『ペットショップ』 作:おちり補佐官

【CHARACTER】

イシル:種族はエサソン。幼女。キノコが大好き。ペットのこぶたが欲しくて、姉(エイシル)と共に「森の都」と呼ばれる異種族によって構成される街におでかけしている。口癖は「はにゃ~」

エイシル:種族はエサソン。キノコが大好き。妹(イシル)を連れて、初めて「森の都」へやってきた。

コナー:種族はガンコナー。瞬間移動ができる。煙草を吸って「森の都」の入り口に居る。狙った口説き相手に合わせて、役職を変えることが多い。しかし、相手が惚れたと勘づけば、それ以降は二度と姿を見せない。


【STAGE】

森の都:色んな種族が一同に集まる街。およそ人間社会にあるものに近いものが全てある。行き方は、各所森に点在する、妖精や妖怪にのみ感じ取れるポイントを通過すること。しかし、行ったり来たりしながらでないと入ることが出来ないため、見えているより遠い。うまくポイントに達すると、霧に包まれ、進むと森の都のはずれに出る。ガンコナーに惚れた者たちが、再度彼に会おうとして、多くの種族が集まったという噂がある。



【STORY】

『コナーズ、ズー』(コナーの動物園)


0:エサソンの姉妹、イシルとエイシルは森のなかを歩いている。


イシル:お姉ちゃん、もう疲れたよぉ。

エイシル:イシー、ペットが欲しいって言ってたのはどこのだあれ?

イシル:んむー。それはわたし......だけど。でもでも! 森の都までこんなに遠いって思ってなかったの! 入り口だって、すぐそこだって、みんな言ってたもん!

エイシル:そりゃ、目標地点は見えてるけどね。家出るときにも言ったけど進んで戻ってを繰り返しながら進まなきゃ到達できないの。だから、思ってるより時間もかかるし疲れるのよ。

イシル:ちぇー。

エイシル:ほら、がんばれがんばれ。

イシル:......ねえ、エイシルお姉ちゃん。

エイシル:なあに?

イシル:なんだか、霧が深くてよく見えないよ。

エイシル:そうね。ほら、手をつないで。もうすぐ着くわよ。種族を超えた魔法の森。森の都はすぐそこよ。

イシル:う、うん。

エイシル:もうすぐだからね。


0:二人は霧を抜け、森の都へと到達した。まだ森の都のはずれで、木々が繁っている。しかし、先ほどまで歩いていた森とは違い、気がつくと若干舗装された道を歩いている。


エイシル:......ふぅ。

イシル:はにゃ~! 抜けた~!

コナー:......。お?

イシル:わ! お兄ちゃん! お口から霧がでてるよ!

コナー:霧じゃないよ。キノコのお嬢ちゃん......と、貴女は......。

エイシル:こんにちは。私はエサソンのエイシル、そして妹のイシルよ。

イシル:はにゃ~。

エイシル:ほら、挨拶して。

イシル:ん! イシル! です! 好きな食べ物は、キノコ! 好きな言葉は、馬は四つ足でも転ぶ!

エイシル:イシル、言葉の意味わかってないでしょ。

イシル:おうまさんかっこいいよねって意味じゃないの?

エイシル:足がたくさんあっても転ぶことがあるから、二本足の私達はもっと気をつけなきゃってことよ。

コナー:おうおう。そうだよ、イシルちゃん。よろしく。そして、エイシルさん! 俺はガンコナーのコナーさ。好きな言葉は一期一会だよ。

イシル:イシルも苺すき!

コナー:はははっ、そりゃよかった!

エイシル:コナーさん......その、ガンコナーって?

コナー:ん? 知らないのか。まあ、別にただの種族名さ。気にしないでおくれ。貴女のエサソンってのはキノコが好きな妖精の一族だったか?

イシル:そうだよー! どうしてお兄さんはイシル達のこと知ってるの?

コナー:そりゃあ森の都の入り口でいるからな。色んなのと出会うのさ。

イシル:しゅごいねえ、お兄さん! 口から霧も出せるし! かっこいいー!

コナー:ははっ、ありがとうな。イシルちゃん。これは煙草っていうんだよ。

エイシル:イシル、あんまりお兄さんに迷惑かけちゃだめよ?

コナー:いやいいんだよ、エイシルさん。今日は? どんな用事でここに来たんだ?

エイシル:えと、今日は。

イシル:お姉ちゃんとねー! ペットショップにいくのー!

コナー:なるほど。どんなのが欲しいんだ?

イシル:んー、ちっちゃな、こぶたちゃん!

コナー:キノコを探してくれるような?

イシル:うん!

コナー:そりゃあいいなあ。

エイシル:ところで、コナーさん。私達、森の都は初めてなんです。

コナー:おや、そうなのか。なら、その説明からかな? ここは森の都の入り口。森の都には、他にも色んな種族が集まってくる。

イシル:へぇ! 例えばどんなー?

コナー:魔法を使う猫のケット・シー、客引きをしては注意を受けるシーオーク、首から上がとれてるデュラハーン!

