まばハロ×あぐ本企画【タングリスニ】
『マツリでドン』
作:Oroるん × りんりん
(2:1:3) ⏱60分
フーリ:
今日は一体何の集まりなの?
ディーゴ:
あんまり良い予感はしねえな。主催者が主催者なだけに。
テオ:
そして・・・いま僕たちの目の前に置かれている、この巨大なカボチャは一体・・・
ベリリ:
皆さん、お待たせ致しました。
フーリ:
いわくつきの主催者がお出ましだね。で、今度は私たちに何をさせようって言うの?
ベリリ:
それは、これです!
ディーゴ:
これは、本?
ベリリ:
そうです!これはタングリスニ領内にある古い地層から発掘されたものです!
テオ:
へえ、読んでも良いですか?(本に触れようとする)
ベリリ:
(キレながら)Don't touch me!!
テオ:
わっ!すいません!
ディーゴ:
あの、「Don't touch me!!」は、「私に触るな」って意味だからな?使い方間違ってるからな?
フーリ:
で、その発掘された本がなんなのさ?
ベリリ:
これは、私がかつて研究していた、ある古代文明の遺産に間違いありません。
ディーゴ:
古代文明?
ベリリ:
はい、その名を「古代ゲリベニヤ文明」と言います。
フーリ:
何か、嫌な響きだなあ。
ベリリ:
ゲリベニヤ文明では高度な魔法技術により繁栄を極めていました。この本は間違いなく、ゲリベニヤ文明によって書かれた魔導書です。
テオ:
魔導書・・・!
ベリリ:
その名も・・・「ベンピィ!」
フーリ:
だからネーミングがさ・・・
ディーゴ:
それ、本当に実在した文明なのか?なんか怪しいなあ。
テオ:
(ベンピィを読みながら)これ、なんて書いてあるんでしょう?さっぱり読めません。
ベリリ:
ちょっと、勝手に「ベンピィ」読まないで!
テオ:
アグホントにある言語では無いみたいですね。それよりも、この絵は・・・?
フーリ:
それは「絵」じゃなくて「写真」だね。マリシで見たことがある。実際の映像を映し出す技術だよ。
ディーゴ:
たくさん人が集まっているな。これは何をしているんだ?
ベリリ:
それは魔術の儀式です!見て下さい、民衆の姿を!
ディーゴ:
何だこりゃ?ゾンビやら吸血鬼やらミニスカメイドやら、みんな化け物じゃないか!?
フーリ:
最後の化け物かなあ?
テオ:
これがその儀式によって起こった現象なんですか?
ベリリ:
その通りです!皆、怪物に変えられてしまったのです!この「ハロウィンコ」の儀式によって。
ディーゴ:
うーん、ちょっとよく分かんないんだけど、「コ」は要らないんじゃないかな、「コ」は。
フーリ:
ん?ここの部分、顔に見えるけど、これはカボチャ?カボチャで作ったマスクか?
ベリリ:
フーリさん、良いところに気付きましたね。それは儀式に使用する魔道具です。
ディーゴ:
まさか、俺らの目の前に置いてあるこのカボチャで・・・
テオ:
カボチャのマスクを作れって言うつもりじゃ・・・
ベリリ:
テオさん、よく分かってるじゃないですか。
フーリ:
やっぱり。
ベリリ:
私はここに記された儀式を、何としても再現したいのです!
フーリ:
ホント、ロクなこと考えないよね。
ベリリ:
さあ皆さん、早速作っていきましょう!カボチャのマスクを!
テオ:
この大きなカボチャの中身をくり抜いて作るのか、大変そうだな。
フーリ:
何で私たちがそんなことしなきゃいけないの?
ディーゴ:
そうだそうだ、付き合ってられるか!
ベリリ:
ディーゴさん・・・
ディーゴ:
なんだよ?俺はもうアンタの命令なんかなあ・・・
ベリリ:
ノリ悪い。
ディーゴ:
へ?
ベリリ:
もうちょっとさあ、空気読んでよ。ここまで来たら、完全に「やる流れ」でしょ?
ディーゴ:
いや、それは・・・
ベリリ:
やってくれないとさあ、この物語ここで終わっちゃうんだよ?それで良いの?
ディーゴ:
・・・くそっ!やれば良いんだろ、やれば!
フーリ:
や、やるんだ・・・
クロナ:
何をゴソゴソしているんですか、博士。
ヴェル:
えぇ、別にぃ、探し物なんてしていませんよぉ。
クロナ:
何を探しているんですか、博士。
ヴェル:
心外ですねぇ、クロナ君。私が探し物なんてするわけないでしょうがぁ。
探すということはぁ、なくすということが前提になるのですよぉ。
この天才ギャギャギャリアン・ヴェルナヴァンドがぁ、何かをなくすことなどあり得ませんってぇ。
クロナ:
何をなくしたんですか、博士。
ヴェル:
研究用に拝借していた古代の資料がなくなるはずありませんってぇ。
クロナ:
なるほど。それは具体的にどのような?
