まばハロ×あぐ本企画【マリシ】

『復讐のグリモア〜機械の国のナイトメア〜』 

作:ケンタ × Alice × SuiさんかNa

(2:3:0) ⏱50分



グリモア:

「今でも疼く、顔のこの傷…」

グリモア:

ライゼ・サンダース…私を侮辱したその罪は、このマリシと言う国一つを滅ぼして初めて雪ぐ事が出来るだろう…

軍事大国であるマリシは魔法と言う技術を使用せずに他国に渡り合える技術を有している。

つまり…誰か高戦力の者一人を私の傀儡とし、その武力で不意打ちすれば 内部から崩壊させることも不可能ではないと言う事!

洗脳魔法には難しい条件もあるが…この魔道具を使えば容易…

幸い この国は今ハロウィンと言う謎の祭りを慣行中だ。

街の者に、軍人、高官、支配階層の者まで仮装を楽しんでいる。

仮装用の仮面に紛れてこの「傀儡の仮面」を被せてしまえば その精神を意のままに操れるのだが… そのはずなのだが…


ーライゼの場合

グリモア:

(コソコソ隠れつつ)見つけたぞ、ライゼ・サンダース! その武力…利用させてもらうぞ!

ライゼ:

「国内はハロウィンとかいう祭りと 仮装で盛り上がってるみてえだな…

ま、楽しみてえヤツは楽しめば良い、俺は仮装よりも改造に時間を使えればそれでいい…」

ライゼ:

(グリモアの気配に気づき)「…ん? 探知機能に反応か…どこのどいつだ? 俺の新武装の実験台になりたいヤツはよ?」

グリモア:

気付かれた!? いや…まだ私という事はバレていないはず!

ライゼ:

「そこにいるんだろ!? 報告や個人的な用があるなら出てこい!

出てこないならお前はバカ確定だ! バカに生きる権利は無いと思え!」

グリモア:

大丈夫、コッソリ気配無く近づいて この仮面を…

ライゼ:

「なるほど、バカ確定だな! よっしゃ新武装の火力チェックの刑だ!」

グリモア:

「は!?」

ライゼ:

「高出力過粒子砲、高負荷アベレージで装填 焼き尽くしてやんよ!」

グリモア:

「ウソでしょ!?」

ライゼ:

「イャッハァ! 消しクズになりやがれ!」

グリモア:

「ひぃぃ…!」

グリモア:

命からがら逃げた私は、改めてマリシの人間の 頭のおかしさに恐怖した。


ーアイシャ・ハルトの場合

グリモア:

「はぁ、はぁ、危ない所だった!

ライゼ・サンダース、侮れないやつだ…」

アイシャ:

「アイヤー、ハロウィン最高アル! トリックオアトリートとか言うだけで手持ちのお菓子を根こそぎくれるお祭りなんて最高アル!」

グリモア:

あれはマリシの脳筋エルフ! あいつの攻撃力があれば マリシに大打撃を与えられる!

アイシャ:

「お菓子くれなかった場合は、イタズラして良いなんて 素敵すぎるアル! むしろお菓子くれないがヤツ出てきてくれたらイタズラと称して新技を…うふふふふ…」

グリモア:

何か物騒な事を言ってる気もするけど…ゆっくり近づいて…

アイシャ:

(急に背後から)「お前、何してるアル?」

グリモア:

「ひぃっ!」

アイシャ:

「今日は街中に怪しいカッコしてるヤツだらけだから、多少の怪しいには目を瞑ってやるネ。

その代わり…トリックオアトリート! お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうヨ!」

グリモア:

「な…ないけど…」

アイシャ:

(満面の笑みで)「うはぁ(じゅるり)…それじゃぁイタズラし放題… 最近 締め技にハマってるアルよ、付き合うヨロシ!」

グリモア:

「え!? ちょ!?」

アイシャ:

「これを…こうやって…」

グリモア:

「え? え?」

アイシャ:

「そして…こう!」

グリモア:

「ひぎぃ…っ!」

グリモア:

なにこれ、仮面どころじゃない! 痛い痛い痛い痛い!!! 外れない! 痛い!!


*そこに通りかかったハルトがキメてるアイシャを発見


ハルト:

「おいアイシャ、お前なにしてるんだ!」

アイシャ:

「ヤバ… いや…私は… そう、イタズラしてただけアル!」

ハルト:

「お前、これイタズラの域を超えてるぞ! …すまんな、ウチの脳筋バカが…ん…?」

グリモア:

確かこいつもマリシの…諜報部員のハルトだったか…

ハルト:

(ガチめの詰め方で)「…で…お宅は はるばるタングリス二から一体何しにマリシに来たのかなぁ? なんでその仮面被らないのかなぁ? で、そ仮面使って何か良からぬことを考えては…いないよなぁ?」

グリモア:

なにコイツ? 全てを見透かされる感覚と…隙の無さ…ッ!

ハルト:

「おいアイシャ、今日は目を瞑ってやるから、この女に めいいっぱいイタズラしてあげなさい!」

アイシャ:

「…~~~っ…! 良いアルか!? やっちゃって良いアルか!?」

ハルト:

「思いのままに遊んであげなさい!」

アイシャ:

「でもハルト…」

ハルト:

「ん?」

アイシャ:

「逃げちゃってるアル…」

ハルト:

「安心しろ、ヤツは…あっちだ!」

グリモア:

ひぃぃ…バレてる! 追ってくる!

アイシャ:

「突撃アルーーー!」


ーサリューの場合

サリュー:

「街はお祭り騒ぎ…良い雰囲気だ…

国家間の問題が相次ぐ中で、マリシの街の人たちのガス抜きを…と提案したハロウィンパーティー。

純粋に楽しんでくれているようだ…」

サリュー:

(トリックオアトリートと言ってきた子供に)「ん? なあに? トリックオアトリート?

