まばハロ×あぐ本企画【バルナ】
『サウィン・ナイトフィーバー』
作:ライカ × かぬれ × 冲田 × 野菜
(2:4:1) ⏱60分
**ネコのアグホント記録**
??日目
今日はバルナ中心の市場へ、義体パーツ部品の買い出しと情報収集に。
マリシじゃないと義体パーツは揃えられないと思っていたが、流石アグホント1の交易都市、大陸外製の珍しいパーツが時々紛れていてなかなか良い。掘り出し物も手に入ったし、良い店を見つけた。
その中で得た情報だが、明日はバルナ中央の大広場で何やら祭りが行われるらしい。
「サウィン」と呼ばれる収穫祭だそうで、この日は先祖や死者が現世に戻ってきて共に収穫を喜ぶのだそうだ。あの世だとか、死者の魂だとかいう概念はまだいまいち理解できない。生者は、なぜ死の先を夢想するのか…。
…とにかく、明日は祭りの屋台が並んで、イベントステージではアイドルのライブまであるらしい。なかなか大きい規模のイベントのようだ。
さらにこの祭り、ドレスコードなるものがあるらしく、当日はゴーストや妖精などの"人ならざるもの"に扮した姿をしなければならないらしい。死者が戻ってきやすいように、という理由らしいが、別に向こうに合わせなくても良くないか…?
まぁ私にとってはいつもより潜みやすい状況になって助かる。せっかくなので、参加してみることとしよう。
イベント時のバルナはエネルギー消耗が激しいし、今日は早めにスリープに入るか…。
ーースリープモードに移行しましたーー
**バルナ中央大広場「サウィン」会場入口にて**
ノア「わ…おばけがたくさん…!」
コーデリア「ふふ、ノアさん、おめめがキラキラしてますよ。お可愛いこと」
ノア「ん……だって僕、こんなの初めて見たもん。白い布かぶった人とか、ゾンビとか…みんなおばけの真似なんだよね?」
コーデリア「そうですよ。私たちも白い布をかぶってきましたしね。今日は今年の収穫を祝い、“死者も生者も共に笑う日”なんです」
ノア「“死んだ人と笑う”って不思議。本当に死んだ人が帰ってくるはずないのに」
コーデリア「む、ノアさん、冷たいことを言いますね…」
ノア「あ、ごめん、そんなつもりじゃ…」
コーデリア「ふふ、わかってますよ。サウィンの夜は、死んだ人たちが帰ってくる夜。死者が現世に帰ってきやすいように、生者は死者にあわせた恰好をします。ご先祖様への感謝を伝えるためとか大層な理由もありますが、何より人はみな、死んでしまった誰かに会いたいと思ってしまうのです。きっとこのお祭りは、その願いも込められたもの。もう二度と会えない存在だからこそ、今日はみんな“もう一度会いたい人”を想って、おめかしするのですよ」
ノア「そっか、それはとても大事なお祭りだね。……コーデリアは、誰か会いたい人はいる?」
コーデリア「うーん、そうですね……。しいて言うならおじいさま、ですかね。元気にやってますよ!って見せつけてあげたいです!」
ノア「…それはいいね。僕はまだ会いたい人がいないから、コーデリアのおじいさん探してあげる」
コーデリア「うふふ、ありがとうございます。でも、まずは祭りを楽しみましょう!どの屋台からーーーー」
*屋台の宣伝ビラを配り歩く輩が通りすがる
モーヴァ1「よってらっしゃい、みてらっしゃい!世にも珍しい、甘くてふわふわ、しっかり掴んでなきゃ飛んでっちまう『くもあめ』、売ってるよ~!」
モーヴァ2「食べても腹は壊さねぇが、食べすぎ注意!腐れば腐るほど甘くて美味しい『ゾンビバナナ』もあるよ~!」
モーヴァ3「その他美味しいスイーツわんさか会場中央ゾーンにて販売中!気になる方はおいでませ~!」
ノア「えっ、くもあめ…?ぞんびばなな…?!何それ気になる…!」
コーデリア「あっ、ノアさん待って!人が多いから走るとはぐれちゃう…!」
*時すでに遅し
コーデリア「……あぁ、行ってしまいました…」
コーデリア「まったく…おじいさま探しはどこへやらじゃないですか…。ま、ゆっくり探しましょうか」
**バルナ中央大広場「サウィン」会場の片隅にて**
ノア「くもあめ探しに行ったらコーデリアとはぐれたし迷った…。ここどこだろう。人少ないから、ちょっと端っこの方なのかな」
*屋台の裏、少し薄暗い空間に1本の大きなガジュマルの木が立っている。その太い枝にブランコが一つ括りつけられている。
ノア「わ、屋台の裏にこんな大きな木…それにブランコがついてる。…少しここで休憩しよう」
*ブランコに乗り、軽く揺れてみるノア。その頭上には、隠れていたマロン。
ノア「ふふ、ブランコ、久しぶりに乗ると楽しい…」
マロン「……っ!ちょちょちょ、揺れる揺れる!すとっぷ君!!」