ヴェル:
小さな石板ほどの冊子でぇ、カラフルな写真がたくさん載っているものなんてぇ、存在するわけないじゃないですかぁ。
クロナ:
博士。そろそろその面倒な言い回しやめませんか。
ヴェル:
はぁぁぁ。まったくぅ、どこにいってしまったんでしょうねぇ。
クロナ:
だから整理整頓をしろとあれほど。
石板ほどの大きさの本ですね。厚さは?
ヴェル:
クロナ君のメガネと同じくらいですかねぇ。
クロナ:
・・・見当たりませんね。
ヴェル:
あれがなくなったことが分かったらぁ、古代遺物研究所が騒ぎ出しかねませんよぉ。面倒ですねぇ。
クロナ:
無断で持ち出したんですか?
ヴェル:
人聞きの悪いこと言わないでくださいよぉ。
私には自由な研究が許されているんですからぁ。
許可をとる必要などハナからないんですぅ。
クロナ:
それで、何が書いてあるんです?
ヴェル:
まだ解読しきれていませんがぁ、ヘクセンケッセルについて書いてあるようだったのですよぉ。
クロナ:
ヘクション? 風邪ですか?
ヴェル:
クロナ君。耳までポンコツになったのですかぁ。
クロナ:
ポンコツじゃありませんっ!
ヴェル:
ヘクセンケッセルとはぁ、魔女の大鍋のことですよぉ。
クロナ:
はあ。
ヴェル:
おいしい鍋料理が食べられると思ったのですがねぇ。・・・あ。
クロナ:
え?
ヴェル:
そうでしたぁ。食糧庫で読もうと思って持っていったんでしたっけぇ。
クロナ:
食糧庫?
ヴェル:
実際に材料を確認しながらのほうがぁ、鍋への近道になるじゃないですかぁ。
クロナ:
人間の食への執着は分かりませんね。
ヴェル:
途中で実験のアイデアが湧いたのでぇ、その場を離れてぇ、そのまま他のことに夢中になっていましたぁ。
おなかがすいたので思い出したんですぅ。
クロナ:
ちなみに食糧庫に行ったのは?
ヴェル:
3日前ですねぇ。
クロナ:
・・・。とにかく行ってみましょう。
テオ:
『1時間後』
フーリ:
な、何とかできたね。
ディーゴ:
想像以上に大変だったな。あー、手が痛え。
ベリリ:
皆さん、お疲れ様でした。
テオ:
ところでベリリ殿下、くり抜いたカボチャの中身はどうするんですか?
ベリリ:
そんなの決まっています。食べ物を粗末はできませんからね。
フーリ:
ん?まさか、食べるとか言わないよね。
ベリリ:
言いますよ。
ディーゴ:
はあ?この量をか!?
テオ:
しかも生で?
ベリリ:
さあ皆さん、頂きましょう!
フーリ:
いや、それは・・・
ディーゴ:
(舌打ち)仕方ねえな、やってやらあ!
フーリ:
何でノリノリなのお?
ー間
テオ:
「更に30分後」
フーリ:
(苦しそうに)な、なんとかできたね。
ディーゴ:
(苦しそうに)想像以上に大変だったな。あー、吐きそう。
ベリリ:
皆さん、お疲れ様でした。
テオ:
(苦しそうに)これで儀式ができるんですか?
ベリリ:
もちろん!さあ、カボチャのマスクを被りましょう!
フーリ:
(マスクを被り)重っ。
テオ:
(マスクを被り)ハーハッハッハッ!我こそはパンキンマスクだ!
ディーゴ:
(マスクを被り)テオ、イライラするから辞めて?
ベリリ:
(マスクを被り)皆さん、マスクを被りましたね?それでは私に続いて、儀式の呪文を唱えてください!
ベリリ:
いきますよ?「テニ・ツイタラ・チャント・アラオウ!」
ベリリ以外全員:
「テニ・ツイタラ・チャント・アラオウ」
ー長めの間
テオ:
・・・何も起きませんね?
ベリリ:
馬鹿な!
フーリ:
起きるはずもないけどね。
ディーゴ:
ぐぉっ!
フーリ:
ディーゴ?
ディーゴ:
腹が、腹が痛え!
テオ:
お腹?・・・ぐっ!僕もだ!まさかディーゴさんの魔法じゃないよね?
ディーゴ:
そんなわけあるか!
フーリ:
そりゃあ・・・(腹痛を起こしながら)生のカボチャを大量に食べたから、お腹も壊すよね!
テオ:
(腹痛に苦しみながら)なんか前もこんなことあったような・・・
ベリリ:
皆さん、どうされたんですか?はっ!まさかこれが、儀式の効果?
ディーゴ:
違うわ!
テオ:
ベリリ殿下は平気なんですか?僕たちと一緒にカボチャ食べましたよね?
ベリリ:
いいえ、食べていませんよ。
フーリ:
へ?
ベリリ:
わたしカボチャ嫌いですし、しかも生でなんて。食べるフリして全部捨てました。
ベリリ以外全員:
はあーーー!?