お姉さんイタズラされるのは嫌だから、お菓子あげるわね。」

サリュー:

(子供を見送って)「見ず知らずの住人同士でも気軽に交流する切っ掛けを作れる

これなら故郷の村でハロウィンパーティーを開催しても良い影響を得れられそうね。」

サリュー:

しかし…趣味の悪い仮装や飾りつけは何とかしてほしいわね… あまり気分の良いものではないわ…

でもまぁ…ルールの範囲内で楽しんでいるみたいだし、多少の事には目を瞑らないと…

サリュー:

(人にぶつかって)「あっ…ごめんなさ…

…ひっ!おばk… 

(軽く深呼吸して)いえ、なんでもありません。 

楽しいパーティーを、ハッピーハロウィン。」

サリュー:

「ダメね…分かってはいるけど、どうしてもオバケ的なものは苦手…」

サリュー:

(グリモアを発見して)「あら…どうかした? 何か困り事でもあるのかしら?」

グリモア:

「はぁ…はぁ…追われてるんです! 助けて下さい!」

サリュー:

「どうしたんですか? あら…あなたは…」

グリモア:

コイツ…あの時の鹿角の獣人か! ヤバい…バレる…!

アイシャ:

「イタズラ対象はっけーん! さぁ、観念するアル!」

ハルト:

「アイシャ! やーっておしまい!」

グリモア:

(サリューの隙をついて拘束)「来るな! 来たらコイツの意識を刈り取ってやる!」

アイシャ:

「サリュー! そんな奴ブッ飛ばすアル!」

サリュー:

「そうね…身を隠し マリシにまで追って来た怪しい人間を放置しておく手はないもの…

(グリモアの腹に一撃を加えて)…ねっ!」

グリモア:

「ぐうっ…」

グリモア:

このままじゃジリ貧か…仕方ない、この女の精神を私の傀儡にする!

サリュー:

(仮面を被せられて)「もゎ…一体何を!?」

グリモア:

「あんたの精神、いただくわ! 悪く思わないでね!」

サリュー:

(倒れて)「くっ…意識が…ッ…」

グリモア:

(倒れながら)「く…くふふふふ…」


*サリュー、グリモア、意識を失う。


ハルト:

「大丈夫かサリュー! この仮面は…傀儡の仮面か!」

アイシャ:

「傀儡の仮面…それは一体何アル?」

ハルト:

「説明は道すがらする、ひとまずはサリューを安全な場所に運ぶぞ! アイシャ頼む!」

アイシャ:

「そっちの女は?」

ハルト:

「このままと言う訳にもいくまい…連れて行く!」

アイシャ:

「…で、どこに向かうネ?」

ハルト:

「ここから一番近いのは…ライゼの研究室か…そこに向かう!」

アイシャ:

「がってん!」


ーライゼの研究室

ハルト:

「ライゼ、いるか!? 俺だハルトだ!」

ライゼ:

「どうしたハルト… お? 女連れか? お前も隅に置けねえな!

気絶させて…なるほど お前の癖が見えたぞ!」

ハルト:

「違う! そして美人ではあるが、こんな女 願い下げだ!」

ライゼ:

「あぁ? ああ…こいつは…タングリス二の黒フードの女…」

ハルト:

「ちょっと場所を貸してくれ! アイシャ、サリューを!」

アイシャ:

「サリュー、大丈夫アルか?」

ライゼ:

「ハルト…これは一体…?」

ハルト:

「この女がサリューに傀儡の仮面を使ったんだ!」

ライゼ:

「なるほど、この女がサリューの精神を乗っ取ろうとしてるって訳だな! ならこの仮面を握り潰して終いだな!」

ハルト:「バカ! 既に発動している仮面を壊したら、サリューの精神ごと潰すことになる!」

アイシャ:

「サリューがサリューじゃなくなるってことアルか? そんなのダメアル! ハルト、何とかするアル!」

ハルト:

「ライゼ、昔ヴェルが作った精神移送装置があっただろ、あれ まだあるか?」

ライゼ:

「あるけどよ…あれはオモチャみたいなモンだって作った本人が言ってたぞ?」

アイシャ:

「オモチャでも何でもいい、ハルト それがあればサリューを助けられるアルか!?」

ハルト:

「あくまでも可能性の話だが…な」

アイシャ:

「ライゼ! つべこべ言わずに出すアル!」

ライゼ:

「はいはい、今出すから少し待ってろ。」


*サリューに精神移送装置装着済みの三人


アイシャ:

「で…その機械がコレアルか?」

ライゼ:

「な? オモチャみたいだろ?」

アイシャ:

「オモチャみたいと言うかオモチャそのものアル!」

ハルト:

「そこ、ごちゃごちゃ言わない! 始めるぞ!」


ーサリューの精神内

アイシャ:

「ほへー… ここがサリューの心の中…」

ライゼ:

「まさか あんなオモチャが使えるなんてな…」

アイシャ:

「驚きを隠せないアル…」

ハルト:

「二人とも、よく聞け。 ここでやることは二つだ。

サリューの精神を元の身体に戻す事、精神内に入った黒フードの女をブッ飛ばす事!」

ライゼ:

「武装はどうなる?」

ハルト:

「精神世界ではイメージが全てだ、普段使っている道具や武装なら思うだけで再現されるはずだ。」

アイシャ:

「はいはい! 質問!」

ハルト:

「はい、アイシャさん。」

アイシャ:

「ハルトは何で この世界について そんなに詳しいネ?」

ライゼ:

「確かに… お前…黒フードクソ女とグルだな!? じゃあまずは お前を消しクズにしてy…」

ハルト:

(ライゼの言葉を遮って)「ヴェルのヤツが、俺を使って実験しやがったからだよ…」

アイシャ:

(同時に)「あー…」

ライゼ:

(同時に)「あー…」


ー間


ハルト:

「…ともあれ、まずはサリューの精神を探すことから始めるぞ!」

ライゼ:

「おう!」

ハルト:

「精神の世界は不安定だから、偽物なんかもいて気を付ける必要が…」

ライゼ:

「ハッハー! 試したい兵器を試し放題だ! 出てこいクソ女!」

アイシャ:

