:ぼぎぃー。

ネコ:おい、バカヴェル。元に戻るどころか、幼児退行が乳児退行まで進んでるぞ。

ヴェル:バカじゃないですぅ! ったくぅ、元に戻る過程で、こうなっちゃうんですぅ。

クロナ:め、眼鏡っ! ヴェルさん、早く眼鏡を返して下さい! 見たい!

ネコ:黙ってろ!

クロナ:うわーん!

ヴェル:……クロナ君、眼鏡なくても視力調整で見えるでしょうに……この眼鏡、飾りだと思うんですけどぉ……なんか重要な機構になってるんですかねぇ。あー、分解したい。



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*愛別離苦(あいべつりく)


ライゼ:おい……おい、博士。聞いてんのかよ。

ヴェル:……んぅ? あぁ……もう一度言ってくれていいですよ。

ライゼ:聞いてねぇじゃねぇか!

ヴェル:いやぁ、すみません。聞いてた気がするんですけどぉ、マイクロスリープが発生していたかもしれないですねぇ。ずっと寝不足なので。

ライゼ:まーた、訳分かんねぇ研究してんのかよ。

ヴェル:訳分かんねぇってぇ……ライゼ君に分からないだけでしょうに。

ライゼ:分かる奴のが少ねぇだろうがよ。まぁ、いいや。もう1回言うから、ちゃんと聞いてくれよ。

ヴェル:はぁい。

ライゼ:博士に用意してもらった傭兵団を各国に派遣して、情報収集をしてたんだけどよ……ようやく網に引っかかるようになってきたぜ。

ヴェル:んー、なにがですかぁ?

ライゼ:絶対、なんか片手間に聞いてやがんな……?

ヴェル:ちゃんと聞いてますよぉ。むしろ、眠気覚ましです、これはぁ。

ライゼ:そうかよ……たくっ。んで、引っかかってきたってのはなぁ……マリシの上層部乗っ取ってやがる、いけすかねぇ連中のだよ。

ヴェル:へぇ……どんな面白い話が出てきたんですぅ?

ライゼ:教えてやりてぇけど、通信に乗せるのはリスキーだろ。博士の秘匿回線と言えど、慎重になるべきだ。

ヴェル:慎重過ぎる気もしますがぁ……そうですねぇ、リスクは避けるべきです。ふふっ、ライゼ君、傭兵団のリーダーになって、責任者の立ち回りが上手くなってきたんじゃないですぅ?

ライゼ:うるせぇな、俺は昔から慎重だよ。特に、作戦の時はな。

ヴェル:はいはい……それじゃあ、何かしら別のルートで教えてくれるんですかぁ?

ライゼ:おう、方法は伏せるけどよ。きちんと共有するぜ。

ヴェル:分かりましたぁ。……ライゼ君、あれからマリシには顔出してますか?

ライゼ:あぁ? あー……いや、連絡もしてねぇよ。

ヴェル:そうですかぁ……私がマリシから離れてしまった今、君がマリシ軍部へ戻ることはぁ……リスクでしかない。

ライゼ:あぁ、理解してる。だから、博士の秘密ラボ以外には出入りしてない。

ヴェル:……寂しいでしょうねぇ、他の皆さんは。

ライゼ:……へっ、そうかぁ? アイシャもネコも、気にするような性格じゃねぇだろうし、ハルトだってツッコミに忙しくて忘れてるだろ、俺のことなんか。

ヴェル:どうでしょうねぇ。アイシャ君もネコ君も、ついでにハルト君もぉ。ライゼ君のことを大事に思っている気がしましたけどねぇ、割と。

ライゼ:ははっ、なんだよ割とって。

ヴェル:ふふっ、そのままの意味ですよぉ。

ライゼ:そーかよ。

ヴェル:……また会えるといいですねぇ。

ライゼ:なーに、おセンチな風に言ってんだよ。……いつでも会えるだろ、俺たちは。



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*五蘊盛苦(ごうんじょうく)


アイシャ:……はぁ。調子が出ない、アル。

ハルト:……おい、ライゼが姿を見せなくなってから、アイシャがずっとあんな感じなんだが。

ネコ:そうだね。

ハルト:そうだね、じゃないだろっ。お前、ちょっと慰め……慰めるのは違うか? うーん、気を……気を紛らわせて、やってくれよ。

ネコ:なんで私が。ハルトがやりなよ。

ハルト:いや、こういうのは、同性の方が良くないか?

ネコ:え? 私って女なの?

ハルト:えぇ? 待って、難しい話になっちゃうのかなぁ……えっと、違うのか?