クロナ:
やはり、もう食糧庫にはありませんでしたね。
ヴェル:
うむぅ、私としたことがぁ。
しかしぃ、あの冊子に書かれていることはぁ、この天才ギャギャギャリアン・ヴェルナヴァンドですらぁ、簡単には解読できそうにありませんでした。
誰かが持っていってもチンプンカンプンですよぉ。
クロナ:
なるほど。では、そのまま捨てられている可能性もありますね。
ゴミ置き場を見てみましょうか。
べリリ:
「テニ・ツイタラ・チャント・アラオウ!」
テオ、ディーゴ、フーリ:
「テニ・ツイタラ・チャント・アラオウ」。
クロナ:
ん?
ヴェル:
今、何か聞こえましたねぇ。
クロナ:
上の会議室Aですね。一体何を・・・。
ヴェル:
クロナ君、行ってみましょうかぁ。
クロナ:
はい。
*会議室A。皆、パンプキンマスクは外している。
フーリ:
はぁ、ひどい目にあったよ。
テオ:
僕、ディーゴさんの能力を初めて尊敬しました。
ディーゴ:
ああ? 初めて? また腹痛くなりたいのか?
フーリ:
いや、ほんとにすごいよ。
私の薬でもこんなすぐには回復しないさ。
ディーゴ:
ま、まあ、分かりゃいいんだよ。分かりゃ。
*ヴェルとクロナが入ってくる。
ヴェル:
どうもぉ、皆さんおそろいでぇ。
フーリ:
ああ、まためんどくさいのが来た。
べリリ:
博士、よいところへいらっしゃいました!
ヴェル:
べリリ殿下、ご機嫌麗しゅう。何やら気持ちの悪いものが並んでいますねぇ。
クロナ:
これは・・・生首!? べリリ様、どういうことですか!
ディーゴ:
ちげえよ、よく見ろ。そのメガネはお飾りか。
クロナ:
え・・・? ああ、カボチャ・・・ですか。
べリリ:
そうです! 聞いて驚きなさい!
我々は古代文明の魔術の儀式を復活しようとしていたのです!
ヴェル:
な、なんですってぇぇ。
べリリ:
見よ! これぞ、古代ゲリベニヤ文明によって書かれた魔導書「ベンピィ」!
クロナ:
・・・石板ほどの大きさの冊子? 博士、あれはもしや。
ヴェル:
おぉぉ! 噂には聞いていましたが初めて見ましたよぉ!
それが伝説の「ベンピィ」ですかぁ!
クロナ:
・・・博士?
ベリリ:
さすが、博士はご存じでしたか。やっと話が通じる人が来て嬉しいです。
ヴェル:
ぜひ読み解きたいと思っていたのですぅ。
ベリリ:
おお、おお、心強い。さあ、お近くへ! ともに読みましょう!
フーリ:
よかったね、殿下。あとは好きもの同士でってやつだ。私らはもうお役御免だね。
テオ:
そうですね。行きましょう。
ディーゴ:
ああ、腹痛(ハライタ)は治ったが出すもん出したいしな。
テオ:
黄色いのが出るんですかね。
フーリ:
テオ、汚い話はやめとくれ。
ディーゴ:
では、殿下。失礼します。
ベリリ:
クロナ君、ドアをふさいで誰もこの部屋から出さないように!
クロナ:
承知しました。
*クロナ、ドアの前に立つ。
フーリ:
ちょっとクロナ、そこをどいとくれ!
クロナ:
すみません。皇族の命令は優先事項ですので。
ディーゴ:
あたま硬いアンドロイドめ!
ベリリ:
さあ、みんなで知恵を絞りましょう。
ヴェル:
ところで殿下ぁ、先ほど不思議な呪文が聞こえましたがぁ、あれはなんなのですかぁ。
ベリリ:
「テニ・ツイタラ・チャント・アラオウ」!
これこそ「ハロウィンコ」の儀式の呪文です。
ヴェル:
ほぉぉ。
ベリリ:
この写真をご覧ください。
カボチャのマスクをかぶり、呪文を唱えると、このように! 皆が怪物に変わるのです!
ヴェル:
すごいですねぇ。
ベリリ:
民衆を怪物に強化する。これほど役立つ魔法はありません。
タングリスニの未来のためにもなんとしても成功させなければ!
ディーゴ:
あいつ、かなりやばいこと考えてるな。
フーリ:
国じゅう化け物だらけにするつもりかい? 勘弁しとくれよ。
テオ:
でも殿下、さっきは何も起きませんでしたよ。
ベリリ:
そうなのです! 皆さんのおなかが痛くなり、治したディーゴさんの株が上がっただけでした。
まったくの無意味! マイナスと言ってもいいでしょう!
ディーゴ:
おい!
ベリリ:
何がいけなかったのでしょうか。博士、ぜひ知恵をお貸しください。
ヴェル:
ふむぅ。考えられる要因は三つありますねぇ。
一つ、アイテム。一つ、参加者。一つ、呪文。
ベリリ:
というと?
ヴェル:
このカボチャのマスクが違うのかぁ、儀式に参加した人が違うのかぁ、唱える呪文が違うのかぁ、ですねぇ。
ベリリ:
なるほど。一つずつ検証していきましょう。皆さん、答えが見つかるまで帰れませんからね。
ディーゴ:
はあ。めんどくせえなあ。
フーリ:
しょうがない。ここは協力してさっさと解決するのが吉だね。
*テオ、カボチャのマスクを手に取り、眺める。
テオ:
カボチャ・・・頭・・・、どこかで見たことある気がするんだよなぁ。
・・・あ! はい、殿下!