(既に聞いてない)「うおぉぉぉぉぉ…サリュー! 助けるネーーー!」

ハルト:

「…うわぁ…聞いてねぇ…

仕方ない…とりあえずサリューを見つけるか…

…しかし… 都合よくヴェルの作ったオモチャがあって良かった…

俺の能力で二人の精神をサリューの中に飛ばしたが、オモチャを理由に 能力がバレる事も無くて助かった。

一人で探すには精神世界は広すぎるからな…行動範囲の広いアイツらがいれば可能性は広がるだろう…

さて…おれも探しに行くか…

みすみす、黒フードの女にサリューの身体を くれてやる訳にはいかんからな…



−−シーンライゼ−−

ライゼ:

「ハッハー! 試したい兵器を試し放題だ! 出てこいクソ女!」

グリモア:

(怪談語りの感じで)走り出したライゼの足元が急に消失し、地面がポッカリと口を開ける

ライゼ:

「…ぅぅぉおおおあっ!?」

グリモア:

バシャッッ。水面に落下し大きな音が響く

ライゼ:

「なんっだこりゃ!!?」

グリモア:

落ちた先は狭い空間で、腰まで水で満ちている

ライゼ:

「なんだぁここは?」

グリモア:

…ピチョン…ピチョン

グリモア:

水音が反響し響いている

ライゼ:

「…トラップか?いやダメージを与えるようなもんはねぇな…落ちてきたのはあそこか…あん?」

グリモア:

上を見上げると、暗闇の中にぽっかりと光の穴がみえる

グリモア:

と、光の先から何かが落下してくる

グリモア:

大きな音をたててそれは水面に落下する

ライゼ:

「あぁ?アイシャか??」

グリモア:

落下してきた人物が水面から顔を出す

アイシャ:

「…ぅぇ?」

ライゼ:

「あん?」

アイシャ:

「…なんアル?暗いアル濡れるアル怖いアル!アルヨロシーーーーーーー!!」

ライゼ:

「うるっせぇ!せめぇんだから叫ぶな!!」

アイシャ:

「ギャーーーーーーアルーーーーーーーー!!」

ライゼ:

「うわっ!!てめぇ濡れたまま人の上登んな!!!」

アイシャ:

「水アルーー怖いアルーー嫌アルーーーー」

ライゼ:

「てめぇそんなタマじゃねーだろが!降りろバァカ!!」

グリモア:

…パシャッ

アイシャ:

「なんアルか!!音したアル!!なんアルかぁっっ!!?」

ライゼ:

「うるっせぇ!!耳元でわめくな!!このっ!」

グリモア:

再び水の中に落とされたアイシャが涙目で水面から顔をだす、と、視線の先に何かが見える

アイシャ:

「なななななななななんアルかぁ!!??」

ライゼ:

「あぁん?」

グリモア:

水面に黒い物体が浮かんでいる

グリモア:

それはゆっくりとアイシャの目前に近づいてくる:

アイシャ:

「…なんあるぅ…く…くるなあるぅ」

グリモア:

目の前の”ソレ”はゆっくりと高さを上げる

グリモア:

”ソレ”はアイシャの目線とおなじ高さくらいまで持ちがる。真っ黒な”ソレ”は髪の毛だった

アイシャ:

「…ヒン…いやぁーーーーーこわいアルゥ!!!」


*大きく跳躍しそのままライゼの頭に着地する


アイシャ:

「ひぃん…怖いアルゥ」

ライゼ:

「おりろっってんだばぁか!意外な弱点だなおい」

アイシャ:

「だって!怖いの無理アルゥ」

グリモア:

真っ黒な髪の毛の塊を掻き分け、ズルリと枯れ枝のような腕が伸びる

アイシャ:

「ぎゃぁああああーーーー!動いたある呪い殺されるアルゥーーーーー!」

ライゼ:

「おいてめぇ。あまり有効的とは思わねぇがとりあえずフリーズだ。動いた瞬間鉛球ぶち込むぜ」


*ライゼが右腕を髪の毛の塊に向ける


アイシャ:

「もういいからさっさと撃つアルゥーーー!!っ!!?きたあるるるるるーー!!!」

グリモア:

ゆらり、と髪の毛の塊が一歩距離をつめる

ライゼ:

「チッ!警告はしてやったぜ!!オラァ!!!」


*ライゼの掌が左右に割れ中から銃身が現れ、マズルフラッシュをあげながら高速で弾丸が射出される。

 が、弾丸は全て髪の毛の中に吸い込まれ、そのまま後ろに通過していった


グリモア:

枯れ枝のような腕の先から生える指は、悍ましくなにかを求めるように蠢いている

アイシャ:

「やっぱり幽霊アル殴って吹っ飛ばないアルこの世の終わりアルゥーーーー!!」

ライゼ:

「いい加減降りろバカ!!戦えねぇだろうがっ!!!」

アイシャ:

「いやアルーー!1人になったら呪殺されるアルゥーーーー!」

ライゼ:

「めんどくせぇなぁっっ!!ぶった斬っちまえばしまいだろ!!おらぁぁあ!」


*腰からビーム大剣の柄を抜き放ち出力を上げる。

 狭い空間で振り回すスペースは無いため、剣先が壁をえぐるのを気にもとめず上段から振り下ろす


ライゼ:

「どぉだ!くそばかがよぉ!」

グリモア:

真っ二つに割れた黒髪

グリモア:

別れた左右の体の間を、1本、また1本と髪の毛が繋いでいく

グリモア:

何本もの髪の毛が体同士を引き寄せ、グジュグジュと不快な音をたてながら一つの体に戻っていく

ライゼ:

「チッ!!」

アイシャ:

「やっぱ無理アルもうだめアルここで呪い的パワーでくびり殺されるアルゥーーーー!!」

サリュー:

「2人とも!こっち!!」

ライゼ:

「あん?」


*声がしたほうを見上げると、サリューが頭上の光の穴から手を差し出し叫んでいる。


アイシャ:

