『運転免許』 作:てまり

【CHARACTER】

プーカ  

デュラハン  

リャナンシー  

  

【STORY】


プーカ:は?免許が欲しい?

デュラハン:そっ、そうですごめんなさい!

プーカ: いやなんで謝るんだよ

デュラハン:あ・・・条件反射で、つい・・・

プーカ:日常会話で、条件反射に謝るとかすげーな、おい

デュラハン:あ、ありがとう・・・

プーカ:いや褒めてねーよ??

リャナンシー:あら、珍しい組み合わせやねぇ

プーカ:おう、リャンか

リャナンシー:リャナンシーと呼びなんし

プーカ:名前長ぇんだよ

リャナンシー:長いと言うほどでもないやろ。それで?

プーカ:あーなんかなぁ、デューが免許が欲しいんだってよ

リャナンシー:何の?

プーカ:くるま

リャナンシー:それはまた唐突やねぇ。大好きな愛馬ちゃんはどうしたん?

デュラハン:あ、えっと・・・その、コシュちゃん・・・怪我しちゃって・・・

リャナンシー:あれま。大丈夫なん?

デュラハン:うん、大丈夫・・・ぬかるみに足を取られて転んだ先で、柵に体当たりして転倒しただけだから・・・

プーカ:結構大ごとじゃね?

リャナンシー:せやねぇ・・・というか、あのお馬さん「コシュちゃん」って名前やったんや。初めて知ったわ

デュラハン:あ、ううん。名前は、ないの

プーカ:んぁ?

デュラハン:僕が乗っててコシュちゃんが引いてる馬車の名前が「コシュタ・バワー」っていうの

リャナンシー:ふぅん?それで?

デュラハン:僕と馬車は名前があるのに、コシュちゃんだけ名前ないの可哀想だから、そう呼んでるの

プーカ:別に「馬」でいいじゃん

デュラハン:だだだだめだよ・・・いつも一緒にいるんだもん、もっと仲良くしたい

リャナンシー:まぁ愛称をつけるのは良いことやけどねぇ

プーカ:あ、そうだよ。だから、お前は「リャン」

リャナンシー:つい数分前に言ったこと、忘れとるんかえ?

プーカ:ちっ(舌打ち)

リャナンシー:全くアンタって子は・・・それで?コシュちゃんの怪我が治るまでは、車で移動できるようにするってことやの?

デュラハン:うん・・・どうせだったら、これからはコシュちゃんを車に乗せようかなって・・・

プーカ:どゆこと?

デュラハン:車に乗ったら、ぬかるみに足を取られることもないし・・・一緒にドライブして、ピクニックとか、いいよね・・・

リャナンシー:初々しいデートコースやねぇ、羨ましいわぁ

プーカ:いや違ぇだろ!デュラハンなんだから、馬に馬車引かせてなんぼだろうがよ!

デュラハン:だめかな・・・?

プーカ:別に俺は構わないけどな?でもお前それ、デュラハンじゃねぇよ。ただの首なしドライバーだよ

リャナンシー:それって、新種のモンスターってことになるんやないの?いいやないの、パナソニックやわぁ

プーカ:パイオニアな?それ家電メーカーだから

デュラハン:パイオニア・・・先駆者・・・

プーカ:あ?どうしたよ

デュラハン:先駆者、いいね・・・!特に「駆」っていう字にときめきを感じる!!

プーカ:あぁ、そうだろうなぁ!「馬」って入ってるからだよ、それ!!

デュラハン:僕、教習所いってくるね・・・!

リャナンシー:はいな。いっといでぇ~

 

(間)

 

デュラハン:ただいま・・・

リャナンシー:おかえり・・・って、どしたん?悲し気な肩してからに

プーカ:それもまた珍しい表現だな。顔ねぇもんな

デュラハン:顔あるよ。こっちも悲し気

プーカ:うん、そこはどーでもいい。んで?何かあったのか

デュラハン:うん・・・車の免許とれないって・・・

リャナンシー:あれま。なんでやの?