ベリリ:
はい、テオくん。
テオ:
僕、似たような儀式が描かれた大陸外の絵を見たことがあります!
子どもたちが頭に野菜や果物を乗っけて、円になってイスに座った絵なんですけど、なぜか一つだけ椅子が足りないんです。
そして、カボチャ頭の子が1人、立っていました。
意味が分からなかったんですが、もしかしたらこの儀式を描いていたのかも!
ベリリ:
でかしました! となると、他の野菜や果物も必要ですね。クロナ君!
クロナ:
はい。
ベリリ:
食糧庫からありったけの野菜と果物を持ってきてください。
クロナ:
承知しました。
*クロナ、出ていく。
ベリリ:
では、待っている間に他の可能性も考えましょう。
フーリ:
うーん、そうだねぇ。
*フーリ、魔導書をパラパラとめくる。
フーリ:
この魔導書、文字はさっぱり分からないけど、写真を見ると子どもが多いみたいだね。
ほら、この吸血鬼もミイラも小さくてかわいいよ。
テオ:
本当ですね。これなんて子どもたちが手を出して「何かくれ」って言ってるみたいです。
ディーゴ:
そういや、さっきテオが見た絵も子どもだったって言ってたよな。
テオ:
はい。
ベリリ:
そうか! この儀式は子どもが行わないと意味がないのかもしれません。
皆さん、子どもを連れてきてください!
ディーゴ:
無茶言うな!
フーリ:
そうだよ。こんな訳の分からない儀式に子どもを巻き込むわけにいかないよ。
ベリリ:
チッ。じゃあ、クロナ君・・・はおつかい中でしたね。
ヴェル:
殿下ぁ、ご安心ください。
魔術の儀式で子どもを使うのはぁ、子どもの邪気のない精神が必要だからですぅ。
それはぁ、われわれ大人でも再現可能ですぅ。
ベリリ:
そうなのですか?
ヴェル:
はいぃ。われわれはみな、昔は子どもでしたぁ。
当時の感覚を呼び起こすのですぅ。
ディーゴ:
んなこと言ったって・・・。
フーリ:
ねえ・・・。
テオ:
やーいやーい! おまえの能力、ゲリベニヤ!
ディーゴ:
順応はやっ。しかも意味が分からん!
ヴェル:
皆さん、テオ君のように子どもになって自分を解放しましょう!
恥ずかしければこのマスクを被ればいいんですぅ。
皆さんならできます! さあ、自分を信じて!
テオ:
(マスクを被り)よーし! 我こそはパンプキンマスク!
芸術をけがす悪党は許さん! とおっ!
*テオ、ディーゴにチョップをする。
ディーゴ:
いてっ! 何すんだよ。クソッ、クソッ、クソッ!
ヴェル、マスクをよこせ!
ヴェル:
はい、どうぞぉ。
ディーゴ:
(マスクを被り)おまえも下痢にしてやろうか!
テオ:
正体を現したな、ゲリゲリ魔人!
このテオさまが成敗してくれる!
ベリリ:
わ、私にもマスクを・・・(マスクを被り)よいしょ!
ディーゴ:
誰がゲリゲリ魔人だ! 許さないんだからな!
テオ:
へへ、ここまでおいで! おしりペンペーン!
ディーゴ:
待て、逃げるな!
フーリ:
ちょっと、走り回ったら危ないよ!
ああ、もう! このマスク、重いんだよねぇ。
(マスクを被り)コラー! 静かにしないとダメなんだからね!
ディーゴ:
うるせえ! キツネババア!
フーリ:
なんですってぇ!
ベリリ:
私・・・、ぼ、ぼくも。ぼくも混ぜて・・・。
テオ:
フーリちゃん、一緒にたたかおう!
フーリ:
うん! くらえ! しっぽあたーっく!
ディーゴ:
うわぁ、もふもふするぅ!
ベリリ:
ぼくにももふもふ・・・。
テオ:
パンプキンこちょこちょ~! こちょこちょこちょこちょ。
ディーゴ:
ヒィ、や、やめろー! あははははは!
ベリリ:
ぼくも・・・ぼく、ぼく・・・ぅぅぅうううう、わーんわーん!
みんなだいっきらいだあ!!!
ディーゴ:
あははは、ベリリが泣いた、ベリリが泣いた! 泣き虫殿下~!
フーリ:
ちょっとぉ! 弱いものいじめはいけないんだからね!
*みんな、わちゃわちゃしている。
ヴェル:
いい感じですねぇ。
みんなぁ、そのまま聞いてねぇ。せーので言いますよぉ。
「テニ・ツイタラ・チャント・アラオウ」! はい、せーのぉ!
テオ、ディーゴ、フーリ、ベリリ:
「テニ・ツイタラ・チャント・アラオウ!」
*呪文を唱え続ける4人。クロナ、戻ってくる。
クロナ:
お待たせしました。野菜と果物を・・・。
テオ、ディーゴ、フーリ、ベリリ:
「テニ・ツイタラ・チャント・アラオウ!」
「テニ・ツイタラ・チャント・アラオウ!」
「テニ・ツイタラ・チャント・アラオウ!」
クロナ:
これは?