「サササササリューーーー(泣)助けてアルゥーーーー(大泣)」

ライゼ:

「てめぇならこの距離跳ぶくらいなんてことねぇだろ!足手まといだからさっさとあがれ!!」

サリュー:

「跳べる?!アイシャ!!」

アイシャ:

「ふえぇ無理アルゥーー腰抜けて1mも跳べないアルゥーー」

サリュー:

「もう!ロープ降ろすから!」

グリモア:

スルスル…スルスル

グリモア:

光の縁から一本の線が降りてくる

アイシャ:

「グス…サリュゥー助かったアルゥーー」

ライゼ:

「チッ!さっさといっちまえへなちょこエルフ!」

アイシャ:

「アル」

グリモア:

ライゼの肩にスルりと何かが触れる

ライゼ:

「あん?」

グリモア:

背後から伸びたそれは幾重にも巻き付き、剣を構えた右腕ごとライゼの首元を絞め上げる


*金属パーツに覆われた首は、いくら絞められたところで窒息する事はない。が、強い力で腕ごとロックされ身動きがとれなくなる


ライゼ:

「なんっだぁ!!?」

グリモア:

首元に絡みついたソレは腕だった。老木の枝のような細い腕が、グルグルと巻きついている。

グリモア:

視線をあげたライゼとサリューの目があう。サリューの顔をしたソレは、にぃっと口が裂けたように口角をあげる

サリュー:

「アはハハは」

アイシャ:

「あハははハ」

ライゼ:

「っ!?てめえ!」

グリモア:

サリューと同じく歪な笑顔を浮かべたアイシャが左腕を絡めとる

グリモア:

黒髪は息がかかるほどの距離まで近づいている。髪の隙間から覗く口は、二人と同じ気味の悪い笑顔を浮かべていた

グリモア:

「ぁハは」

グリモア:

バキバキと関節が不快な音をたてながら、捕食時の蛇のように大きく口を開く

ライゼ:

「…あぁ…もういい…馬鹿馬鹿しい」

サリュー:

「アハははは」

アイシャ:

「あはハハハ」

グリモア:

「ぁハハハは」

ライゼ:

「まとめて消し飛ばしてやる…」


*折りたたまれていた背中の砲身がガシャリと音をたてて上に伸びる


ライゼ:

「本物だったら損傷分の機械化代もってやる。まぁ本物だったら首も腕もただで済んでるわけねぇけどな」

ライゼ:

「久々にイラッとしたぜ…消し飛べクソがぁ!!!」


*照準を絞らずにエネルギーは放射状に広がり、辺りを真っ白に塗りつぶす


グリモア:

大きく開いた口はそのままライゼを頭から…っあっづい!!!!!!

グリモア:

「なに!!あっつ!!お尻焦げた!!!」

グリモア:

「閉じ込めた井戸の呪霊結界ごと消し飛ばすとか!規格外な事しやがって!!もう!!」


*ポッカリと穴を開けた空間の歪みからライゼが出てくるのをみて、グリモアは脱兎の如く逃げ出す


ライゼ:

「出られたか…チッ!まだ近くにいんだろ!!でてこいクソが!」

ライゼ:

「あいつらも消えてんな、やっぱ偽物だったか」

ハルト:

「ライゼ!無事か!?っ!」


*ライゼが大剣の先をハルトに向ける


ハルト:

「おいおいどういうつもりだ」

ライゼ:

「てめーはホンモンかぁ?」

ハルト:

「どういうことだ?」

ライゼ:

「さっきまでアイシャとサリューの偽物と一緒だったからよ。てめーが本物って確証はねぇんだよ」

ハルト:

「そういうことか。おそらく敵の術だろうが…確証と言われても難しいな」

ライゼ:

「一発加粒子砲ぶっぱなして立ってたら本物でいいか?」

ハルト:

「いいわけないだろ!」

ライゼ:

「まぁいいや。怪しい動きみせたら一発ぶっぱなすから、変な動きすんなよ」

ハルト:

「それでいうと俺からみたらお前も本物の確証なんてないんだけどな。勝手に走り出して、消えたと思ったらいきなりあさっての方から出てきてるんだから」

ライゼ:

「それこそ一発ぶっぱなせばわかんだろ?俺の加粒子砲は真似できる威力じゃねぇぞ」

ハルト:

「あーあーわかったわかった。とりあえずアイシャを探そう、あいつも敵の術にかかってそうだ」

ライゼ:

「あいつがどうにかなるとは思わねぇが、単細胞だから幻術の類は抜群にききそうだ」

ハルト:

「おまいう(ボソッ)」

ライゼ:

「あぁ?なんかいったかぁ?!」

ハルト:

「なんでもない!いくぞ!!」



−−シーンアイシャ−−

アイシャ:

「うおぉぉぉぉぉ…サリュー! 助けるネーーー!

どこにいるアルかーー!」

ハルト:

「アイシャ静かにしろ

一応敵地だぞ

ここは…、みたところマリシ西部の山脈地帯みたいだな、街中と違ってずいぶん暗い」

アイシャ:

「ここがどこだろうと問題ないネ!私の柱で飛べないとこはないアルからなぁ!

んでもって、グリ…グリリン?もぶっ飛ばすアル!」

ライゼ:

「グリリンじゃなくて、グリモアよ!

ほんとにアイシャってば脳筋バカなんだから」

アイシャ:

「誰が脳筋アルか!ばかライ…ライゼ??」

ライゼ:

「なによ?」

アイシャ:

「なんか喋り方おかしくないアルか?」

ライゼ:

「何言ってんのよ、別に普通でしょ」

アイシャ:

「いや!絶対そんなわけないアル!