ノア「え」
マロン「やば、わっ、ひゃあっ!(落下)…っつ~~~~~ぴよぴよ~~~;;;;」
(目が×になって頭の上でひよこがぴよぴよくるくるしている)
ノア「ごめん、誰かいると思わなくて…大丈夫?」
マロン「ううう…」
ノア「頭のひよこがぴよぴよしてる…かわいい」
マロン「……えっ。」
ノア「ひよこ、好き。ふわふわしてるし、黄色い」
マロン「す、すき……!?ちょちょっと待って!不意打ちはよくないて!照れるて!」
ノア「?事実を言っただけだけど」
マロン「うっ……なんだなんだ天然たらしってやつか…!?あ、あのね、これはその、アクセサリーなの!今日のドレスコード用の!」
ノア「それは、どんなセンス…?」
マロン「ぐっ……やめて、泣くよ」
ノア「ごめん」
マロン「…いや、私こそ…まず変なとこにいてごめんなさい…びっくりさせちゃったよね…。えっと、あなたも祭りに来たの?」
ノア「うん。屋台を見てたら、迷った」
マロン「わぁ迷子仲間かぁ。……実は私も、ちょっと逃げてきたら迷っちゃって」
ノア「逃げてきた?」
マロン「うん。私、今日ステージで歌う予定なの。アイドルなんだ。一応ね」
ノア「アイドル…」
マロン「そ。まだ駆け出しだけど、今日のステージは大きくてさ……。初めてこんな大きいステージに立つから、ちょっと怖くなっちゃって」
ノア「…」
マロン「ちょっと外の空気吸いに行こ~って思ったら、広すぎて迷っちゃった。てへへ」
ノア「……怖いっていうのは、いいことだと思う」
マロン「え?」
ノア「怖いって思えるのは、ちゃんと頑張ってる証拠。適当にやってる人は、緊張しない」
マロン「…確かに」
ノア「でも、逃げたままだと、もっとこわくなる」
マロン「う……そうかも」
ノア「怖いのもひっくるめて、楽しむ気持ちがないと、誰も楽しませられないよ」
マロン「……っ、う、うぅ。それは……刺さる」
ノア「うん。だから、ちょっと遊んでから行こう」
マロン「えっ?」
ノア「お祭り、楽しむ。そうしたら、たぶん平気」
マロン「……君、けっこうモテるでしょ?」
ノア「??もてる…?モデルはしてないよ…?」
マロン「……ふふっ。ごめんなんでもない。そうだね、屋台行こ!まずは私が祭りを楽しまなきゃ!」
ノア「うん」
マロン「ねぇ、君、名前は?」
ノア「僕はノア」
マロン「ノア、か。私はマロン。よろしくね!」
ノア「マロン…すごく美味しそうな名前だね」
マロン「なんて?」
**バルナ中央大広場「サウィン」会場イベントステージ前にて**
イタロ「……ったく、マロンのやつ……どこ行ったんだ……!」
イタロ「初めての大舞台で緊張するのはわかるけどな……せめてSPの俺を連れてどっか行ってくれよ…はぁ…」
イタロ「本番まであと二時間。……俺が怒られるんだぞ、まったく」
*きょろきょろしていたせいで人とぶつかるイタロ
コーデリア「きゃっ!」
イタロ「おっと、すまない!よそ見をしていて…怪我はないか?」
コーデリア「だ、大丈夫です。こちらこそ前を見ていなくて……」
イタロ「いや、こっちの不注意だ。……あれ、もしかして、探し物中か?」
コーデリア「えっ、なんでわかったんです?」
イタロ「顔に書いてある。“心配だ”って」
コーデリア「(苦笑)すごい、図星です。……実は同行していた方とはぐれてしまって。一人でも大丈夫な子ではあるんですが、流石にはぐれてだいぶ経つので心配になってきて…」
イタロ「俺も似たようなもんだ。護衛対象がいなくなっちまって、焦り散らかしてる…」
コーデリア「え、それは大変ですね…!」
イタロ「あと2時間以内に見つけなきゃで、胃も痛くなってきたとこなんだ…はぁ…」
コーデリア「なんとまぁ…」
*少し考えるコーデリア
コーデリア「あの…もしよければ、お手伝いしましょうか…?」
イタロ「え、何言ってんだ。あんただって探すやつがいるんだろ」
コーデリア「こんな大きな会場を探す人手は一人でも多い方がいいでしょう。一人よりマシです」
イタロ「まぁ、それはそうだが…」
コーデリア「それに、探す方も一人じゃ心細いですから」
イタロ「…確かにな。わかった、一緒に探そう」
コーデリア「よかった、助かります」
イタロ「あんたは誰を探してんだ?」
コーデリア「ノアという子です。白髪色白とただでさえ全体的に色素が薄めな子なんですが、今日は白いローブを着ているのでより見つけにくくなってます…。あなたは?」
イタロ「こっちはマロンって女の子だ。金髪ショートでちっこい。今日は小悪魔ファッション?ってやつで黒い羽としっぽが生えてる。あ、あと頭にひよこが乗ってるから一応見つけやすいはずだ」