ヴェル:
クロナ君、ナイスタイミングですぅ。
クロナ:
皆さんが子どものように・・・!
ヴェル:
カボチャのマスクに少しだけ精神操作薬をたらしたのですが、効果抜群でしたねぇ。
クロナ:
すぐに元に戻ってしま・・・戻るのですよね。
ヴェル:
はいぃ。メガネARで楽しむなら今のうちですよぉ。
クロナ:
・・・ありがとうございます。
*クロナ、メガネのAR機能を立ち上げ、子ども姿のみんなを眺める。
クロナ:
ああ、幼いカボチャがいっぱい・・・尊い・・・!
ヴェル:
みんなぁ、今からお野菜と果物を配りますよぉ。
もらった人はマスクをとってくださいねぇ。
えーっと、リンゴはぁ、フーリちゃん。どうぞ。
フーリ:
リンゴ! おいしそうぉぉ。
ヴェル:
食べちゃダメですよぉ。さつまいもはぁ、ディーゴちゃん。はい。
ディーゴ:
ヤッタァ! お通じがよくなるぞぉ!
ヴェル:
ラ・フランスはぁ、テオちゃん。優しく持ってね。
テオ:
わぁ、珍しい果物だ!
ベリリ:
ぼくは? ぼくは?
ヴェル:
殿下はカボチャだからぁ、そのままですよぉ。
ベリリ:
えぇぇ! ぼくにもちょうだいよぉ。わーん!
*ヴェル、ベリリに耳打ちする。
ヴェル:
ベリリちゃん、みんなには内緒だけどぉ、実はカボチャが主役なんだよぉ。
ベリリ:
そうなの!?
ヴェル:
そうだよぉ。だから今は我慢しましょうねぇ。
ベリリ:
うん、わかった!
ヴェル:
クロナ君、ここに椅子を三つ、円形に並べてください。
クロナ:
ちょっと今無理です。目が離せませんので。
ヴェル:
はあ、仕方ありませんねぇ。
ベリリちゃん、クロナに命令してくれますか。
ベリリ:
うん。クロナ! 椅子を三つ持ってこい!
クロナ:
ちっちゃいカボチャが威張ってる・・・かわいい・・・!
はーい、すぐに持って行きますからね。
*クロナと博士、椅子を三つ円形に並べる。
ヴェル:
はーい。準備ができましたぁ。みんなぁ、お椅子に座りますよぉ。
フーリ:
ひと~つ、ふたーつ、みっつ。はかせ~、ひとつ足りないよ?
ヴェル:
そうですねぇ。じゃあ、早い者勝ちです。
お部屋のはじっこからヨーイドンで競争しましょう。
ディーゴ:
テオだけにはぜってえ負けねえ!
テオ:
僕だってディーゴには負けないぞ!
クロナ:
2人はライバルなの・・・!? ・・・好き!
ヴェル:
みんな並びましたねぇ。
競争前にお約束です。果物や野菜を持っているお友達は頭の上に掲げて走ること。
パンプキンマスクのベリリちゃんはそのままで大丈夫ですよぉ。
じゃあ、いきますよぉ、ヨーイ、ドン!
*走る(精神のみ)子どもたち。
ディーゴ:
うおおぉ、グンジンさんは速いんだぞ~!
テオ:
はあ、はあ、手を上にして走るの結構タイヘンだなあ。でも負けない!
フーリ:
ふっふっふっ。しっぽでバランスを取れるから楽勝だよ~!
ベリリ:
待ってぇ・・・カボチャが重くて・・・。
クロナ:
みんな、頑張って・・・!
ディーゴ:
(椅子に座って)いっちばーん!
フーリ:
(椅子に座って)2番かぁ。ディーゴ、早いねぇ。
テオ:
(椅子に座って)ちぇ、3番だ。でも座れたぞ!
ベリリ:
(円の真ん中で)はあ、はあ。疲れたぁ。あ、もう椅子がないじゃん!
ヴェル:
みんなぁ、そのまま呪文を唱えますよぉ。
「テニ・ツイタラ・チャント・アラオウ」! せーの!
テオ、ディーゴ、フーリ、ベリリ:
「テニ・ツイタラ・チャント・アラオウ!」
ー長めの間
ディーゴ:
なんも起きないじゃねえか!!!
ヴェル:
おっと、薬の効果が切れてきましたねぇ。
フーリ:
なんだかどっと疲れたよ。
テオ:
結構楽しかったですけどね。
ベリリ:
わーん! 僕も椅子に座りたいよぉ。
ヴェル:
クロナ君。殿下に椅子をあげてぇ、マスクを取ってあげてください。
クロナ:
えー。
ヴェル:
もうデータも採れましたぁ。
マスクを取ってもしばらくは子どもの精神のままですからぁ。
カボチャの下のお顔も見たいでしょう。
クロナ:
はい、ベリリ様、お椅子ですよ。
ヴェル:
早いですねぇ。
ベリリ:
クロナ、ありがとう。優しいね。
クロナ:
いいんですよ。ふふ、ふふふ。このカボチャも取りましょうね。
ベリリ:
うん。(マスクを外され)ふう、空気がおいしいや!