な!ハルトもそう思うヨナ!?」

ハルト:

「どうしたアイシャ、俺様の愛しのライゼはいつもこの口調だろう」

アイシャ:

「…俺様の愛しのライゼ??」

ライゼ:

「うざったいわね!バカハルト!くっついてこないで!」

ハルト:

「あぁ!もっとなじってくれ!」

アイシャ:

「うえぇ…え?何?お前らそういう関係だったアルか?」

ライゼ:

「ちょっと変な勘違いやめてよね

あたしは改造にしか興味ないの

せっかく色々試せる機会なんだから水差さないで!」

アイシャ:

「あ、言ってることはいつもの改造バカだったアル」

ライゼ:

「うっさいわね!脳筋バカ!」

ハルト:

「改造に向ける興味の1割でもいいから俺様のこと見てほしい…!」


*3人の背後から


サリュー:

「っていうかあなたたち、来てくれたのは嬉しいけど、私を助ける気ほんとにある?」


*同時に


アイシャ:

「サリュー!?」

ライゼ:

「サリュー!?」

ハルト:

「サリュー!?」

アイシャ:

「え!グリングリンに捕まってたんじゃないアルか!?」

サリュー:

「誰よ、グリングリンって」

アイシャ:

「…パンチパーマ失敗してグリングリン?」

サリュー:

「あいつそんな名前だったかしら?」

ハルト:

「グリモアだ、サリュー」

ライゼ:

「アイシャ…、あんた1分前はグリリンって言ってたわよ?

脳みそ羽虫以下なの?」

アイシャ:

「うっさいアルなぁ!名前なんてわかればなんだっていいアル!改造オカマバカ!」

ライゼ:

「なんですってぇ!?改造はオシャレよ!ロマンよ!クソダサ脳筋バカ!」

アイシャ:

「強さにオシャレとかダサいとかないネ!やるアルか!?」

ハルト:

「お前らその辺にしておけ!

俺様だってライゼとイチャつきた…じゃなくて、サリューが早々に見つかった以上、こんなところに長いは無用だ

とっととグリモアを探し出して脱出するぞ」

ハルト:

「サリュー、グリモアがどこにいるか知らないか?」

サリュー:

「わからないわ

目が覚めたら誰もいなかったから」

ハルト:

「そうか。サリューの精神を戻すにはあの女をこの精神世界で見つける必要があるからな

とにかく行くぞ」

グリモア:

「さぁ、いらっしゃい…

のこのこやってきたことを後悔させてあげる

現実世界では遅れをとったけれど、

ここは私が乗っ取った鹿角獣人の精神世界

私の掌の上も同然…

うふふ…あははははは…っ」


*山の中を歩く4人


ライゼ:

「にしても暗いわねぇ

こう暗いと今の兵装って、目立たなくて地味なのよねぇ

帰ったら、差し色で蛍光塗料とか入れようかしら?

ねぇ何色がいいと思う?

やっぱり髪色に合わせて赤かしら?」

アイシャ:

「心底どうでもいいネ

腕とか脚とか、十分ガチャガチャしてるダロ」

サリュー:

「前々から思っていたけれど、ライゼの兵装って隠密には向かないわよね

蛍光塗料なんか塗ったらますます見つかりそう」

ライゼ:

「大丈夫よ

そういう任務の時は地味なのに変えるから

けど、目立たないオシャレって難しいのよねぇ」

ハルト:

「だったら、全身に俺様のブロマイドとかどうだ?目立たないのに派手だぞ!」

ライゼ:

「キモいのよ!」

ハルト:

「あぁん!」(喜んでる)


*前方に何かを発見する


アイシャ:

「ん?なんアルか?あれ?

なんか白いふわふわしたものが…」

サリュー:

「あ、あれは…!」

ハルト:

「知ってるのか?サリュー」

サリュー:

「目が覚めた後しばらく付き纏われていたんだけど、その…攻撃が当たらなくて…

私ダメなの得体の知れないものって」

アイシャ:

「はん!あんな軟弱そうなやつ、この私にかかれば一捻りネ

はぁぁぁぁ!右柱折脚!」


*スカッ(すり抜ける)


アイシャ:

「…あれ?外した?」

サリュー:

「だから言ったじゃない

そいつに物理攻撃は効かないって」

ライゼ:

「んもう!肝心なところで役に立たないんだから!あたしに任せなさい!

…ひゃっはぁぁぁぁぁぁ!

行くぜぇ!エネルギー充填完了!出力・角度調整よぉし!目標、目の前の謎浮遊物体!

消し飛べぇぇぇ!」

ハルト:

「きゃぁぁぁぁ!ライゼかっこいいー!」


*可粒子砲が浮遊物体をすり抜ける


サリュー:

「あぁもう…!話し聞かないやつばっかりね…!

当たってないわよ!」


*すり抜けた勢いで、隠れていたグリモアの周囲の木々が炭と化す


グリモア:

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!?

ちょっと!こんな山の中でそんな物騒なものぶっ放すなんて、何考えてんのよ!?」

アイシャ:

「あ!グリグリお化け!」

グリモア:

「誰がグリグリお化けよ!」

ライゼ:

「っつうか、可粒子砲もすり抜けやがった!?

なんなんだあれ」

グリモア:

「ふっ…、残念だったわね

そいつにはどんな攻撃も効かないわ」

ライゼ:

「そんなのやってみなきゃわかんねぇだろ

まだ試してねぇ新兵器の実験台になってもらうぜ」

グリモア:

「バカねぇ、効くわけないのに」


*アイシャ、浮遊物体にパンチ連打してるけど全部すり抜けてる


アイシャ:

「うおぉぉぉ!

ちょっ!ちょっ!ライゼ!見るアル!こいつ拳が貫通するヨ!かっけー!

どうなってるアルか!?」

グリモア:

「あんたはなに遊んでんのよ!?

ちょっとはこわがんなさい!」

アイシャ:

「…なんで?」

グリモア:

「なんで!?」

アイシャ:

「普通の攻撃が当たらない敵なんて

テンション上がるに決まってるアル!

新技開発のチャーンス!」

グリモア:

「こんの…戦闘狂の集まりが…!