ネコ:いや、先天的(生まれながらの)アンドロイドに性別って、ないようなもんじゃない?

ハルト:……そう、なのか? いや、まあ、そうか?

ネコ:まあ、ケースバイケースかもしれないけど。え? ハルトはなんで私が女だと思ったの?

ハルト:ネコさん、この話は終わりだっ。一緒にアイシャが元気になるようなことを考えようっ。

ネコ:え? なんで?

アイシャ:うるっせぇアルな。2人とも、

こんなとこで何してるネ? あっ、サボりアルかー? 混ぜるヨロシ。

ハルト:うわっ、バカに見つかったっ!

アイシャ:ふんっ!

ハルト:どぅわぁっ! 壁がヘコんだっ!

アイシャ:バカバカバカバカ……ハルトからその言葉を奪うには……もう、暴力しかないアルかな?

ハルト:ははっ、話し合いっ。私たちには、話し合いという知的手段がっ、ありますよぉー!

ネコ:アイシャ、これ、器物破損で報告しておくから。

アイシャ:えっ!? ちょっ、あのっ……ネコさーん、話し合いっ。私たちには、話し合いという知的手段がっ、ありますアルよぉー!

ネコ:ごめんね、知性って差が開き過ぎると、会話が成り立たなくなるんだ。だから、アイシャとは話し合えない。

アイシャ:えー、ネコォ! 結構おバカなんアルなっ、ぷぷぷー、アルー!

ネコ:ほらね。会話できねぇコイツ。

ハルト:そうだな……てか、なんか、結構元気だった。



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*怨憎会苦(おんぞうえく)


クロナ:……博士……博士、そろそろ。

ヴェル:……んぅ? クロナ君?

クロナ:はい。そろそろ作戦行動開始時間となります。ご準備を。

ヴェル:……あぁ、もうそんな時間ですか。

クロナ:珍しく睡眠をとられていましたが……体調はよろしいのですか?

ヴェル:あっはっはーっ。毒でも盛られない限り、私が体調を崩すなんてことぉ、あり得ませんよぉ。

クロナ:そうですか……いったいどうなってるんですか、博士の体は。

ヴェル:トップシークレットですのでぇ、教えられませんねぇ。

クロナ:そうですか。残念です。

ヴェル:……かつて、このアグホント大陸には、4人の賢者がおわしました。

クロナ:突然どうしたんです?

ヴェル:ふふっ、別にどうもしないですよぉ。ただ……夢の続きを、少しね。

クロナ:夢の続き?

ヴェル:……4人の賢者は、それぞれが優れた能力を持ち、その力を平和の為に奮(ふる)った。それは長く長く……大陸が4つの国に分かれても、平和は賢者たちによって保(たも)たれた。

クロナ:……だが、それは永遠不滅ではなかった。ひとり、またひとり。賢者は、遥かな光へと消えた。

ヴェル:……覚えてましたか。

クロナ:当たり前です。いつだって参照できますよ。

ヴェル:ふふ……最後の賢者が消え、大陸には4つの国が残された。

クロナ:理(ことわり)の国。リーベル。

ヴェル:智(ちえ)の国。マリシ。

クロナ:渡(わたり)の国。バルナ。

ヴェル:砦(とりで)の国。タングリスニ。

クロナ:そして、国々は賢者が築き上げた遺産とも言える、国独自の技術や文化を用(もち)いて、積み上げられた平和の壁を、砕き始めた。

ヴェル:……抑止力だった足枷(あしかせ)が外れぇ、アグホントは静かに戦乱の時代を迎えています。有能な人材を水面下でかき集めぇ、スカスカになった国から瓦解(がかい)していくぅ……まるで遊戯盤上(ボードゲーム じょう)の戦争(ワンプレイ)、みたいじゃないですか。

クロナ:……お遊びで戦争なんてされたら、堪ったもんじゃないですよ。

ヴェル:それでもぉ、君は国の意向に従うんでしょお?

クロナ:……そうです。マスターの命令は、絶対ですから。

ヴェル:ふふ……それも立派な選択ですねぇ。

クロナ:……そうでしょうか。

ヴェル:そうですよぉ……さてぇ、行きましょうか、クロナ君。私たちの駒(コマ)を、この先に進めねば、ねぇ。

クロナ:……はい。



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*求不得苦(ぐふとくく)


???:すべては夢物語。本当に欲しい物は、触れれば泡沫(うたかた)のように消えてしまい、何ひとつ手に入ることはない。故に。諦め、削ぎ、捨て、進む。もう、手に入らない物を夢見る時間は、どこにもないのだ。

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#終わり