クロナ:
ああ、かわいい・・・!
フーリ:
にしても、子どもの心で呪文を唱えても駄目だったねぇ。
テオ:
アイテムもそろえたのに。
ディーゴ:
そもそも本当に人を怪物に変える魔術なんて存在するのか。
フーリ:
どうだろうね。
たとえあったとしても、そんな危険なものを復活させるのはどうかと思うよ。
ディーゴ:
元も子もねえな。
テオ:
でも、万一本当だったら、ベリリ様が手を出せないところにちゃんと封印したいですよね。
ヴェル:
そうですねぇ。今できる検証はしておきたいですねぇ。
*会議室A
ヴェル:
皆さん、お集まりのようですね。
ディーゴ:
またこのメンバーか。
フーリ:
嫌な予感しかしないんだけど。
テオ:
今日は何ですか、ベリリ殿下?
ベリリ:
いや、今回は私も呼ばれた側でして。
クロナ:
博士、今回の主旨のご説明を。
ヴェル:
そんなの決まっています。例の「ハロウィンコ」の儀式についてですよ。
フーリ:
またか。
ヴェル:
前回は失敗に終わりましたが、今度こそ上手くいくはずです。
ベリリ:
本当ですか!?
ヴェル:
ええ、「ベンピィ」の解析を進めた結果、正しい儀式のやり方が分かったんです!
ディーゴ:
また変ことやらされんじゃねえのか?
クロナ:
では皆さん、カボチャのマスクを被って下さい。
フーリ:
またか・・・
*ヴェル、クロナ以外マスクを被る
ベリリ:
被りましたが、これでどうすれば宜しいのですか?
ヴェル:
まず、「ハロウィンコ」の儀式を行う為には、「歌」が必要です。
ディーゴ:
歌!?
ヴェル:
はい。しかもただの歌ではありません。「ラップ」が必要なのです。
テオ:
ラップ?それ何ですか?
クロナ:
ラップというのは、リズムに合わせて歌詞を発声する歌唱法です。韻を踏みながら、ビートを刻むのが特徴です。
フーリ:
イン?ビート?
ヴェル:
ちなみに、このラップは「ヒデブ・ポップ」と呼ばれるジャンルになります。
クロナ:
「ヒップ・ポップ」です。博士、初心者にいきなりラップをさせようなんて、無理に決まってるじゃないですか。
ヴェル:
では、フーリさん、ビートの方お願いします。
フーリ:
はあ?えっ?はあ!?ちょっと待ってよ、ビートって何さ?
クロナ:
無茶ですよ、博士。
ヴェル:
皆さんが気持ちよくライムを決められるように、クールなリズムを刻んでください。
フーリ:
ライム?クール?さっきから訳のわからないことを・・・
ヴェル:
はい!(手を叩く)
フーリ:
ドゥンドゥンドゥンドゥンドゥンドゥン・・・
※以後、指示があるまでフーリはビートを刻み続ける。音は何でも良い。
クロナ:
急にビート刻み出した!なんで?
ヴェル:
さあ、軽快なラップを聴かせて下さい。誰からいきますか?
クロナ:
そんなの、誰もできるわけが・・・
ディーゴ:
YO!YO!俺の名前を知ってるか?D ・I ・E ・G ・Oディーゴ様だZE!
※フーリのビートには乗れてなくても良いです。
クロナ:
ディーゴさんも!?これは一体?
ディーゴ:
お前ら耳の穴かっぽじってよく聴きNA!ライムマスター、キング・ディーゴのゲリラップ!
クロナ:
・・・
ディーゴ:
布団がふっとんだー!
クロナ:
へ?
ディーゴ:
その鶏肉は取りにくい!この電話だれも出んわ!
クロナ:
それラップじゃなくてダジャレだよー!
ディーゴ:
隣の客はよく柿食う客だ!パスガス爆発!東京特許許可局!青巻紙赤巻紙黄巻紙!FUー!
クロナ:
最後の方、早口言葉じゃん!ダジャレですらないじゃん!
テオ:
ヘーイ!(ディーゴとハイタッチ)YO!YO!チェケラッチョウ!僕はテオ!フロウの帝王!聴きたいか?イカしたリリック!
クロナ:
テオさんまで。まさか・・・
テオ:
僕のラップでgo to heaven!行くぜ最高のショータイム!
クロナ:
・・・
テオ:
海鮮丼と海鮮丼!飛魚は飛魚だー!
クロナ:
はあ?
テオ:
本日は晴天なり!本日は晴天なり!カツオのたたき!カツオのたたき!
クロナ:
この人同じ言葉繰り返してるだけだよー!ダジャレより酷いよー!
テオ:
あーあー、いーいー、うーうー、えーえー、YO!
クロナ:
最後の方、適当になってるじゃん!もうヤケクソじゃん!