まぁいいわ

せいぜい無駄な努力を続けなさい

その間に私は…」

ハルト:

「待て、ライゼ!アイシャ!」

アイシャ:

「ハルト?」

ハルト:

「その白いのはおそらく思念体の類だ

簡単には倒せないだろうし時間の無駄だ

そいつは俺様に任せろ!

それよりもその女を逃すな!

そいつさえ始末できれば万事解決だ」

ライゼ:

「……

はっはぁ…そうだったなぁ」

アイシャ:

「当たらない相手より、もっと手応えのある相手がいたアルぅ」

サリュー:

「霊的なものでないなら問題ないわ

現実世界での落とし前つけさせてもらうわね」

グリモア:

「え、いや、ちょっと…」

アイシャ:

「問答無用!行くアルよぉ!

左柱滅脚!」

グリモア:

「ちっ!詠唱破棄!縛縄(ばくじょう)」

アイシャ:

「ぬぁ!トゲトゲのツルが…!

こんの…邪魔アルなぁ!」

サリュー:

「アイシャ動かないで!

こっちで対処するわ!ふっ…!」(短剣でツルの根本を切る)

アイシャ:

「助かったアル!サリュー!」

サリュー:

「以前一度お世話になってるからね。

対策は万全」

ライゼ:

「今回は捕まる前にその邪魔くさいもん燃やし尽くしてやるぜ!

エネルギー残量70%!出力10!」

グリモア:

「貴様如き攻撃で私の魔力が破れると思って…」

サリュー:

「(被せる)ライゼ、魔力の根源はグリモアじゃない

そこから東の方角へ60度の位置」

グリモア:

「な!?」

ライゼ:

「まじかよ!信じるぜサリュー!

おらぁぁぁぁぁぁ!」


*地中に隠されていた魔晶石が破壊される


ライゼ:

「よっしゃぁ!」

グリモア:

「あぁ!私の魔術が!

おのれぇ…!なぜわかった!」

サリュー:

「あなた、魔法がザツすぎるのよ

私これでもリーベルの出身なの

前に一度あなたの魔力には直接肌で触れてるし、気配でバレバレ」

ライゼ:

「獣人ってそんなこともできんのかよ!

すげぇな!」

アイシャ:

「獣人ってそんなことできるアルか!?」

サリュー:

「訓練すれば、かしらね

結構繊細な神経使うし」

ライゼ:

「じゃあアイシャにゃ無理だな」

アイシャ:

「なんでアルか!!」

ハルト:

「お前らは何をやってるんだ…

片付いたのか?」

サリュー:

「は、ハルト…あの白いのは…?」

ハルト:

「あぁ、安心しろ

俺様の方で始末した

さて、グリモア

サリューを解放してもらおうか」

グリモア:

「この私が大人しく「はい、わかりました」と言うとでも?」

ライゼ:

「顔のもう半分も燃えとくか?」

グリモア:

「え゛」

アイシャ:

「あぁ!ズルいアル!

今日まだ碌に戦えてなくてストレス溜まってるネ!

私にやらせるヨロシ!

ボコボコにしてやるヨ!」

グリモア:

「ちょっ…」

サリュー:

「ちょっと、今回一番の被害者は私よ。

その権利は私にあるんじゃない?」

グリモア:

「んなっ…」

ハルト:

「だそうだが?

大人しく「はい、わかりました」と言っておく方が賢明だと思うがな」

グリモア:

「こんなはずじゃ…!

くそっ…!この借りは必ず返す!」(逃げる)

アイシャ:

「逃すかぁ!右柱折脚!ふん!」

グリモア:

「ぐ…っ」(ガードしながらぶっ飛ばされる)

アイシャ:

「ライゼ!そっち行ったアルよ!」

ライゼ:

「よっしゃぁ!ナイスだアイシャ!

エネルギー充填フルパワー!

特大可粒子砲発射ぁ!くらいやがれぇぇぇぇ!」

グリモア:

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」

サリュー:

「あ…」

ハルト:

「サリュー諦めろ

あの2人の辞書に、譲り合いという言葉はない」

サリュー:

「まったく…」

アイシャ:

「よーっし!これで万事解決アルな!

さっさと帰って祭りの続きアルー!

お腹も空いたし、町中のお菓子は根こそぎいただきヨ!

おっかしー♪おっかしー♪

ハルトー!帰り道どっちアルかー?」


*アイシャの背後で、偽物のライゼ・ハルト・サリューが霧散して消える


アイシャ:

「ハルト?(振り向く)

あれ?ハルトー?どこいったアルかー?(あたりを見回す)」


ー間


アイシャ:

「ライゼとサリューもいないし…

んーーーーー(なんか考えてる)

はっ!もしかしてもう祭りの再開アルか!?

見つけたらお菓子をもらえる的な…!?

ははーん、あいつらなんだかんだ言って子供アルからナ

ちょっとでも早くハロウィンやりたかったってことネ!

そう言うことなら、全力で見つけてトリックオアトリートするヨー!」


*本物のハルト・ライゼがやってくる


ハルト:

「アイシャ!ここにいたか!」

アイシャ:

「ん?」

ライゼ:

「ったく手間取らせやがって

っつか、こいつ本物か?」

ハルト:

「わからんが…」

アイシャ:

「トリックオアトリーーーーートぉぉぉぉ!」(2人に向かってダイブする)

ライゼ:

「どぅわ!?」

ハルト:

「なんだ!?」

アイシャ:

「お菓子よこせアルぅぅぅぅ!」

ライゼ:

「はぁ!?菓子!?んなもん持ってるわけねぇだろ!」

アイシャ:

「なんでアルか!」

ライゼ:

「なんでも何もねぇだろうが!」

アイシャ:

「戦ってお腹減ってるネ!」

ライゼ:

「知るか!」

ハルト:

「アイシャ、お前何かと戦ったのか?」

アイシャ:

「何いってるヨ、ハルトとライゼも一緒にグリグリお化けを…

あ、そういえば戦いのゴタゴタで忘れてたけど、ライゼ、お前戦いの時は喋り方戻るんアルな?」

ライゼ:

「喋り方?俺はいつもこうだろうが」

アイシャ:

「ちがうヨ!なんかさっきまで「なんとかだわ」とか言ってたアル!」

ライゼ:

「なんだその気色悪い喋り方は!」

アイシャ:

「私が聞きたいネ!」

ハルト:

「ライゼ…、おねぇの気(け)があったのか…?」

ライゼ:

「ねぇよ!!」

アイシャ:

「あ、それとハルト」

ハルト:

「ん?なんだ?」

アイシャ:

「結局、ライゼとはどこまで行ってるアル?」

ハルト:

「は?」

アイシャ:

「キスくらいまでは迫ったアルか??」

ハルト:

「キス!?!?俺様とライゼが!?」

ライゼ:

「お前俺のことそう言う目で見てんのか!?」

ハルト:

「違う!!誤解だ!」

アイシャ:

「誤解じゃないヨ

だって「俺様のライゼー!かっこいいー!」とか言ってベタベタしてたアル」

ライゼ:

「うわぁ…(引)」

ハルト:

「どう考えても俺様じゃないだろ!ライゼ!そんな目で見るな!」

アイシャ:

「あとはー自分のブロマイドをー…」

ハルト:

「(遮る)アイシャ!頼む!もうそれ以上喋るな!」

アイシャ:

「ふぇ?」

ハルト:

「…(気まずい空気)」

ライゼ:

「…(気まずい空気)」

ハルト:

「(咳払い)あ、あー…、ど…どうやら、ものすごく傍迷惑な偽物がいたようだな?」

アイシャ:

「偽物?」

ハルト:

「そうだ。アイシャ、お前がさっきまで一緒にいた俺様達は偽物だ」

アイシャ:

「え!?じゃあサリューは!?助かってないアルか!?」

ハルト:

「まだこの世界に囚われているだろう」

アイシャ:

「ぬぁー!騙されたアルー!

そうとわかれば、本物のサリューを早く探しに行くネ!

ふん!(その辺の木をパンチで折る)そぉれ!(折った木に乗って飛んでいく)」

ハルト:

「あ、待てアイシャ!1人で飛んでいくな!

ライゼ!俺様達も行くぞ!」

ライゼ:

「…」

ハルト:

「ライゼ?」

ライゼ:

「ハルト、この件片付いたら、しばらくの間距離置いていいか…?」

ハルト:

「…ライゼ??」

ライゼ:

「いや、わかってる。ここにいた俺達が偽物だってのはわかってるけど、念の為…な?」

ハルト:

「いや、え」

ライゼ:

「よっし!アイシャ追わねぇとな!待ちやがれ脳筋バカー!(ダッシュでアイシャを追いかける)」

ハルト:

「あ…(1人取り残されるハルト)

俺様関係ないのに…!」


*二人に追いついたハルトが見たものは…


ハルト:

「ふぅ…ようやく追いついたが…

ライゼ、アイシャは?」

ライゼ:

「あぁ…アイツならあそこで…」


*アイシャ、サリューを振り回しながら


アイシャ:

「サリュー! おなか空いたアル! トリックオアトーリートアル! 食べ物を寄こすアル!」

サリュー:

「ぅぁ…アイ…シャ… たすけ…」

アイシャ:

「このニセモノッ! 食べ物くらい寄こすアル!」

ライゼ:

「ずっとあの調子なんだ…

言葉も目線も虚ろなサリューを見つけて振り回しているが…

アレか? あのサリューも偽物…」

ハルト:

「…ッ!!」

ライゼ:

「おいハルト!」

ハルト:

「やめろアイシャ!」

アイシャ:

「何アル! ハルトが食べ物くれるアルか!?」

ハルト:

「食べ物は無い! だがやめろ! そのサリューは本物だ!」

アイシャ:

「へ…?」


ー短い間


アイシャ:

「ウソアル! サリューはこんなに変な喋り方しないアル!」

ハルト:

「バカ! 精神的に追いやられているんだよ!」


*ハルト、サリューを寝かせて


ハルト:

「大丈夫か?」

サリュー:

「…かなりムチャクチャされちゃったけど…大丈夫…」

ハルト:

「幸いにまだ完全に精神を乗っ取られてはいないが…時間の問題だな…

ライゼ、アイシャ、気配は感じる! 敵はすぐ近くに居るはずだ。

速攻で倒してサリューの精神を安定させる!」

アイシャ:

(同時に)「まかせろ!」

ライゼ:

(同時に)「まかせろ!」


*そこにデカいグリモアが姿を現す。


グリモア:

「ははは…間もなく その女の精神は私の物だ!

精神を乗っ取った暁には 一足先に目覚め、外で眠っている お前たちの本体を始末してやる!」

アイシャ:

「ついにラスボス登場アルね!

ラスボスはデカいと相場が決まっているアル! アイツを木っ端微塵にしてサリューを取り戻すアル!

な、ライゼ!」

ライゼ:

「…ん~…」

アイシャ:

「…ライゼ?」

ライゼ:

「…ありゃ多分ニセモンだな…」

ハルト:

「どういう事だ?」

ライゼ:

「いや、さっきよ あの黒フードの女のケツを過粒子砲で焦がしてやったんだが…アイツのケツは焦げてねぇんだ…

すぐ近くに居るって事で 少し焦げたい匂いはするんだが…

それにしては あのデカブツのケツは綺麗すぎる。」

ハルト:

「焦げた匂いか…」


*ハルト、匂いを嗅いで


ハルト:

「ライゼ…サンキュー! これでサリューを助けられる!

あの女が隠れているところは…ここだ!」


*ハルト、サリューの影に手を突っ込む。


アイシャ:

「…ッツ! サリューの影にハルトの手が入っていくアル!」

ハルト:

「捕まえた! アイシャ! オレごと引っこ抜け!」

アイシャ:

「はいな! 出てこい! グ~リ~グ~リ~!!!」


*引っこ抜かれるグリモア


グリモア:

「くっ…あと一歩と言う所で…!