コーデリア「頭にひよこ…??」
イタロ「深く考えるな。俺もよくわからん」
コーデリア「なるほど…まぁとにかく探しますか。あ、申し遅れました、私、コーデリアと申します。どうぞよろしくお願いします」
イタロ「おう、俺はイタロだ。よろしく。んじゃ早速、あそこの屋台通りから行くぞ」
コーデリア「はい!」
**バルナ中央大広場「サウィン」会場中央、とある屋台の一角にて**
ノア「さっきの人面魚すくい、面白かったね」
マロン「ね!網から逃げる顔の必死さが凄かった…!あまりの迫力に怖くなっちゃって全然捕まえられなかったけど…」
ノア「僕の捕まえたやつ、いる?」
*悲壮感漂う顔の人面魚と目が合うマロン
マロン「いや、だいじょぶ…」
マロン「にしても、まだお祭り序盤なのに完売してる屋台があるなんてすごいね」
ノア「うん。でも、食べたかったな…」
*少し先に『くもあめ』の屋台看板を発見するマロン
マロン「あ、あれ!ノアが言ってた『くもあめ』の屋台じゃない?」
ノア「え、ほんとだ『くもあめ』…!やっとみつけた…」
*地鳴りのような「ドン!」という音。続けて群衆のどよめき
ノア「……けど、なんか…騒がしい…?」
マロン「なんか揉めてる…?」
*
モーヴァ「……貴様が屋台荒らしか」
モナカ「…私は甘いものを食べに来ただけなんだけど」
モーヴァ「後ろを見てみろ、ことごとくお前に食い尽くされて泣く泣く店じまいを始めた屋台でいっぱいじゃねぇか」
モナカ「…だって。美味しいのが悪い」
モーヴァ「そんなに甘いものが御所望なら、お前の腹がはちきれるまで俺が相手してやる。かかってきやがれい!」
モナカ「…?どれ?」
モーヴァ「は…?どれ?」
モナカ「かかってこいって言った」
モーヴァ「言ったな」
モナカ「どれ、食べたらいい?」
モーヴァ「どれって…そりゃぁ……ッ!?!?」
モナカ「私の勝ち…?」
モーヴァ「あれだけ用意した『くもあめ』を一瞬で!?」
モナカ「おぢさん、大したことないね」
モーヴァ「おぢ…!?」
モナカ「もう、行くね。…ここも私を満足させてくれなか---」
モーヴァ「逃げるのか?」
モナカ「何を言ってるの?だってもう食べるものなんて……ッ!?!?」
モーヴァ「そこらの屋台と同じだと思ってもらっては、困るな」
モーヴァ1「困るな」
モーヴァ2「困るな」
モーヴァ3「困るな」
ノア「…さっきまで倒れてた屋台の人達が急に…?」
マロン「ど、どういうことなの、あれ」
モナカ「…なるほど、、雰囲気、似てると思ってた。この量を一瞬で用意したのも納得」
モーヴァ4「まだいるぞ?」
モーヴァ5「ウチのことも忘れてないよね?」
モーヴァ6「最近の若いやつはこれだから…」
ノア「えぇ…あっちからもこっちからも…」
マロン「集まってきてる…!?」
モナカ「…数があればいいってもんじゃない。不味かったら食べない」
モーヴァ「ハッハッハ、あれだけ食っておいてよく言うぜ、お前が潰した屋台達はなぁ、全部俺の屋台だ!!」
モナカ「…え」
モーヴァ「今更ビビっても遅いぜ?」
モナカ「…いや、じゃあ私の勝ちじゃん?」
モーヴァ「…いや、それは違うだろ」
モナカ「だって、もう私に潰された」
モーヴァ「ぅぐ、、、だからなんだ?目の前に今、残ってるだろ?」
モナカ「それもそうか」
モーヴァ「納得したか、さぁ、かかってこ----」
モナカ「ごちそうさま」
モーヴァ「い……は?」
モナカ「…次は?」
ノア「え…あ、あれ…?」
マロン「な、何が起こったの?」
モーヴァ「…おい、ありたっけの『ゾンビバナナ』用意してたよな?」
モーヴァ1「してやしたね」
モーヴァ「トッピングの『ほしぼしふりかけ』も『アマミツソース』もバケツで用意してたよな?」
モーヴァ2「もちのろんですぜ」
モーヴァ「無くなってるんですけどぉ!?山盛りのバナナもバケツの中身もきれいさっぱり無くなってるんですけどぅぉおお!?!?」
モナカ「もう、終わり?」
モーヴァ「……や、やるじゃねぇか…だが次はそう簡単には行かねぇぜ?」
モーヴァ3「行かねぇぜがんす」
モーヴァ「おい、あれ、持ってこい」
モーヴァ4「いいのか?あれは…」
モーヴァ「問題ねぇ、持ってこい」
モーヴァ5「ああ、あの子かわいそう〜」
イタロ「なんだなんだ…騒がしいと思って来てみれば」
コーデリア「何かのチャレンジ企画でしょうか」
モナカ「…で?これだけ?」
モーヴァ「ああ。特性焼きマシュマロだ」
ノア「焼きマシュマロ!?美味しそう」
マロン「でも私の知ってるのと少し違うよな…」
イタロ「ん…?あれは」
コーデリア「あ…」
モナカ「焼きマシュマロなんて、知れてる」