イシル:ひっ、怖いよ。

コナー:大丈夫大丈夫! むしろ俺の知ってるデュラハーンは、あいつのほうがビビりなくらいさ! かっこいい馬だって飼ってるんだぜ。

イシル:そ、そうなの? おうまさんが怖がってないかなぁ。

コナー:ははは、イシルちゃんは優しいな。他にも、変身が得意なプーカだったり、いっつも機械をめちゃくちゃにしちゃうグレムリンがいるんだよ。

エイシル:そんなに色んな種族がいらっしゃるんですね。見たところ、ただの森ですのに......。

コナー:いやいや、ここはまだ入り口だからさ。奥に進めばコンビニも飲み屋も、車の教習所だってあるのさ! あとは遊園地にゲームセンター! 色んな種族が集まるが故に、皆の社交の場になっているんだ。なかにはここを気に入って移住してるやつもいるくらいさ!

エイシル:そんなに広いなら、困りましたね......。

コナー:どうしたんです? エイシルさん。

エイシル:実は今日はペットショップを探していて......。場所はご存知でしょうか?

コナー:ペットショップ?

イシル:こぶたちゃん、欲しいの。もしかしてお店ないのかなあ。

エイシル:うーん。森の都はなんでもあるって噂だけで来ちゃったから......。

コナー:......ここだよ。

エイシル:ここって?

コナー:ここは、ここさ! ようこそ、ペットショップ『コナーズズー 森の都支店』へ

エイシル:もしかして! コナーさんが経営してらっしゃるんです?

コナー:そうとも! どんな動物だろうが、どこからでも取り寄せてみせる!

エイシル:よかったぁ、ここからまた探さなきゃと思ったいたから......。

イシル:だね、お姉ちゃん! もう私も歩きたくないもーん!

エイシル:コナーさん、見学できる動物はどこに?

コナー:ん、ああ。ショップはここなんだけど、動物は要望があってから用意するんだよ。じゃないと、管理が大変だからな。

エイシル:困りましたね。なら、また出てこないとダメなのですか?

コナー:ちょっと待っててくれれば、すぐに連れてくるよ。

イシル:そんなことできるの? お兄さん。

コナー:あぁ。ただな。一つだけ条件があるんだ。これはお代として考えてくれてもいい。

エイシル:あまり持ち合わせは多くなくて......。

コナー:いや、金の話じゃない。

イシル:何がほしいの? お兄ちゃん。

コナー:エイシルさん、俺と一緒になってくれないか

エイシル:......え?

コナー:貴女じゃなきゃダメなんだ。

イシル:どういうことー?

エイシル:イシル、えと、なんて言えばいいかしら。

コナー:結婚を、してほしいんだ。

エイシル:いや、え。え! そんな別種族ですし!

コナー:関係ない。

エイシル:わ、私、え。

イシル:お姉ちゃんも、もう気になってるんじゃないの?

コナー:なら、いいか? エイシルさん。

エイシル:は、はい......。いや、でも、なにも知らないので、お友達からで!

コナー:わかりました。友達からで! さて、では、こぶたちゃんを連れてきてみせましょう。

イシル:わー! お姉ちゃんおめでとうー!

エイシル:こらイシル! まだ結婚しないってば!

イシル:はにゃ~!

コナー:んじゃ、行ってくるよ。エイシルさん。

エイシル:は、はい。気をつけて。

コナー:うん。

エイシル:いってらっしゃい......。

コナー:いってきます!

0:コナーは瞬間移動で消え去る。

イシル:わ、コナーお兄ちゃん消えちゃった!

エイシル:どこいっちゃったのかしら......。

イシル:疲れたし、ちょっと休憩しよ~?

エイシル:え、ええ。

イシル:......お姉ちゃん?

エイシル:ん? なあに?

イシル:お菓子たべたいなぁ。

エイシル:え? ああ! お菓子ね! はい、どうぞ。

イシル:やったー! ありがとう!

エイシル:......。

イシル:ねぇ、お姉ちゃん!

エイシル:どうしたの?

イシル:あそこにいる、こぶたちゃんにもお菓子あげていーい?

エイシル:こぶた?

イシル:それからねー、キノコと苺も置いてあるよー! これ食べていいのかなあ。ぜーんぶ私の好きなものばっかり!

エイシル:......。そうね。

イシル:きっとコナーお兄ちゃんが持ってきてくれたんだね。でも、どこいっちゃったんだろ?

エイシル:わからないわね。折角、友達になれたのに。

イシル:うーん。けど、お姉ちゃん。もう帰ろうよー。こぶたちゃん連れて帰ろうよー。

エイシル:はいはい、わかったわ! いくわよ! コナーさんには、また今度お姉ちゃんがお礼言いに来なきゃだね。

イシル:うんー! かっえっろー! わぁー! 苺もおいしー!

エイシル:もう、イシルったら


0:二人は、また霧の中に入っていく。


エイシル:(M)それから私は一週間ごと、森の都へ向かって、コナーさんを探しました。ペットのお礼を言うため......というのは建前で。コナーさんのことをもう少し知りたくて。けれど、何度来ても何度来ても、彼には会えずじまいです。森の都の噂によれば、ガンコナーという種族は、相手を口説くだけ口説いて、そのあとで姿をくらましてしまうそうです。しかしながら、霧の入り口を抜けるとき、確かに香るのです。霧に混じって、ガンコナーの煙草の匂いが。

エイシル:コナー。貴方は、最高で最悪の男ね。ガンコナー。そうやって、森の都を賑わせているのね。