くふふふふ… だが、もう遅い! この女の精神は間もなく私のもの…」

ハルト:

「残念だが、それは無い。」

グリモア:

「なんだと!?」

ハルト:

「サリューとの接続が切れたお前に、サリューの精神をどうこうする力は もう無いからだ!」

グリモア:

「なにを…そんなデタラメ…」

ハルト:

「その証拠にな…」


*満身創痍ながらもグリモアを真っ直ぐ見つめるサリュー


サリュー:

「よくも やってくれたわね…」

アイシャ:

「サリュー! 良かったアル!」

ハルト:

「おかえり、サリュー」

サリュー:

「まったく…無茶する人たちなんだから…」


*笑い合い、」ほっこりする三人を横目に逃走を図ろうとするグリモア


グリモア:

「なんだか いい雰囲気になってるみたいだし…この隙に…こそこそ…」

ライゼ:

「おい クソ女! どこ行く気だ? あぁ!?」

グリモア:

「ら…ライゼ・サンダース…」

アイシャ:

「そう言えば、まだオトシマエ付けてなったアルね!」

グリモア:

「ひっ…私…何されるの!?」

アイシャ:

「そうアルね…締め技と 極め技、その他数種の打撃技の練習台になってもらうアル!

安心するヨロシ…死なない程度に手加減してやるアルよ…ペロリ…」

グリモア:

「そんな…」

ライゼ:

「アイシャに散々可愛がってもらったら 次は俺だな…

お前にも人体改造の素晴らしさを味わってもらおうか…

普段は自分を改造しているが…他人を改造するのも楽しそうだ…

もちろん麻酔無しな? …ペロリ…」

グリモア:

「そんな…非人道的な…」

ハルト:

「そうだぞ! そんな非人道的な事は良くない! そうだろ?」

グリモア:

「良くないですよね!」

ハルト:

「ああ そうだな! だから二人とも、そういう事はここでは行わず、現実でやりなさい…

アイシャ、技の手ごたえを感じたいだろ?

ライゼ、改造結果を残したいだろ…なぁ… …ペロリ…」

グリモア:

「この外道! サリュー様…この通り、この通り謝ります! 助けて下さい!」

サリュー:

「ちょっとみんな… 私、そんな残虐な事されているところ見たくないわよ!」

グリモア:

「サリュー様…!」

サリュー:

「グリモア、あなたも そんな事されたくないわよね?」

グリモア:

「はい!」

サリュー:

「だからみんな、徹底的にやってちょうだい!」

グリモア:

「…へ?」

サリュー:

「精神を殺そうとしてきた人に情け容赦を掛ける必要ないでしょ?

確かに私は拷問されている凄惨な現場を見たい訳じゃないけど…

私の知らないところで 勝手に地獄に落ちてくれるんなら万々歳だわ。 …ペロリ…」

グリモア:

「ひぃぃぃぃぃ…」

ハルト:

「なら善は急げだ、さっそく現実に帰ろう!」

グリモア:

「た…たすけて…」

ライゼ:

「諦めろ。」

アイシャ:

「覚悟するアル。」

サリュー:

「そんな都合のいい話は無いのよ? さぁ…行きましょ。」

グリモア:

「いやぁぁぁぁぁ!!!」


ーライゼの研究室

ライゼ:

「ん…ふぅ…ガッツリ寝ちまったか…」

アイシャ:

「…はっ…サリューは? 大丈夫アルか!?」

ハルト:

「やぁ、二人とも おはよう。」

サリュー:

「んっ…グリモアは…? どうなったのかしら?」

ライゼ:

「そうだ、あのクソ女! おいハルト! ヤツはどこだ!」

アイシャ:

「そうアル! まだ締め技を試してないアル! それは置いといて とにかく殴りたいアル!」

ハルト:

「いやぁ…すまん。

グリモア…逃がしちゃった…てへっ。」

アイシャ:

「はぁぁぁぁ!? 『てへっ』っじゃ無いアル! 可愛くないアル!

かくなる上は、ハルト…お前に締め技と 極め技のコンボを決めた後、病院まで殴り飛ばすの刑アル!」

ライゼ:

「…で? タダで逃がした訳じゃ無いんだろ? 当然?」

サリュー:

「…どういう事?」

ハルト:

「いやさ…お前ら運動不足かな…って思ってさ?

人ひとり殴って蹴って…それで満足かな…って。」

ライゼ:

(ニヤリ)「なるほど。」

アイシャ:

「ふぇ? ライゼどう言う事アル? ハルトを殴って良いアルか?」

ハルト:

「良いわけあるか!

…いやな…オレ 一足先に目覚めたからさ…グリモアの胃の中に発信機と便秘薬を流し込んでおいたのよ。」

サリュー:

「…と言う事は、今グリモアの居場所は…」

ハルト:

「はい、こちらの端末にバッチリ!」

アイシャ:

「じゃぁ 早速ブッ飛ばしに行くアル!」

ハルト:

「まぁ待てアイシャ。 このまま放置してればグリモアは自分のアジトに帰るだろ?

たまたま追いかけた結果、たまたま敵のアジトを発見して、たまたま壊滅させたとしても…問題ないだろ?」

アイシャ:

(ニヤリ)「…なるほど… やりたい放題アルね…」

ライゼ:

「新作兵器も試したい放題だ…くくく…腕が鳴る…」

ハルト:

「お前たちが全力で暴れたら街が壊滅するからな…敵アジトなら何の問題も無いと言うわけだ。

それに、便秘薬のおかげで 発信機が排出されるのは かなり先になるだろうからな…

…じっくり待とうじゃないか。」

サリュー:

「ハロウィンの オバケたちが怖かった私たけど…

この国の…この人たちの恐ろしさも なかなかのものよね…

多分だけど、今頃グリモアは こんな事を思っているんじゃないかな…」


ー逃走中のグリモア

グリモア:

「こんな国にケンカ売らなきゃ良かったぁぁぁぁ!!

許さんぞ! ライゼ・サンダースぅぅぅぅ!」



🎃おわり🎃