モーヴァ「ほぉ。(さっさと食え、そして…)」
モナカ「こんなの一瞬」
モーヴァ「そうか、そうか(さぁ、はやく…)」
モナカ「あー…」
モーヴァ「…(まだだ、まだ笑うな)」
モナカ「ーん。」
モーヴァ「(食った…!!)」
モナカ「あむ、あむ、はむ、はむ……!?!?」
モーヴァ「くっくっく…はーはっはっは」
モナカ「ま、まうぃうぉれ…!?」(な、なにこれ)
モーヴァ「それはな、、、焼きマシュマロなんかじゃあ、無い!!」
モナカ「!?」
モーヴァ「この時期になると種をつける植物『ワガママガマ』だ。そしてそれは、その種袋さ」
モナカ「むー、むー」
モーヴァ「パンパンに入った種袋を割ると、一気に綿毛が広がるんだよなぁ、しかも今回は『アカガマ』も一緒だ。さぞ口の中は大変なことになってるだろ?」
ノア「ひどい、騙したんだ。助けてあげなきゃ」
マロン「え、あ、ちょっとノア、待って」
イタロ「『アカガマ』だと!?そんなもん口に入れたら、くそっ」
コーデリア「あ、でもっ」
モナカ「むー、むー、もぐもぐ」
モーヴァ「ほら、口から溢れだして…」
モナカ「もぐもぐ…ごくん」
モーヴァ「無いな」
モナカ「…ふーん、これ悪くないね。甘みと程よい刺激。うん、悪くない」
モーヴァ「…」
モナカ「…?」
モーヴァ「なんでだよ!!!」
モナカ「…?」
モーヴァ「首コテンやめろ!!可愛さより恐怖が勝つわ!!」
モナカ「なんか…思ったよりうるさい人」
モーヴァ「誰のせいだよ!!!」
モナカ「おかわりは?」
モーヴァ「くっ…いいじゃねぇの。だったらこっちも本気を出してやろうじゃねぇか。おめぇら全力で行くぞ!!」
モーヴァズ「「「おおおお!!」」」
モナカ「相手にとって不足無し…!」
ノア「だ、大丈夫そう、だったね…」
マロン「う、うん。なんかすごいね」
ノア「『くもあめ』…残るかな…。」
マロン「残るといいね。」
イタロ「はぁ、はぁ、ちっ…焦って損した」
コーデリア「あの子、何者なのでしょうか」
モーヴァ1「へい!『ジャイアントジャックロワッサン』おまちぃ!」
モナカ「ごちそうさま」
イタロ「あれは…あー…まぁ、そういうやつだろう」
コーデリア「そうなんですか、ってそれよりも」
イタロ「ん?」
コーデリア「たしか…」
モーヴァ2「ほら『倍ヴァンヴァンパイ』ですぜ!」
モナカ「パイもいい」
ノア「クロワッサンもおいしそうだったけど、パイも気になる!!マロンは?」
マロン「わ、私も気になるけど…もう無いね」
ノア「わーほんとだ!」
マロン「次は何か----」
イタロ「おい」
マロン「きゃっ」
ノア「あ、ちょ、おっさん何してーーー」
コーデリア「だめですよ、ノアさん」
ノア「あ、コーデリア!」
モーヴァ3「『フォーチュンフォウチュウ』の詰め合わせでがんすよ!」
モナカ「歯に引っかかるのが、いいよねこれ」
モーヴァ「これでも、止まらねぇか。だが…まだまだいくぜぇ!!」
モナカ「望むところ…!」
ノア「わっ、すごい…!」
マロン「2人の熱気?パワー?」
モーヴァ「うおおおおおおお!!!」
モナカ「あーむあむあむあむあむ」
イタロ「ああ、熱い戦いか…いや、これ」
コーデリア「は、激しすぎます。ただ作って食べてるだけなのに、こんなにバチバチしますか!?」
モーヴァ「まだまだぁああああ」
モナカ「もぐもぐもぐもぐもぐもぐ」
ノア「こ、これって…」
マロン「え、え、だ、大丈夫なの?」
イタロ「大丈夫じゃねぇ、磁場が揺らいで…!」
コーデリア「か、体が浮いちゃってますよ!?」
モーヴァ4「大変ですぜ!」
モーヴァ「大変なのはわかってる!急いで作れ!」
モーヴァ5「違う違うそうじゃない〜」
モーヴァ「…ん?なっ!?」
モナカ「…手が止まってる、早く作れ」
ノア「これって、サウィンの演出なのかな!わー吸い込まれるー!」
マロン「ぜ、絶対に違うよー!きゃーー!」
イタロ「くそ、空間が裂けて…!だめだ間に合わな---」
コーデリア「ノアさん…!」
モナカ「おい、早く次出せ」
モーヴァ「それどころじゃねぇだろあぉおああああああああ」
モーヴァズ「「「わぁああああ」」」
全員「うわぁあああああぁぁぁぁ-----」
コーデリア「……んん……。……ん? あれ? えーと、何が……」
ノア「あ、よかった、目覚めたんだね!」
コーデリア「ノア! そういえば探してたんですよ!
はぐれたら心配するじゃないですか!」
イタロ 「ああ? 何が起こったってんだ?」
マロン 「わあ、よかった! イタロも起きてくれたよ!」
イタロ 「あああ! おまっ、マロン!
本番前にどこフラフラほっつき歩いてやがったんだ!