デュラハン:「頭が定位置に固定できない状態で運転させるのはちょっと・・・」だって・・・

プーカ:・・・そりゃたしかにそうだ。つーか、お前も馬も顔ないのに、よく走れるよな

デュラハン:・・・考えたことなかった

リャナンシー:しかし困ったねぇ。これじゃしばらく、デュラハン業はお休みかね?

プーカ:なんだ、デュラハン業って。まぁたまには、馬に乗らずに歩いてみるものいいんじゃねぇの?

デュラハン:でも僕・・・デュラハンなのに・・・

プーカ:馬乗せるために車の免許とろうとしてたヤツが言うんじゃねぇ

リャナンシー:まぁ何にしろ、移動手段に徒歩はちょっときついんじゃないかえ?今までがずっとお馬さんに乗ってたんやし・・・

プーカ:もうこの際、首がとれてれば、馬じゃなくてもいんじゃねぇか?

デュラハン:え・・・どういうこと・・・?

プーカ:だからさぁ、別に乗れる動物は馬以外にもいるだろ?牛とかさぁ

デュラハン:牛・・・それはもう、デュラハンじゃなくない・・・?

プーカ:だぁから、馬乗せるために車の免許とろうとしてたヤツが言うなって

デュラハン:せめて、もうちょっと速そうな動物が良いな・・・

プーカ:・・・お前、ビビりの割には結構はっきり言うんだな

デュラハン:さすがにデュラハン業のことだから・・・

リャナンシー:乗れそうな動物ねぇ・・・羊とかだと厳しいんかねぇ?

プーカ:お前、話聞いてた?どこが速そうなんだよ

リャナンシー:いいやないの。羊可愛いし、美味しいし

プーカ:食う気なの!?

デュラハン:・・・コシュちゃんの怪我が治ったら用無しだし、確かに食べるのはアリ・・・

プーカ:お前もかい!てかなんで俺、こんなツッコミしてんの!?俺、一応「性格悪い」ってことになってんだよ!全うさせてくれよ!!

リャナンシー:どうせ食べるんやったら、もう地上に拘らなくても良いかもねぇ

プーカ:は!?

リャナンシー:鷲とかどう?食べられないけど最悪・・・あ。

デュラハン:・・・リャナンシー、どうしたの?

リャナンシー:プーカ

プーカ:・・・なんだよ

リャナンシー:あんた、動物に変身できるやんな?

プーカ:・・・できるけど

リャナンシー:鷲と、黒山羊と、あともう一つ。何やった?

プーカ:・・・黒馬

デュラハン:馬!?プーカ、馬に変身できるの!?

プーカ:できるけど・・・それがなんだよ

デュラハン:なぁんだぁ・・・悩む必要なかったんだね。プーカ、よろしくお願いします

プーカ:はっ!?

リャナンシー:ほーんと、なんで忘れてたんやろねぇ。プーカがコシュちゃんの代わりをすれば良いだけやないの

プーカ:何勝手に・・・!

デュラハン:あ、安心してね?プーカを食べたりしないから

プーカ:そこじゃねぇ!

リャナンシー:なんやの、さっきからギャーギャーと

プーカ:ふっざけんな!なんで俺がデューに乗られなきゃなんねーんだ!!

リャナンシー:何ゆーてんの。モンスター仲間の一大事やろ?助け合わな

デュラハン:大丈夫だよ!僕、お馬さんに乗るの上手いから!デュラハンだし!

プーカ:お前が日頃乗ってんのは馬車!馬ではない!!

デュラハン:馬も馬車も似たようなものだよぉ

プーカ:んなわけあるか!

リャナンシー:まったく・・・手のかかる子やねぇ。ほら、デュラハン。押さえつけててあげるから、さっさと乗ってしまい?

デュラハン:リャナンシー、ありがとぉ

プーカ:っ!!はーなーせぇぇぇぇぇぇ!!



<完>