ヴェル:
どうやら成功のようですね。
クロナ:
いや、かなり失敗に思えますけど・・・
クロナ:
博士、もしかしてこれは、例の精神操作薬ですか?
ヴェル:
はあい!前回同様、カボチャのマスクに仕込ませて頂きました。さっきのように手を叩くと、皆さん催眠状態になってしまうのです!
ヴェル:
ご覧の通り、突然ラッパーにしてしまうことだって、造作もないのです!
クロナ:
誰一人として、ラッパーになれてませんけどね。
ベリリ:
YO!YO!YO!次は任せな!聞かせてやるZE!皇族ラップ!
クロナ:
一番期待できない人が出てきたなあ・・・
ベリリ:
ヘイヘイ!アゲていこうZE!put your hands up!
クロナ:
・・・
ベリリ:
私は皇族、物を盗むのは、と、盗賊。えーと、遺産は相続。火をつけるのは、ロウソク?
クロナ:
うわあ・・・この人は純粋にラップが下手だあ。
ベリリ:
ハロウィンコ、昔飼ってた黒インコ。成功させよう、ま、魔法の儀式、必要なのは多少の知識。
ベリリ:
大きなパワーで、高貴なアワー(時間)ゲットだZE!FUー!
クロナ:
・・・なんか、変な空気になっちゃいましたね。
ベリリ:
YO!YO!次はお前の番だYO!
クロナ:
わ、私!?嫌ですよ!
テオ:
文句ばっか言ってねーで、さっさとぶちかませ、てめーのラップ!
ディーゴ:
聞かせてみろよ、お前のリリック!
ヴェル:
クロナさん、お手本を見せて差し上げなさい。
クロナ:
いや、シラフでこのノリはキツいんですけど・・・
ヴェル:
あ、貴方は普通に上手にラップしてくれて良いですからね?
クロナ:
嫌な圧のかけ方!
ディーゴ:
YO!YO!YO!YO!
クロナ:
こんな無茶ブリ、マジ久しぶり、私のラップ、正にトップ・オブ・トップ、分からせてやるYO格の違いを!
クロナ:
ここはアグホント、見極めろウソホント、4つの国家と4つの種族、MAJERな賢者、居なくなってDANGER、闘争に錯綜、駆け引きにため息、混沌の大陸、統一目指せ、yeah!
ヴェル:
(拍手しながら)ブラーボ!皆さん、とっても素晴らしかったですぅ!
クロナ:
恥ずかしい、もう帰りたい。
ヴェル:
あ、フーリさん、もうビート辞めて良いですよ。
フーリ:
ドゥンドゥンドゥン、ようやく辞められるのかYO!色んな意味で辛かったYO!
フーリ:
それから、ちょっと私もラップやりたかったYO!
ー少し間
ディーゴ:
ヘイメーン、これで儀式は終わりなのかYO!
ヴェル:
いえいえ、これは儀式の第一段階です。
クロナ:
第一段階?
ヴェル:
儀式の完成には、もう一つ、やらなければらならいことがあります。
テオ:
チェケラッチョウ!次は何をするんだYO!
ヴェル:
前回のことを思い出して下さい。皆さん、子供になって儀式に臨みましたよね?
ベリリ:
それがどうしたんだYO!
ヴェル:
あれ、実は逆だったんです!
クロナ:
逆?
ヴェル:
子供ではなく、老人になるのが正解だったのです!
クロナ:
老人って・・・
ヴェル:
というわけで、これから皆さんには、ちょっと老人になってもらいます。
ディーゴ:
YO!YO!そんな事急に言われても・・・
ヴェル:
はい!(手を叩く)
*以降、ディーゴ、テオ、フーリ、ベリリは老人口調(特にディーゴとテオは、できるだけゆっくり話して下さい)
ディーゴ:
できるわけないじゃろて。
クロナ:
歳取ったー!
テオ:
いつもワシらをコキ使いおって。
クロナ:
テオさんも・・・
フーリ:
フガ、フガフガフガ、フガフガフガフガフガ!
クロナ:
このおばあちゃんフガフガ言ってるー!入れ歯忘れてるー!
クロナ:
今回フーリさんの扱いひどいー!
ベリリ:
あんだってー?
クロナ:
ベ、ベリリ殿下?大丈夫ですか?
ベリリ:
あんだってー?
クロナ:
このおじいさんは耳が遠いんだなあ。・・・楽しようとしてるな?
ヴェル:
皆さん、前回同様椅子を取り合ってもらいますが、今回の椅子は一つです。
テオ:
はえ?
ヴェル:
見事、椅子に座れた方が、呪文を唱えることで儀式は完成します!尚、前回は呪文も若干間違っていましたので、正しい呪文をお教えしますね。
クロナ:
これ、どうなるんだろう?
ー間
ヴェル:
では、儀式最終フェーズ、スタートです!
ディーゴ:
うおお、ワシが勝つぞい。
テオ:
勝つのはワシじゃあ。
フーリ:
フガフガー
ベリリ:
あんだって?
クロナ:
・・・みんな、動きがスローだなあ。
ディーゴ:
よし、ワシが一番じゃあ。
テオ:
させるか、その椅子は、ワシのもんじゃあ。
ディーゴ:
やるかあ?