どさくさでしれっと見つかったからよかったものの!」
マロン 「ふぇぇ、ごめんなさいぃぃ。緊張しちゃって落ち着かなかったの……」
イタロ 「あのなぁ! 理由が何あれ、駆け出しだろうがなんだろうが、
プロなら周りに迷惑かけねぇとか、心配させねぇとか……」
コーデリア 「まあまあ、こうやってノアさんもマロンさんも見つかったことですし」
ノア 「そうだよ! それに、ライブどころじゃなくない?」
イタロ 「……そうだ。確かにそれどころじゃない。
ここ、どこだ? どうなってんだ?」
モーヴァ 「よくわからないけど……
どうやら、俺が屋台荒らしと戦っている最中(さなか)、
なぜか現れた次元の裂け目に吸い込まれたらしい」
マロン 「あ、さっき、めっちゃ屋台頑張ってた人!」
モナカ 「私のお菓子、どこいった?」
ノア 「あ、さっき、めっちゃ食べてた人!」
祖父 「ハッピー!! ハロウィィィィィーン!!」
<全員、ポカンとして無言>
祖父 「は、ハッピー! ハロウィーン?」
マロン 「だ、誰?」
コーデリア 「まさか……おじい様!?」
ノア 「え? でも、コーデリアのおじいちゃん、亡くなってるはずじゃ」
祖父 「ははは。その通り。わしはもうとっくに死んでおる。
久しぶりだな。コーデリア」
コーデリア 「あの、おじい様に会えることはとっても嬉しいですけれど、
私は夢でも見ているのかしら? それともこれは、サウィンの奇跡?」
祖父 「まあ、細かいところは置いといて」
イタロ 「その通りかもしれないぜ。
サウィンでは現世と霊界の境目が曖昧になるという。
夢か現(うつつ)か、あの次元の裂け目?とやらで世界が繋がって、
俺たちは霊界に飛ばされたってわけだ」
祖父 「これからお前たちにやってもらいたいのは……」
マロン 「ええ! やっぱりそんな感じなの?
どうしよー! ライブが迫ってるのに!」
祖父 「あの、ちょっと」
モナカ 「お菓子、もっと食べたかった」
祖父 「話を聞けーい!!」
<間>
祖父 「あらためて、説明しよう。
ここはこの世とあの世が混じり合う曖昧な場所。
天国でもなく地獄でもなく、輪廻(りんね)の輪の中でもない。
そして、あらゆる世界も混じり合う。
ここはわしがいた世界──お前たちの住む世界でもあるアグホント出身の霊魂も、
お前たちが知らない世界の霊魂も、様々存在することができる」
モーヴァ 「んん? 霊魂の世界だというのならば、俺たちアンドロイドはどうしてここにいられるんだ?
いや、俺は元がアレだから、ありうるのか……。
でも、生粋のアンドロイドは……?」
祖父 「裂け目からやってきたお前たちは、実体だからだ。
曖昧な空間ゆえに、それが許されておる」
コーデリア 「それで、私たちはここから帰ることができるんでしょうか、おじい様?」
祖父 「ああ、帰れる。
しかし、ここで開催されている祭りに参加して、無事クリアできれば、だがな」
マロン 「クリアできなかったら……?」
祖父 「この曖昧な世界に、永遠に閉じ込められることになるかもしれないなぁ?」
イタロ 「それは困るな」
祖父 「ただの祭りじゃ。難しいことはない。ここにいる者たちは楽しめればいいのだ」
モナカ 「じゃ、さっさとルールを教えて」
祖父 「よかろう。今年の祭りはある世界のハロウィンとやらを参考にした。
祭りの会場中にいる霊魂たちに
『トリック・オア・トリート! お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ⭐︎』
と話しかける」
モーヴァ 「トリックオアトリート?」
祖父 「そう話しかけると、お菓子がもらえる。
そのお菓子を一番たくさん集めたやつが優勝、0個になったら脱落だ。単純だろう?」
モナカ 「お菓子もらえなかったら、イタズラ?」
祖父 「ああ、イタズラしていいぞ。
つまり、トリックオアトリートと自分が話かけられた時、お菓子を渡すことを拒否すれば、イタズラされるということだ」
マロン 「イタズラされたくなかったら、お菓子をあげないといけないってことねー」
ノア 「でもそれって、トリックオアトリートを先に言った方が圧倒的に有利じゃない?」
祖父 「まあ、そこらへんも、ジャンケンで決めるなり、交互でやるなり、当人同士の駆け引きだな。
さて、全員に初めのお菓子を配るぞ」
イタロ 「んー……大体わかったが。
これのクリアってお菓子を一番たくさん集めたやつなんだろ?
一人しか帰れねぇじゃねぇか」
コーデリア 「そこは上位200名くらいをクリアにしてもらいたいところですねぇ」
モーヴァ 「さすがに甘すぎないか?」
モナカ 「お菓子だけに」
祖父 「いや、優勝者は願いを叶えてもらえるのだ。全員の帰還を願えば良い」
ノア 「ふぅん……なるほど……」
祖父 「霊界の奴らも待ちくたびれているからそろそろ始めるぞ!
トリックオアトリートゲーム! はじめ!」
モーヴァ 「よぉし、さっきの恨みを晴らすぞ! おい、モナカ! トリックオアトリート!」
モナカ 「あ。ついうっかり、自分のお菓子食べちゃった」
モーヴァ 「は? 全部か?」
モナカ 「いや、まだ残ってる」
モーヴァ 「いきなり脱落かと思ったわ! ほら、どっちにするんだ?」
モナカ 「お菓子あげたくない」
モーヴァ 「じゃあ、イタズラな。うーん……。30秒間行動禁止! とかどうだ」
モナカ 「え、本当に動けない」
モーヴァ 「へぇ。なんか不思議な力でも働いてんのかもしれないな。
じゃ、今のうちに俺は他んとこいくぜ!」
コーデリア 「それではノアさん。トリックオアトリー……ト?」
ノア 「イタズラは嫌だけど……! お菓子をあげるなんて僕には無理だ!」
コーデリア 「それではイタズラですね。
では、イケボで『トリックオアトリート』って、言ってください」
ノア 「イケボぉ? うーん、よくわかんないけど……
『トリックオアトリート。お菓子をくれないと、イタズラしちゃうよ?』
──って、こんな感じ?」
コーデリア 「はい、お菓子、あげちゃいます!」
ノア 「え? え⁉︎」
マロン 「えへへ。じゃあイタロにー。トリックオアトリート!
