『百物語』 作:藤村 最


『百物語』

投稿者:S


 ある時ちょっとしたノリで百物語をしようって話になったんです。 

 でも、怪談話100個なんて早々簡単に集まらないじゃないですか。

 怖い話をするっていったって、実体験とかにしぼると一人でそんなにいくつも出てくるものじゃないし。

 じゃあってことで、配信サイトを使ってリスナーから話を集めようってことになったんですよ。

 コラボ機能を使って、怖い話を直接その場で話してもらおうって……。

 あ、その時、わたしともう一人、Kさんって人と二人でやってたんですけど。

 思い付きの行き当たりばったりな企画だし、もし全然人来なかったら適当にネットから拾ってきた話でもしてようかぁなんて言ってたんですよね。

 けれど、それが思った以上に来てくれる人がいて……。

 しかも皆さん台本読んでるわけでもないのに、話がすごく上手で、知ってる人も初見の人も、流れが途切れることもなく、順番に話してくださったんです。

 まぁ、結局、わたしとKさん、二人共そういう企画慣れてなかったし、ついつい質問しちゃったりとかして、30話しかいかなかったんですけど。

 企画としては大成功だなぁって。

 話してくれた皆さんに「感謝!」って感じでした。


 ただですね……やっぱり百物語ってちょっと儀式めいたとこがあるからか、皆さんのお話が実体験だったからこそなのかはわからないんですけど……。

 配信時間の都合もあって、30話しか出来なかったとはいえ、怖いことというか……そういうのがあったんですよねぇ。


 その配信をしてる時、知り合いからLINEがきたんです。

 『今日21時くらいから、なんか怪談とかしてる?』

 その知り合い霊感が強い人だったから、いきなりLINEきた時はビックリしたんですけど、配信中だったんで、

 「あれ?百物語のこと言ったっけ?」

 とか思いながら、通知だけ見て放っておいたんです。

 でも、また数分後に同じ人からLINEがきて、通知のポップアップの範囲でしか見えなかったんですけど、

 『日の出まで絶対外に出るな!』

 って書いてあったんです。

 わたしなんか怖くなっちゃって、もう結構長い時間配信もしてたんで、そろそろ終わりにしようって促したんです。

 あ、勿論配信上ではその話はしなかったですよ。だって、ちゃんと内容確認できてないのに、変なことも言いたくなかったし。

 だけど、それからも数分置きにLINEが来て……。

 いくら自分で蒔いた種とは言え、夜中で時間も遅いし、怖いから、配信が終わった後、とりあえずKさんに連絡したんですけど……。

 そうしたら、Kさんが

 「実は、なんか途中で玄関のほうで嫌な感じして、見に行ったんだよねぇ」

 とか言い出して、恐る恐る

 「それ、何話目?」

 って訊いたら、

 「27話目くらいかなぁ」

 って返ってきたんです。

 わたしそれ聞いて、もう居ても立っても居られなくなって、KさんにLINEのこと話したんです。

 だって……LINEに書いてあったんです。

 これこれこういう話がヤバいから注意しろって……。

 それが正にKさんの言う27話目の話だったんです。


 え?その話がどういう話だったか、ですか……?

 ……あー、それは話すのやめておきます。

 だって……えっと……そろそろお察しかもしれないですけど……この話、去年の『約百物語』の時の話なので。

 今年もなんかあったら嫌じゃないですか。

 去年、わたし関係あるか判らないですけど、翌日39度の熱出してますし。

 あ、でも、最近になってちょっと思い出したことがあって……。

 その人が話している最中、一瞬親フラみたいなことがあって、

 「大丈夫ですか?」

 って訊いたら、

 「大丈夫」

 って言ってたので、その時はあんまり気にしてなかったんですけど。

 話の中で、「この話、人に話しちゃいけないって言われてるんですけど……」みたいなこと言ってた気がして……。

 それに、その27話目の話してくれた人、その後お名前一度も見かけたことないんですよね……。