テオ:
望むところじゃあ。
ディーゴ:
でりやあああああ・・・
テオ:
ぐわああああ・・・
クロナ:
攻撃もやられるのもゆっくりだなあ。
フーリ:
フガフガ
クロナ:
ああっ!二人がもたついてる間にフーリさんが椅子に。
ディーゴ:
なあんじゃとう?
テオ:
しまったあ。
フーリ:
フガー
ヴェル:
さあ、フーリさん!呪文を!
フーリ:
フガ、フガフガフガフガ、フガガ、フガフガー
クロナ:
ダメだあ、何言ってんのかさっぱりわかんない!
フーリ:
フガ?
クロナ:
ベリリ殿下?ベリリ殿下はどうしたの?
ベリリ:
・・・あんだって?
クロナ:
一歩も動いてないー!
ヴェル:
そもそもルールを把握していないようですね。
クロナ:
やはりディーゴさん、テオさんが頼りか。
ディーゴ:
(いびき)
テオ:
(いびき)
クロナ:
二人とも寝てるー!
ヴェル:
ご老人は、早寝ですからねえ。
クロナ:
どうしよう、このままじゃ収拾つかないよ!・・・ハッ!もしかしたら!
クロナ:
(手を叩き)フーリおばあちゃん、入れ歯が届きましたよ!
フーリ:
フガ?フガフガ?(入れ歯をはめるジェスチャー)はて?
ヴェル:
クロナさん、ナイスです!さあフーリさん、呪文を!
フーリ:
まかせんしゃい!
フーリ:
「マダ・ニオッテタラ・モウイチド・アラオウ!」
ー間
ディーゴ:
何も起きないじゃねえか!
クロナ:
あ、戻った。
ヴェル:
薬の効果が切れたようですね。
テオ:
僕たちの苦労は何だったんですかあ?
ベリリ:
博士、どういう事ですか?「ベンピィ」を解析したんですよね?なのにどうして上手くいかないんですか?
ヴェル:
解析?そんなことしてませんよ。
フーリ:
は?
ヴェル:
私はただ、精神操作薬のテストがしたかっただけです。
ディーゴ:
じゃあ、さっきの一連の儀式は?
ヴェル:
私が適当に考えた、嘘です。
ー間
ヴェル以外:
はあー!?
ヴェル:
皆さん、テストにご協力頂き、ありがとうございました。
ディーゴ:
てめえふざけんな!
ベリリ:
くっ!博士にまんまと踊らされました。
クロナ:
結局、「ベンピィ」に書かれていた内容は、分からずじまいですね。
ヴェル:
いいえ、それなら最初から分かってます。だって私、あの本読めますもん。
ー間
ヴェル以外:
はあー!?
フーリ:
どういうこと?
ヴェル:
マリシにいた時に、異世界と交信する実験に参加したことがありまして、異世界の言語についても、ある程度知見があるんですよ。
ベリリ:
異世界?
ヴェル:
ええ。パラレルワールドってご存知ですか?あなた方が「ベンピィ」と呼んでいるあの本は、ここによく似た、別の世界の書籍なんです。
クロナ:
異世界なんて、本当にあるんですか?
ヴェル:
マリシでは昔から異世界の研究が盛んでしてねえ。実際に異世界に行った者も、異世界人をこちらに呼び込んだこともあるそうです。
ベリリ:
その異世界の書籍が、何故古代の地層から?
ヴェル:
はるか昔にも、あったのかもしれませんねえ。異世界との交流が。
ベリリ:
じゃあ、古代ゲリベニヤ文明は・・・
ヴェル:
実在しないと思いますよ。私も聞いたことないですし。
ベリリ:
そんな!
ディーゴ:
エセ情報に振り回されてたってことか。
クロナ:
実際には何が書かれていたんですか?
ヴェル:
祭りですよ。
フーリ:
祭り?魔術の儀式じゃなくて?
ベリリ:
でも、人が化け物に変わっていたじゃないですか?
ヴェル:
あれは本当に化け物になっていたわけじゃありません。人間が仮装していただけです。
テオ:
そうなんだ・・・
ヴェル:
あの写真の場所は、異世界で「ジャポーン」という国の「シーブヤ」という街です。そこにある「スクランブル交差庭園」で撮られた写真ですね。
ディーゴ:
あそこ、庭園なのか。全然そんな風に見えなかった。
ベリリ:
(ため息)時間を無駄にしました。
テオ:
まあ、異世界のことが知れたのは良かったです。偽物の儀式も、何やかんや楽しかったですし。
ディーゴ:
それは・・・まあ、そうかもな。
フーリ:
私は、あんまり楽しくなかったなあ・・・
クロナ:
そういえば博士?
ヴェル:
なんですか?
クロナ:
あの儀式・・・じゃなくてお祭りには名前があるんですよね?まさか「ハロウィンコ」じゃないでしょう?
ヴェル:
もちろん。まあ、かなりニアピンですがね。
クロナ:
なんていうお祭りなんですか?
ヴェル:
その名も・・・
クロナ:
その名も?
ヴェル:
「大阪天神祭り」!
クロナ:
何でやねん!
🎃おわり🎃
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