お菓子くれなきゃ、イタズラしちゃうぞ⭐︎」
イタロ 「ぐはっ! 可愛い! これがアイドルの破壊力か……」
マロン 「お菓子……ちょうだい?」
イタロ 「おうおう、やるとも! 持ってけドロボー!」
マロン 「けど……よく考えたら、こうやって身内同士でお菓子のやり取りしてても意味ないよね?」
コーデリア 「そうですね。とにかくたくさんの方たち……霊の方たち? に、お菓子をもらわなくては!」
イタロ 「序盤はそうだな。最終的には、一番をかけて戦わないといけねぇ可能性もあるんだが……」
ノア 「みんなの願いが一緒なら、僕らの誰が勝ってもいいんだから、きっと大丈夫だよ!」
祖父 「ふふ。全員の願いが、一緒だといいですね」
コーデリア 「なんだかおじいさま……。こんな感じの方だったかしら?」
ノア 「ハロウィンのお祭りで浮かれちゃってる、とか?」
マロン 「あれから……長い時間が経った……」
コーデリア 「霊魂さんたちからお菓子をもらって」
モナカ 「それを私がおいしく食べて」
モーヴァ 「モナカを叱って、お菓子をまた霊魂たちからゲットして」
ノア 「ついついおいしそうでつまみぐいしちゃって」
イタロ 「どおりで減るのが早いわけだよ!ノアも食べてたのか!」
ノア 「ごごごごめんなさい!だって、あまりにも長い時間何も食べずにトリックオアトリートしてるから…」
コーデリア 「しょうがないですよ。……それにしても、いつになったら終わるのかしら?おじいさま、いつになったら終わるのかはおっしゃってなかったわ」
モーヴァ 「霊魂たちからお菓子を得る合間にも、他の霊魂に先手を越されて、奪われたりしているからな。正直、ほとんどプラマイゼロだぜ」
ノア 「僕もだよ。永遠にお菓子をもらって、渡して、もらって、渡して……終わらないよ!!」
イタロ 「何か、裏道や抜け道でも見つけねえとどうにもならねえな」
マロン 「もうお菓子というお菓子を全部食べちゃって、みんなで仲良く脱落&全員優勝にしちゃうとか?」
モーヴァ 「不可能じゃあなさそうだが…」
モナカ 「なあに……?はっ、このお菓子は、あげない」
コーデリア 「おそらく、モナカさんをもってしても難しいかと思います。何人か脱落させてみましたが、どんどん、新しく参加している霊魂が増えていますわ。」
ノア 「食べ尽くす以外の方法かあ……うーん……」
コーデリア 「あともう一点、皆様にお伝えしたいことが」
イタロ 「あーーー。……もしかしなくても、あの……」
祖父 「おほほ、これで永遠に楽しめますわーーー!!!」
イタロ 「途中からオネエ口調を隠さなくなった爺さんか?」
コーデリア 「誤解です!ゴ・カ・イ!なんです!生前は決してあのような口調ではなくてですね!」
モーヴァ 「だーー!もう!手持ちの菓子は減っていき、ゾンビのように無限に霊魂は現れ!肝心の祭りの主催は正気を失っているときた!」
ノア 「あーあ。どうせゾンビなら、ゾンビバナナが増えればよかったのに。霊魂じゃなくてさ」
イタロ 「ん……?」
マロン 「そーだよね!もうみーんなお菓子になっちゃえばいいのに!」
イタロ 「それだ」
モナカ 「お菓子、食べたいの?」
コーデリア 「ふふ、ちがいますよ、モナカさん。イタロさん、私分かりましたよ。……トリック、ですね?」
イタロ 「おう。」
モーヴァ 「ふむ。……二人、いや、三人ずつで動けば効率よくできるな」
モナカ 「……なるほど?それならもちろん、おぢさんはサイキョウ戦力。そりゃもう、サイキョウ」
ノア 「なんか、大人ってすごいんだね、マロン」
マロン 「うん、すごいね。すごい悪い顔してる」
コーデリア 「霊魂さん、トリックオアトリート!……お菓子をありがとう。脱落だけど、貴方はむしろ助かったのよ。あれをご覧になって」
モーヴァ3 「トリックオアトリート!」
モーヴァ5 「トリックオアトリート!」
モーヴァ4 「トリックオアトリート!」
モーヴァ 「おっとお前たち、俺にお菓子を渡してどうするんだ?話しかけた俺は、別の俺だぜ?」
モーヴァ5 「そぉれ☆イタズラよ!」
モーヴァ2 「その内容はなんと」
モーヴァ4 「お菓子になっちゃえ!!」
イタロ 「提案しといてなんだが、おっそろしい世界だな、ここ。」
モナカ 「ももご……ももご……(おかし……おかし……)」
イタロ 「悪いが、もうちょっと我慢してくれ」
コーデリア 「イタロさん、お願いします。」
イタロ 「ああ。トリックオアトリート」
コーデリア 「ではこちらのお菓子の山をどうぞ」
モーヴァ 「イタロ、おら持ってけ」
イタロ 「トリックオアトリート。」
モーヴァ 「ほらよ。はは、お菓子の大富豪だな?」
モナカ 「ぷはっ。お菓子、敵の亡骸でできてるから、もはや英雄」
イタロ 「考えないようにしてんだからヤメロ」
祖父 「あなたたち、よくも……」
ノア 「来るの遅いよっ!」
マロン 「今まで何してたの!イベント主催ならもっと早く止めに来るべきっ!」
祖父 「ええ……いや、これは何なのよ!どうして私の呼び寄せた悪霊たちが片っ端からお菓子に変えられているの!?そしてこのお菓子の山はなにごと!?」
マロン 「あなたが今言ったとおりよ!可愛そうなおばけさんの成れの果て!」
祖父 「いったいどうやって」
マロン 「大人たち直伝!ハロウィンゲーム必勝法!」
ノア 「①二人か三人で行動して、トリックオアトリートします。一人目が先手を
取れなくても、話し終わってすぐに話しかければ次の人が先手のトリック
オアトリートができます」
マロン 「②お菓子を差し出さなければ、トリート「お菓子になっちゃえ」のひとこ
とで、不思議な力でお菓子が手に入ります。」
ノア 「③持てなくなってきたら代表の一人に押し付けます。」
マロン 「ちなみに代表は、大人たちの漢気じゃんけんの結果、イタロさんです」
ノア 「④これを!主催が咎めに来るまで続けます!!」
マロン 「交代で休憩してるけど、ものすごく長かったんだから!私たち怒ってる
よ!」
祖父 「いや、ここに時間の流れとかないし……」
ノア 「それよりさ。あんた、コーデリアのおじいちゃんじゃないでしょ」
祖父 「ふっ、やっとこのジジイが気を緩めて、支配の呪いをかけることができたのよ。このジジイの魂も力も、今や私のもの!操り放題よ。貴方達には永遠に私たち悪霊の遊び相手をしてもらうんだから」
マロン 「そんな……」
ノア 「そのおじいちゃんは、コーデリアさんが会いたがっていた大事な人なんだ。お願い、もうこんなことやめて」
祖父 「聞くわけないじゃない、そんなお願いなんて。だって私は」
モーヴァ2 「断るなんていい度胸だぜ!大人しく聞いていりゃあ穏便に終わったのによ!」
イタロ 「中れ!俺の弓矢!……なっ!?」
モナカ 「ん?どうして、私の魔法、効かない?」
祖父 「無駄よ」
モーヴァ 「無傷だと?当たってはいたはずだぞ」
祖父 「このジジイの力と私の呪いによって、もはや私は最強。内側から攻撃でも受けない限り、無敵なんだから」
コーデリア 「内側から……」
マロン 「口側から……?」
イタロ 「モーヴァ、アレ……まだ、在庫あるか?」
モーヴァ 「あるが、その、……いいのか、コーデリア。一応お前の身内だよな?」
コーデリア 「今更ですか?……この際、仕方ありません。おじいさまを助けると思って
どうか、お願いします。」
祖父 「何をごちゃごちゃと。貴方達が何をしたところでっ!?」
モーヴァ3 「捕まえたぜ」
モーヴァ5 「無傷とはいえ当たるなら触れるのよ!」
モーヴァ4 「今だ!」
マロン 「はい、おじいさま?あーん……」
ノア 「コーデリア、僕の方見て、目を閉じて。耳は僕が塞いでいてあげる」
祖父 「もがほっ!まうぃうぉれ…ぐぶっ!?」
コーデリア 「……ノアさん?私いつまでこうしていればいいんですか?何があったんですか?」
モナカ 「オーウ。見せられないよ?」
モーヴァ 「一瞬ではじけ飛んでよかったな。その、長引かなくて。」
モナカ 「おいしいのに……焼きマシュマロ風ガマガマ。ワガママガマの甘みと、アカガマの程よい刺激」
イタロ 「恐怖が勝つわ」
祖父 「はっ!わしは、今、何を」
マロン 「おじいさま!大丈夫?一度、霧散してたけど」
祖父 「なるほど、おまえさんたちに助けられたようだな。それに、どうやらこの
様子では祭りも続けられまい」
イタロ 「帰れるのか!」
祖父 「なにより、もうわしがヘロヘロじゃ。この空間の維持すら難しい」
マロン 「え」
ノア 「えっ」
コーデリア 「ええ?」
モナカ 「……すっごい揺れてる。地面、あの辺なんてもう、割れてきた」
イタロ 「こんなのありえないだろ!?空間が避けて……ん?なんか、デジャヴ」
祖父 「お菓子の山はおみやげじゃ。戻っても、達者でな」
モーヴァ 「それどころじゃねぇだろぉおああああああああ」
モーヴァズ 「「「わぁああああ」」」
コーデリア 「おじいさま!こんな形ではありましたが……お会いできて嬉しかったで
す、私は!私は、元気に……あっ」
全員 「うわぁあああああぁぁぁぁ-----」
祖父 「愛しいコーデリア、わしだって、おまえさんに会いたかったんじゃよ」
イタロ 「いやあ、しっかし、結局はプロだよなあマロンも。あんなことがあったのに、そんなこと感じもさせずキラッキラに歌って踊ってるんだから」
マロン 「初めての大きなステージ。失敗なんてできない。みんなを、楽しませてあげられるかな。私、ちゃんと笑えるかな。そんな風に、怖くて、不安で。
でも今、私の前にいるのは……いつもの、お客さんとはちょっとちがう。黒い羽根をつけたお姉さん、シーツをかぶってゆらゆら踊ってるちっちゃい子、面白い緑のメイクのお兄さんに、包帯が衣装か本物かわからないおじいさん。お菓子にしちゃった、あの世界のおばけさんに似てる子もいる。霊界でお菓子にされちゃったおばけさんの、きょとんとした顔を思い出して、口の端がつい上がってしまって。
ここに来てくれてるのはみんな、お菓子やイタズラの好きな、愉快なおばけなのかも」
ノア 「“死んだ人と笑う日”なんだってさ、サウィンって」
マロン 「舞台に上がる前にノアに教えてもらった、サウィンの夜のお話。ねえ、ノア。私もお客さんも、みんな、楽しく笑ってるよ」
イタロ 「それで?なんでモーヴァはそんな顔してるんだ?」
モーヴァ 「あー……儲かったよ?儲かったのさ。あの屋台荒らし、荒らしこそしたものの金はちゃーんと払ったからな。完売御礼っちゃあ、まあ、うん、そうなのよ?」
イタロ 「笑えば、いいと思うが?」
モーヴァ 「なんだかなあ」
モナカ 「おぢさん、へこむことない」
モーヴァ 「へこんではいねえよ」
モナカ 「おぢさん、前言撤回する」
モーヴァ 「あぁん?」
モナカ 「おぢさん、とっても、たいしたことあるおぢさん。おいしい、何よりもたくさん作ってくれた。ありがとうおぢさん」
モーヴァ 「屋台荒らし……」
モナカ 「おぢさん……」
モーヴァ 「……おじさんおじさんと連呼するんじゃねーーーーっ!!」
モナカ 「にーげろー」
モーヴァ 「ったく。また、食いに来いよな」
ノア 「コーデリア、くもあめ、買ってくれてありがとう」
コーデリア 「私は全部はちょっと食べられそうにないので、ノアさんに分けてもらってちょうどいいんですよ。それに、特別に売ってくれたモーヴァさんに感謝ですね」
ノア 「おじいちゃんのことだけど」
コーデリア 「ふふ、まさか本当に会えるなんて。私の願い、叶っちゃいましたね」
ノア 「お菓子を一番頑張って集めていたの、コーデリアだもん。おじいちゃんに何もなければコーデリアが優勝だったんじゃないかな」
コーデリア 「そうだったのでしょうか……それはそれで順番がおかしいような?」
ノア 「僕、最後に霊界からこっちに戻ってくるとき、おじいちゃんの言葉が聞こえたよ。コーデリアは?」
コーデリア 「おじいさまは聞こえていないつもりだったのでしょうけれど、ええ、実は」
ノア 「そう。……死んでしまった誰かに会いたい、か」
コーデリア 「あら、モナカさん!?そんな、屋台によそ見して走っては、ああ、そちらには空間の裂け目から来た大量のお菓子の山……ああああ、あらあらあら」
ノア 「死んじゃった人たちだって、同じくらい、僕たちに会いたいのかもね」
マロン 「みんなーっ!応援ありがとーーー!!」
イタロ 「アンコール、アンコール!」
コーデリア 「モナカさん、お菓子は逃げませんよ。一緒にマロンさんのステージを見ながら、ゆっくりいただきましょうね」
モナカ 「ちがうの、私が、逃げてたの」
モーヴァ 「さあ、ラストスパートだ!稼ぎ切るぞお前たち!!」
モーヴァ1「いらっしゃいいらっしゃい」
モーヴァ2「『くもあめ』、復活ですぜ!」
モーヴァ3「『ほしぼしふりかけ』、『アマミツソース』の追加トッピングはいかがでがんす~?」
モーヴァ4「最後の1ピース……手にするのは誰だ?」
モーヴァ5「きゃあ~やだ可愛いかぼちゃおばけさん、こっちのお菓子もどう~?」
ノア 「もう少しだけ、このサウィンの夜が続いたらいいのにな」
**映像記録終了**
…以上が、「サウィン」にて起きた不可解な事件の顛末である。
モーヴァの分体に紛れ込むことでエネルギー消耗を抑えるはずが、むしろがっつり巻き込まれてしまった…。
恐ろしい量の食べ物を食い尽くす人間(というか化け物)、謎の異空間に、霊体と思わしき何かの数々…。理解し難いことだらけで書き起こし不能のため、本日の文字記録は省略、映像記録を添付するのみとする。
しかし、初めて死者の魂と思しきものに遭遇した。原理としては、魔法などのまだ科学的に解析できないエネルギーに近い何かのようだ。物質の採取などはできなかったが、映像記録だけでもかなり貴重な資料になるだろう。どこかの研究機関か、オカルトマニアにでも高値で売りつけるとしよう。
暗殺アンドロイドとしては、死者の魂なんてものは存在してもらっちゃ困る。「もう一度会いたい人」もいれば、「もう二度と会いたくない奴」ってのもいるわけなんだし。
もう今日はエネルギー残量が5%を切っている。今日のアイドルライブ音源を聴きながらスリープに入ろう…。くもあめは明日に取っておく…。
L O V E マ、ロ、ン…
――スリープモードに移行しました――
~ Fin ~
0コメント